「キャビンアテンダント転職物語」は、航空会社の客室乗務員(CA)に転職した女性の笑いあり涙ありの物語です。驚きの採用決定からワクワクの初出社、地獄の訓練を経て、大空に飛び立ち、一人前のキャビンアテンダントに成長していくまでが描かれています。
前回の第5話「まだまだ続く!怒涛の実践的サービス訓練編」では始めてのカート操作や機内サービスに奮闘する様子が描かれました。今回の第6話では訓練開始から1ヶ月が経過、「安全の訓練-毎日が叫びまくりの救難訓練」をお話しいたします。それではどうぞ!
サービス訓練所を離れ、安全訓練所へ
訓練開始から約1か月経つと、2週間ほど安全訓練に入ります。安全訓練とは、飛行機に何か不具合が生じたり、緊急着陸したり、着水したり、火災が発生したりしたときなどの緊急事態の際、私たちがどのようにイニシアチブを取るかを学ぶものです。
今までは、機内サービス専用の訓練所で訓練をしておりましたが、安全訓練は救難訓練センターというまた別のところで行います。よくテレビでもCAが「頭を下げて!Heads Down!!」と叫んでいるシーンを見かけた方もいるのではないのでしょうか。まさに、あれです。
今までも十分厳しい訓練でしたが、こちらは今までに増してもっと厳しいです。私たちはサービス要員であると同時に保安要員でもあります。良いサービスができるだけでは評価されず、常に機内の安全を保つことや、危険な不審物や可燃物などを早く発見し、火災などの緊急事態を未然に防ぐことも大切な業務なのです。また、今までは笑顔を絶やさないことを強いられてきましたが、この訓練に笑顔は必要ありません。笑っていると「ヘラヘラしない!」と怒られ、今までの雰囲気とは真逆となります。
また、お客様の命を預かるという意味で、安全にかかわることに関しては一字一句間違えてはいけません。テストで接続詞が違うだけで×です。完全な丸暗記を求められます。この訓練からまた眠れない日々がはじまります。
安全訓練開始
まず、安全訓練で全て丸暗記しなくてはならないことは、どんな時に飛行機が墜落したり故障したりして、緊急着陸につながる可能性があるかを全て丸暗記します。
また、緊急着陸や着水した際に、飛行機のドアを開けて、スライド(飛行機のドアから出る滑り台のようなもの)やボートを出すのも私たちCAの役目です。すべてにおいて手順があります。これを口頭で一字一句間違えずに説明しながら、実践するところまでが最終目標です。故障してスライドが膨らまない場合やドアが開かない場合も想定し、どのときはどのように対応すればよいのかも学びます。
ややこしいのが、これも機種ごとにやり方がちがうので一つ一つ覚えなくてはならないことです。機種によって、スライドの出し方が違ったり、開けていいドア、開けてはいけないドアなどがあります。たとえば着水した際に、開けてはいけないドアを間違って開けてしまうと、海水が一気に流れ込んできて沈没してしまいます。なので、私たちは絶対にミスをすることが許されず、その分訓練はとても厳しいものとなるのです。
まずは、この知識をつけてテストに全て合格すると、今度は緊急事態の際に、お客様を誘導する有効的な言葉を丸暗記します。緊急事態の際、シートベルトを外すタイミングや頭を守るタイミングなどを大声で伝えるのです。これを私たちはシャウティングと呼んでいます。
シャウティングは外国人のお客様もいらっしゃるので、日英両方一字一句間違えずに覚えます。
「大丈夫!落ち着いて!Stay Calm!」 「こっちへ来て!Come this way!」 「シートベルトを外して! Open your seat belt!!」などなど、かなりたくさんありますが、それを的確なタイミングで指示しなくてはならず、肉声で全てのお客様に伝えるため、大声を出さなくてはなりません。声が小さいと、もちろん怒られます。
丸暗記するまでは、安全訓練所の教室で何度も何度も練習させられます。
毎日訓練が終わってもすぐに帰らず、同期と一緒に自主練習していました。「今ここ間違えた!」「この接続詞間違ってる!」など、指摘し合って完璧に覚えていくのです。
こんなつらい毎日を一緒に過ごしていれば、同期との絆はとても強くなります。私も何年経っても今でも仲良しです。前職の同期とも仲良くなりましたが、研修を乗り越えた絆というより、同じ部署で話が合って仲良くなる同期が多かったのですが、今回は訓練が厳しすぎるので妙な一致団結力が生まれ、部署が全然違ってもずっと仲良しのままでいられるのです。
次回の第6話は、ついに「安全訓練の実技編」です。