子どもの頃に鉄道や自動車の運転士、航空機のパイロットの仕事に憧れた人も多いのではないでしょうか。全国で現在約230万人の人が「輸送・機械運転職」の仕事に就いています。今回は「輸送・機械運転職」に転職を考えている人向けに、仕事内容、平均年収・給与、この仕事に向いている人、向いていない人について解説いたします。ぜひ転職活動の参考にしてください。
「輸送・機械運転職」とは
「輸送・機械運転職」とは、電車やバス、自動車、航空機の運転や関連する駅構内係、信号係、甲板員、船舶機関員、フォークリフト運転のほか、ボイラー・オペレーターやクレーン・ウインチ運転、建設・さく井機械運転や玉掛作業員、ビル設備管理員などの仕事です。
具体的にどのような職業があるのか、総務省「日本標準職業分類」によると、電車運転士などの「鉄道運転従事者」、バスや乗用車、貨物の「動車運転従事者」、船長や航海士・運航士、船舶機関長・機関士、航空機操縦士などの「船舶・航空機運転従事者」、車掌や鉄道輸送関連業務、甲板員・船舶技士、船舶機関員などの「その他の輸送従事者」、発電員・変電員やボイラー・オペレーター、クレーン・ウインチ運転従事者、ポンプ・ブロワー・コンプレッサー運転、建設・さく井機械運転、採油・天然ガス採取機械運転などの「定置・建設機械運転従事者」に分類されます。
このように「輸送・機械運転職」は、一度間違えると大きな事故につながることから、運転や操作は「動力車操縦者運転免許」や「海技士」「クレーン・デリック運転士」などの国家資格で厳しく制限されています。
業界の概要はこちらの「「鉄道業界」はどんな仕事なの?」、 「「航空業界」はどんな仕事なの?」もご覧下さい。詳しく説明しています。
「輸送・機械運転職」で働く人の割合は3.6%
「輸送・機械運転職」を仕事としている人はどれくらいいるのでしょうか。
「平成24年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)によると、「輸送・機械運転職」に従事している人は、全国で約230万人となっており、男女の割合では男性が約224万人、女性が6万人と圧倒的に男性の方が多くなっていますが、近年ではJRや私鉄でも女性の登用に積極的で、駅構内係などで見かけることも多くなりました。
この数字はすべての職業(11種類)の中で9番目、割合では3.6%となっており、事業規模の割にはあまり多くはありません。この職業より少ないのは「保安職」「管理的職」だけです。勤務地が首都圏中心であることも大きいと思います。
輸送・機械運転職で働く男女比
男性 | 女性 | 合計 | |
輸送・機械運転職で働く人 | 約224万人 | 約6万人 | 約230万人 |
「輸送・機械運転職」の平均年収・給与
それでは次に「輸送・機械運転職」の平均給与、平均年収をみてみましょう。
「平成24年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)をもとにみると、以下の通りで、高給なのはやはり「航空機操縦士(パイロット)」が平均年収1,532万円と群を抜いており、そのほかにも「電車運転士」の平均年収約691万円、「電車車掌」の平均年収565万円と続いています。また女性の場合は、「航空機客室乗務員(キャビンアテンダント)」の平均年収は32.4歳で約469万円となっています。
なお「旅客掛」とは車掌補、つまり車掌の補助業務をおこなう人です。
男性の場合の平均年収・給与
男性の場合 | 年齢 | 月額賃金、手当含む | 年間賞与 その他特別給与額 |
電車運転士 | 40.5 | 43.0万円 | 175.6万円 |
電車車掌 | 39.5 | 34.9万円 | 146.6万円 |
旅客掛 | 36.8 | 34.7万円 | 131.9万円 |
自家用乗用自動車運転者 | 56.9 | 22.2万円 | 25.7万円 |
自家用貨物自動車運転者 | 47.1 | 29.1万円 | 36.5万円 |
タクシー運転者 | 59.0 | 23.9万円 | 22.6万円 |
営業用バス運転者 | 49.3 | 30.9万円 | 56.1万円 |
営業用大型貨物自動車運転者 | 47.3 | 34.0万円 | 29.1万円 |
営業用普通・小型貨物自動車運転者 | 44.1 | 30.4万円 | 27.7万円 |
航空機操縦士 | 44.1 | 111.8万円 | 190.4万円 |
女性の場合の平均年収・給与
女性の場合 |
年齢 | 月額賃金、手当含む | 年間賞与 その他特別給与額 |
電車車掌 | 27.9 | 26.3万円 | 108.1万円 |
旅客掛 | 29.9 | 23.6万円 | 69.6万円 |
自家用貨物自動車運転者 | 46.1 | 24.0万円 | 14.7万円 |
タクシー運転者 | 55.2 | 21.8万円 | 17.6万円 |
営業用大型貨物自動車運転者 | 43.2 | 29.2万円 | 17.3万円 |
航空機客室乗務員 | 32.4 | 33.7万円 | 65.1万円 |
※データは「平成24年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)をもとに作成
※企業規模計(10人以上)
「業界別の平均年収」や「年齢別・男女別の平均年収」も合わせて参考にして下さい。自分の立ち位置がおおよそ理解出来ると思います。
「輸送・機械運転職」に向いている人、向いてない人
では「輸送・機械運転職」はどのような人が向いているのでしょうか。実際に輸送・機械運転職などで働いている人に「求められる資質、向いている人、向いてないと思う人」を尋ねてみました。
電車の運転士になるには
電車の運転士の場合、入社したからといってすぐになれるわけではありません。駅構内係から車掌登用試験を経て、車掌、さらに見習い運転士、登用試験に受かって、ようやく運転士に辿り着きます(ステップは鉄道各社によって異なります。また希望したからといって運転士に配属される訳でもありませんので注意してください)。
また運転するには「動力車操縦者運転免許」という国家資格が必要で、20歳以上であること、視力が裸眼で1.0以上(矯正も可)、諸所健康であることなど身体検査の合格基準をクリアした上で学科と実技を受検します。(自動車免許の難しいバージョンだと思って下さい)運転士になれるのは会社によって違うと思うのですが、だいたい30歳前位のところが多いようです。
電車の運転士の向いていないと思う人は
身体検査の合格基準を満たさないような状態の人であることは当然として、健康に不安のある人、パニックに陥りやすい人、落ち着きのない人、乗客を安全に運ぶという責任感の薄い人などでしょうか。また事故や災害が起きた時には冷静に対処する能力も求められます。
とはいっても、世の中に運行している列車の数だけ運転士はいます。めちゃくちゃ難しいという訳ではありませんので、まずは鉄道会社に中途入社するところからチャレンジしましょう。JRなどでは定期的に社会人採用枠を設けています。
(東京都 男性 36歳)
最後に 「輸送・機械運転職」に転職を考えている方へ
「輸送・機械運転職」の場合の中でも運転士や操縦士、船長などは長い年月を要するため、転職をしてもすぐに就くことができるわけではありません。
まずはJRや私鉄各社、航空会社に入社するところから始まります。幸いなことに近年では各社とも社会人採用枠を増やしていますので、公式ホームページなどで定期的にチェックするのがいいでしょう。(転職サイトには載っていないことも多々あります)
一方、バスやタクシー、貨物トラックなどの「動車運転従事者」は、上記ほどのハードルの高さではありません。どちらかといえば人手不足が目立つ仕事といえます。バスやトラックなどの大型自動車、マイクロバスなどの中型自動車、タクシーなどの普通自動車、トレーラーなどの大型特殊自動車の第二種免許が必要になります。