「キャビンアテンダント転職物語」は、航空会社の客室乗務員(CA)に転職した女性の笑いあり涙ありの物語です。驚きの採用決定からワクワクの初出社、地獄の訓練を経て、大空に飛び立ち、一人前のキャビンアテンダントに成長していくまでが描かれています。
第5話は「 まだまだ続く!怒涛の実践的サービス訓練編」です。それではどうぞ!
まだまだ続く!サービス訓練。
前回の第4話では、モックアップという実際に飛行機の中を再現した訓練所でのサービス内容を説明しましたが、まだまだこのサービス訓練はつづきます。どんどん訓練も実践に近づいていきます。
はじめてのカート操作!
飛行機に乗っているときによく目にする、お食事やドリンクを配るときに使ってるもの、これをカートと言います。カートは中に大量のお食事やドリンクが入っているのでとても重いです。さらに上にワインやジュースなど重たいものをのせるので、バランスを崩してカートを転倒させたり、飛行機が突然揺れることで転倒してしまったりした場合、重大な安全に関する報告事項として報告が必須となり、大きな問題となってしまいます。
ですので、カートを動かす際は慎重に操作しなければならず、何度も練習させられます。また、カートを止める際は倒れない向きがありますので、その向きを常に頭に入れておかなければなりません。お客様の命に関わることなので、安全に関することはとりわけ厳しいです。
また、お気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、実はあのカート、足元にストッパーが付いています。お客様の前で止まるときは、ストッパーをかけないとカートが動いてしまい危険なので、必ずストッパーをかけて移動するときはストッパーを外し、また止まるときはストッパーを足で踏んでブレーキをかけるという仕組みです。
単純な作業に見えるかもしれませんが、何も考えずに足でストッパーを操作すると、「バチン!」と大きな音がします。寝ているお客様もいらっしゃるので極力静かな機内を保つために、音をさせないように細心の注意を払わなくてはなりません。しかし初めて動かすカート。ストッパーの外し方もままならない私たち。もちろん「バチン!」と音を立ててしまうものなら、教官が飛んできて「うるさい!もっと練習しなさい!」と、また怒られます。
全く気を許すことのできないこの訓練。覚えることもたくさんありますし3週間を過ぎたあたりから精神的にも参ってきます。
求められるのは、丁寧さとスピード感
私たちは、最初の1~2年間は国内線のみを乗務します。国内線は飲み物サービスだけですが、羽田―伊丹線や羽田―小松線などは、飛行距離が大変短いので、実際に飛んでいる時間が50分を切るときもあります。そのうち、ベルトサインがついている上昇中や下降中は安全のためCAも席を離れることが出来ません。実際に私たちが動けるのは35分から40分程度。その時間でスープやコーヒーなどのドリンクを作り、全てのお客様にお飲み物を配り、使用済みの紙カップを回収するところまで終了しなければなりません。多い時でお客様は400人以上いらっしゃいます。満席の時は本当に大変なのです。
難しいのは、とっても忙しくて、急いでいるのに常に笑顔で、バタバタしている感じをお客様に悟られないよう、スピーディーで優雅なサービスが求められるということです。新人の私たちにはとっても難しい試練。教官からは「女優になりきればできるのよ!」という格言も飛び出すほどでした。今までは、お客様と接する仕事ではなかったため、PCの前でしかめっ面していても、眠そうな顔をしていても、怒られることはありませんでしたが、本当に気の抜けない仕事です。女優にならなければならないのですから…。
このスピード感は、ドリンクを作るときにも求められます。まず、温かい飲み物。スープやコーヒーなどは上空で作っています。粉をお湯に溶かし、やけどをしない80℃以下のちょうどいい温度にして味見をすることまでが求められるのですが、これを3分以内に終わらせなければなりません。
実際に訓練で作っているときは、教官がストップウォッチで測ります。「一分経過!」「二分経過!」「三分経過!」「遅い!」こんな感じです。あぁ怖い。
そんなこんなで少しずつサービスの基礎が積み込まれてきた私たち。次回第6話は「安全の訓練。毎日が叫びまくりの救難訓練」に入ります。