転職グッド編集部では「もっとも採用されやすい職業、採用されにくい職業」ランキングを算出いたしました。職業とは「事務職」「販売職」「技術職」などです。これは「厚労省 一般職業紹介状況(平成28年8月)」をもとに、職業別の有効求人倍率(パート含む)の数値から算出したもので、どの職業(中分類)が採用されやすい(求人倍率が高い)か、採用されにくい(求人倍率が低い)かが一目でわかるようになっています。
求人倍率とは
「求人倍率」とは、求職者に対する求人数の割合をいいます。
「求人倍率」には2種類あり、「新規求人数」を「新規求職申込件数」で割った「新規求人倍率」と、「月間有効求人数」を「月間有効求職者数」で割った「有効求人倍率」があります。
厚生労働省では、毎月、一般職業紹介状況(職業安定業務統計)を発表しており、そのなかでも特に「有効求人倍率」は、労働市場の需要供給を示す数字として、テレビや新聞のニュースでよく取り上げられるものです。「事務職」「販売職」「技術職」などの各職業への就職を希望している人がどれくらいいるのか、企業側からその職種の求人はどれくらいあるのかが、大学入試での倍率のようにわかるようになっています。
「有効求人倍率」の高い職業 1位~10位
まず最初に「有効求人倍率」の高い職業についてです。「有効求人倍率」が高いということは、売り手市場、人手不足の状況で、求職者一人に対して、多くの有効求人がある状態です。
つまり一人の求職者に対してたとえば3社4社の求人があるため、求職者は複数の求人の中から選ぶことが出来る計算になります。
このことは、人手不足なのですぐに採用されやすい、給与や労働時間など条件の良い会社を比較検討できるなどの良い点がありますが、すこし厳しい言い方をすれば、あまり人気のある職業ではない、仕事がハードであることが多い、離職率が高い業界であることにもなります。
倍率1位は「建設躯体工事職」の7.58倍!
今回、「有効求人倍率」がもっとも高かったのは、型枠大工、とび職、鉄筋作業などの「建設躯体工事職」で7.58倍、2番目は警備員、守衛などの「保安職」の6.39倍、3番目は「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」の5.77倍でした。
1位の「とび職、鉄筋作業員」などは実に一人の仕事を探している人に7.5社の求人が集中していることになります。採用できるのは1社だけですから、残りの6.5社は募集しても採用できないわけです。これでは人手不足になるのも無理はありません。
「建設職」はその他にも、4位の「建築・土木・測量技術者」、8位に大工、タイル張従事者、左官、畳職、配管などの「建設の職業」、10位に土木や鉄道線路工事などの「土木の職業」と、軒並み「有効求人倍率」が高く、業種自体が慢性的な人手不足に陥っていることがわかります。
2位の「保安職・警備員」は実は5、6年前の求人倍率が約2倍でした。それが現在では6倍以上ですから、年々、人手不足が進んでいて、いくら募集しても応募が来ない状態が続いています。
10位内にはその他にも、売り手市場の職種として、理容師、美容師、美容サービス、クリーニング職などの「生活衛生サービス職」、飲食店店主や接客の「接客・給仕の職業」、「介護サービスの職業」などの「サービス職」が3種入っています。「建設職」同様、募集に採用されやすい)職であることがわかります。
職業(1位~10位) | 有効求人倍率(H28年8月) | |
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1位 | 建設躯体工事の職業 | 7.58 |
2位 | 保安の職業 | 6.39 |
3位 | 医師、歯科医師、獣医師、薬剤師 | 5.77 |
4位 | 建築・土木・測量技術者 | 4.52 |
5位 | 外勤事務の職業 | 3.71 |
6位 | 生活衛生サービスの職業 | 3.70 |
7位 | 接客・給仕の職業 | 3.55 |
8位 | 建設の職業 | 3.40 |
9位 | 介護サービスの職業 | 3.14 |
10位 | 土木の職業 | 3.14 |
「有効求人倍率」の低い職業 51位~59位
今度は反対に「有効求人倍率」の低い職業です。
低いということは、その職業に就きたいと思っている人数より、有効な求人数が少ない状態です。つまり、人気がある職業、応募者が多く入社難易度が高い職業、そもそも企業からの求人が少ない職業、人出が足りている職業ともいえます。
一番低いのは「その他の運搬・清掃・包装等の職業」の0.27倍、次いで「一般事務の職業」の0.31倍、そして「鉄道運転の職業」の0.34倍、「製造技術者」の0.46倍となっています。
「その他の運搬・清掃・包装等の職業」とは、商品仕分けなど選別作業員、工場労務作業、工場労務員、病院用務員などの軽作業員、公園・ゴルフ場・競技場整備など、軽作業が中心の仕事です。
たとえば「一般事務の職業」の場合は、10人の求職希望者がいるにもかかわらず、実際の求人は約3社しかありません。そうすると計算上は、残りの7人は「一般事務職」には転職できないことになります。(注意:このケースは一般事務職であって事務職全体を指すのではありません。「事務職」は一般事務職以外にも「会計事務職」「生産関連事務職」「営業・販売事務職」などがあります)
ランキングを見渡すと「事務職」「専門的・技術的職」 「生産工程職」が目立ちます。特にこれらの職業に転職を考えている人は、他の職業への鞍替えも検討する、雇用条件の希望を緩める、などの妥協も時として必要になります。
職業(51位~59位) | 有効求人倍率(H28年8月) | |
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51位 | 会計事務の職業 | 0.65 |
52位 | 生産設備制御・監視の職業(機械組立) | 0.61 |
53位 | 事務用機器操作の職業 | 0.57 |
54位 | 機械組立の職業 | 0.53 |
55位 | 美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者 | 0.52 |
56位 | 製造技術者 | 0.46 |
57位 | 鉄道運転の職業 | 0.34 |
58位 | 一般事務の職業 | 0.31 |
59位 | その他の運搬・清掃・包装等の職業 | 0.27 |
「有効求人倍率」その他 11位~50位
「有効求人倍率」の上位10件、下位10件を除いた、中間的な職業のランキングです。
倍率が1.00以下は、求職者1名に対して、その職種からの求人企業が1社も無いことになります。仮に倍率0.5の場合は、1人の募集枠に対して2人が応募している状況になります。
職業(11位~50位) | 有効求人倍率(H28年8月) | |
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11位 | 家庭生活支援サービスの職業 | 3.13 |
12位 | 介護関係職種 | 3.10 |
13位 | 医療技術者 | 3.03 |
14位 | 飲食物調理の職業 | 2.97 |
15位 | 運輸・郵便事務の職業 | 2.93 |
16位 | 包装の職業 | 2.85 |
17位 | 販売類似の職業 | 2.79 |
18位 | 保健師、助産師、看護師 | 2.36 |
19位 | 情報処理・通信技術者 | 2.34 |
20位 | 自動車運転の職業 | 2.33 |
21位 | 機械整備・修理の職業 | 2.26 |
22位 | 社会福祉の専門的職業 | 2.23 |
23位 | 保健医療サービスの職業 | 2.22 |
24位 | 電気工事の職業 | 2.21 |
25位 | 製品検査の職業(金属除く) | 2.06 |
26位 | 商品販売の職業 | 2.05 |
27位 | 採掘の職業 | 1.95 |
28位 | 開発技術者 | 1.85 |
29位 | 清掃の職業 | 1.84 |
30位 | 金属材料製造、金属加工、金属溶接・溶断の職業 | 1.78 |
31位 | その他のサービスの職業 | 1.75 |
32位 | 製品製造・加工処理の職業(金属除く) | 1.56 |
33位 | その他の保健医療の職業 | 1.55 |
34位 | 製品検査の職業(金属) | 1.45 |
35位 | 生産関連事務の職業 | 1.44 |
36位 | その他の技術者 | 1.40 |
37位 | 営業の職業 | 1.38 |
38位 | 定置・建設機械運転の職業 | 1.33 |
39位 | 農林漁業の職業 | 1.31 |
40位 | 管理的職業 | 1.29 |
41位 | 運搬の職業 | 1.25 |
42位 | 機械検査の職業 | 1.23 |
43位 | 生産設備制御・監視の職業(金属除く) | 1.14 |
44位 | 居住施設・ビル等の管理の職業 | 1.00 |
45位 | 生産関連・生産類似の職業 | 0.92 |
46位 | 生産設備制御・監視の職業(金属) | 0.91 |
47位 | その他の専門的職業 | 0.90 |
48位 | 船舶・航空機運転の職業 | 0.78 |
49位 | 営業・販売関連事務の職業 | 0.76 |
50位 | その他の輸送の職業 | 0.72 |
最後に編集部から
この「有効求人倍率」は、厚労省がハローワークにおける求人、求職、就職の状況を取りまとめているものです。
とはいっても、転職にあたってハローワークを一切利用せず民間の転職サイトや転職サービスで完結した人、たとえば管理職や業界でいえば金融系、コンサル系などのように、ヘッドハンティングや同業界への転職がネットワークの中で完結した人の数字は反映されていません。
ですので、この指標がすべてを物語るものではありませんが、それでも自分の就きたい職業は入社難易度が高いのか、比較的容易なのか、それとも人手不足過ぎてすぐに採用されるのかを、知っておくだけでも、転職活動に差がでてくるはずです。
入社難易度の高い職業(「有効求人倍率」の低い職業)を考えている人は、ある特定の仕事、条件だけに固執するのではなく、柔軟性を持たせて探すことが重要です。
例えば、総務、人事、企画などの「一般事務の職業」は0.31倍と難易度がとても高いのですが、一方で同じ事務職でも「外勤事務の職業」は3.71倍と難易度が低くなっています。
このように同じ大分類の職業でも中分類の職業によって、倍率が全然違うことがよくあります。
こちらの「転職先の職業・職種研究」ページで、ハローワークにおける職業の分類の知識を得て、活動に挑んでみてください。