「介護職」はどのような人が向いているのでしょうか、またどのような人が向いていないと思われるのでしょうか。ここでは実際に老人福祉施設などで「介護職」として働いている人、働いていた人に必要な能力や性格、適職性など現場の生の考えを聞いてみました。「介護職」へ転職を考えている人はぜひ参考にして、面接での質問回答の受け答えにお役立てください。
高齢化社会を迎え、ますます重要になる「介護職」
65歳以上の高齢者が4人に1人の高齢化社会を迎え、「介護職」はますます重要になっています。
「介護職」は、おおまかには「専門的・技術的職業」分類の「社会福祉の専門的職」と、「サービス職」分類の「介護サービス職」に分けることができます。
自立した生活が困難な高齢者をサポートする仕事のため、仕事内容、職種は非常に多岐に渡っているのが特徴で、「社会福祉の専門的職」には、「ケアマネージャー(介護支援専門員)」や 「介護福祉士」、「社会福祉士」や機能訓練指導員などの「老人福祉施設指導専門員」のほか各種ソーシャルワーカー、ケースワーカーがあります。
また「介護サービス職」には、介護サービス員などの「施設介護員」、ホームヘルパーや訪問介護サービス員などの「訪問介護員」、そして「訪問入浴介助員」などの仕事があります。
福祉に関連する資格としては、介護福祉士やホームヘルパー(2級以上)、またキャリアップ資格のケアマネジャー(介護支援専門員)などが採用に比較的有利といわれています。
※「介護支援専門員」や「老人福祉施設指導専門員」の平均年収はこちらをご覧下さい。
人手不足が続く「介護職」業界
「介護職」現場では人手不足が続いています。決して楽ではない仕事ということも影響しているためか、最近の有効求人倍率では、「介護関係職種」は3.10倍と求職者一人に3件以上の求人がある状態(3施設が求人を出しても、採用できるのは1施設以下の状態)となっており、増え続けるニーズと相反して働く人が確保できない課題を抱えていることがわかります。
※「介護関係職種」は、「福祉施設指導専門員」、「その他の社会福祉の専門的職業」、「家政婦(夫)、家事手伝」、「介護サービスの職業」の合計。
「介護職」の分類
「介護職」は、おおまかに「専門的・技術的職業」分類の「社会福祉の専門的職」と、「サービス職」分類の「介護サービス職」に分けることができます。職種は以下の通りです。
専門職・技術職 | 職業 |
---|---|
社会福祉の専門的職 | 福祉事務所ケースワーカーなどの福祉相談・指導専門員 |
老人福祉施設での機能訓練指導員や生活指導員、生活相談員など | |
ケアマネージャー(介護支援専門員)、医療ソーシャルワーカー、心理カウンセラーなど |
サービス職関連 | 職業 |
---|---|
施設介護員 | ケアワーカー(医療施設、老人福祉施設)、介護サービス員(老人保健施設) |
訪問介護職 | 在宅介護員、在宅ケアワーカー、訪問介護サービス員、ホームヘルパー |
在宅入浴介助員、在宅入浴サービス員、訪問入浴サービス員、訪問入浴ヘルパー |
「介護職」に向いている人、向いてない人
これら「介護職」はどのような人が向いているのでしょうか。どのような資質や性格、能力が求められるのでしょうか。またどのような人が向いていないのでしょうか。
ここでは実際に「介護職」として働いている人、働いていた人に考えを聞いてみました。現場の生の声をぜひご覧下さい。
お年寄りの小さな変化なのにも気づくことのできる人
●介護職に向いている人は
介護職をしています。この職業で必要なことは お年寄りを敬う気持ちとお年寄りと関わる事を楽しめることが重要だと思います。
お年寄りのペースに合わせて、穏やかな気持ちで接することができ、対応を行える方に向いているのではないでしょうか。
また細やかな気配りや、お年寄りの小さな変化なのにも気づくことのできる人にもとても向いていると思います。そういった意味で、女性にこの職業が多いのではないでしょうか。
高齢者のかたの命をお預かりしているので、危機意識が高く、責任感を持って勤めることができるのが、一流の介護職と言えます。
●介護職に向いていないと思う人は
潔癖症の方や性格的にせっかちな方はこの職業に向いていないと思います。
高齢者の方の入浴介助 トイレの介助など おしもの世話をすることも多く そういった部分に 抵抗を感じる方は 少なからずいるでしょう。
また高齢者の方の多くは 私たちと同じようなペースで生活をすることができないので、 相手を思いやることが出来ずに 行動を急かすようではこの職業に就くことはできないと思います。
また介護職の中でも高齢者の方の訪問介護には40代以上の家庭を持っている女性スタッフが、夜勤勤務がある施設には体力のある20~30代のスタッフが求められる傾向にあると思います。
(女性 30歳 大阪府)
介護職はそんなに甘くありません
●介護職に向いている人は
介護サービスの仕事です。
介護職では介護的な知識はもちろんのこと、医療、法律についての幅広い知識が必要となります。
介護職は人手不足のため簡単に就職できると言われていますが、そんなに甘い世界ではありません。
それぞれ利用者の病気に沿ったコミュニケーション能力や小さな変化に気付く観察力が大切です。
人の為に何かしたいという気持ちは大切にしてもらいたいですが、自分に何ができるのか、自分の強みを介護で生かしていけるのかと考えるとなかなか難しいです。
利用者の対応はもちろんですが、時間も不規則で肉体的、精神的にキツイ仕事です。
しかしやりがいはあります。仕事がないから介護職にしようと思うのではなく、介護がやりたいから介護職に就こうと思っていただければ大丈夫です。
●介護職に向いていないと思う人は
他職種の職員と連携して介護を行っていきますので、協調性がない方は介護職に向いてないと思います。あとはコミュニケーションが図れない方は、職員との連携や利用者と会話ができませんので、この仕事には就かない方がいいかと思います。
年齢の差は特に感じませんが、若いと利用者の会話についていけない可能性があります。昔の時代背景を勉強すれば対応は可能ですが、普段話すようにコミュニケーションは図るのは難しいです。
介護職は一般的に女性主体の職場が多いですが、必ず男性の力が必要とされています。しかし細かい所は女性の方が良く気付くように感じますが、男性でもできない仕事ではありません。
(男性 26歳 青森県)
興味関心をもって仮説検証を繰り返す根気が必要
●介護福祉士に向いている人は
介護福祉士で主に認知症介護に携わっています。専門職として働くために必要な資質として、コツコツ向上心を持って努力できるかどうか?という事と探求心や好奇心を持ち続けられるかどうか?が挙げられます。認知症ケアは誰にでも当てはまる正解がありません。ですので常に新しい知識を入れ続けることと、興味関心をもって仮説検証を繰り返す根気が必要になります。新しい価値を生み出すためには、創造力や発想力も当然必要なのですが、そのベースとして普段からの様子の観察や仮説検証の積み上げが必ず必要になります。続ける事が出来るかどうかが一番重要な資質だと思います。
●介護職に向いていないと思う人は
介護福祉士に向かない人は、必要以上に効率を重視してしまう人だと思います。介護は、対象者の生活を支える仕事です。特に認知症の方の動作や生活は効率的ではないケースが多いのですが、一番大切にしないといけないのは対象者の主体性ですので、対象者の意思決定や意向などは尊重しなければなりません。自分本位で物事を考えてしまう人には耐えられない仕事だと思います。また、その方の今までの人生経験が仕事に反映されることがありますので、例えば家事や子育てを一切したことがない人は苦手な業務が出来てしまうかもしれません。
(男性 35歳 大阪府)
「人の役に立ちたい」という気持ちがとても大切
●介護職に向いている人は
社会福祉の専門的職です。社会福祉は基本の理念として「人の役に立ちたい」という気持ちはとても大切だと思います。だた、それだけで務まらまいのが福祉職の現場です。介護をしていく中で、人としての思いやりは大切なことですが、情に流されたり、介護を受ける方の気持ちに入りすぎることは時に危険です。福祉であっても家族ではありません。家族のように大切に接する事は人として大切でも、家族ではないので金銭の管理をお願いされて決してしてはいけませんし、精神的依存されてもいけません。介護する方と介護される方両方が一定の距離感を持たない福祉は成り立ちません。そんな点で介護する方は時に冷静に客観的に人を見れる能力が必要であり、そういう目線で介護できる方が福祉職のは合っていると思います。
●介護職に向いていないと思う人は
福祉職、特に介護職というのはだた優しいだけでは務まりません。自宅で介護と経験し、介護職についた方なら分かると思いますが、時に罵声を浴びたり、暴力的になったり、昼夜逆転の生活となりがちな介助者から目が離せないといった、精神的にも体力的にもとても大変な仕事です。
介護職というのは忍耐力はもちろんの事、体力も大変必要になります。若ければ体力はあるかもしれませんが、忍耐力に欠けるかもしれません。反対に中高年になると忍耐力はあるかもしれませんが、体力の問題が出てきます。介護をしていく中でオムツ交換、移動補助、お風呂介助などの力仕事で介護をしている方が体を壊す事もあります。そんな福祉職というのは、普通の職場と違う忍耐力と体力が必要です。その両方を兼ね備えていない方は福祉職には向いていないと思います。
(女性 35歳 大阪府)
やる気さえあれば学歴、職歴、介護経験などはそれほど重要ではない
●介護職にはどんな資質が求められるか
介護職は現在超高齢社会のため需要が高まっていますが同時に介護に対する専門性も求められています。初任者研修(ホームヘルパー2級)の資格は介護職に就職した時に必ず取得させられるため転職前に取得することをおすすめします。
採用されやすい人は初任者研修の資格を持っている人です。介護業界ではこの資格を持つことで介護の知識があるとみなされるため、募集をしている福祉施設であれば未経験でも正社員で採用されます。資格をもっていなくても入職後に取得する意思を伝えれば大抵は採用してくれます。やる気さえあれば学歴、職歴、介護経験などはそれほど選考で重要視しません。
●介護職にはどんな資質、条件の人が採用されやすいか
介護職は人間相手の職業のため、介護が必要な利用者とうまく関われることが大切です。人見知りの激しい方や介護拒否をする方もいるため、そういった方へ介護を任せてもらえるように一人ひとりに合った対応方法の工夫ができる柔軟さも大切です。同じ利用者でも人付き合いが大好きな方もいれば、なるべく一人で静かに過ごしたい方まで様々です。そういった利用者の一人ひとり違う個性をありのままに尊重して気持ちに寄り添うことができる優しさが必要です。
介護職の採用されやすい資質、条件は初任者研修の資格と介護に対するやる気さえあれば問題ありません。
採用に影響はしませんが介護、福祉関係のニュースは面接の話題として出るかもしれないため、印象を良くするためにも受け答えができるように事前に確認しておくことをおすすめします。
(女性 30歳 群馬県)
人に感謝されることに、やりがいに感じられる人
●介護職に向いている人は
資格としてはヘルパー2級、運転免許取得から2年、運転者講習受講者になります。
障害のある方に対しての余暇支援の仕事をしています。
具体的には指定の場所まで車でお迎えに行き、希望される場所(買い物であればショッピングモール、運動する施設、プール)に送迎、その間の見守り、お手伝い等をする仕事です。
どのような方が向いているかはむずかしいところですが、人に感謝されることが多く、そのようなことをやりがいに感じられる人が向いていると思います。
あと、子供さんと接する機会も多いため、子供さんがお好きな方などには楽しんで仕事していただけると思います。
●介護職に向いていないと思う人は
積極的、主体的に何かを提案したりすることや、何かを作り上げていくことよりも、受動的に相手の思いを汲み取ることが大切になります。あまりにも主体的な人には向いていないかもしれません。
その他、ホームヘルパーは運転が必須になるため、運転が苦手な人、人を乗せての運転に責任が重く感じられる方などには難しく思います。
年齢的なことではあまり差はないように思いますが、突発的に動かれる子供さんや身体的障害がある方の移乗などの仕事もあるため、体力的に自信のない方や、足腰に不安がある方々などにはあまり向かないのではないかと思います。
(男性 28歳 滋賀県)
「社会福祉・介護業界」の良い点・良くない点
●「社会福祉・介護業界」の良い点・良くない点
私は、福祉施設で働いています。福祉制度に詳しくなります。意外と知らない制度やサービスが沢山あると思います。また、介護技術が学べます。資格を持っていなくても先輩に教えてもらう事で介護に関する技術や知識が得られます。
でも給料は低いです。福祉は重労働ですが、対価としてもらえる報酬は少ないと思います。結婚して子どもができたら少し大変です。独身時代も実家暮らしでないときつかったです。国家資格の介護福祉士やケアマネージャー(介護支援専門員)、ホームヘルパーなどの資格があれば手当をもらえますが、資格がないと特に辛いと思います。 「社会福祉・介護業界」の良い点・良くない点を見る
最後に編集部から
「介護」の意味は「身体や精神が健全でない状態にある人の行為を助ける世話」です。人を助けること、感謝されること、喜んでもらうことにやりがいを感じる人はぜひ挑戦してみる価値のある職業ではないでしょうか。
もちろんやりがいだけでは仕事はできません。事実、この業界は、重労働や低賃金など、続けたくても離職率が高くなるさまざまな課題も抱えています。ただこれらは国の政策などによって徐々に改善されていくでしょう。
国家資格の介護福祉士やケアマネージャー(介護支援専門員)などの資格を取得し、キャリア、昇給ともにアップを目指していくことがおすすめです。