福祉・介護のしごと別に有効求人数、求職者数、求人倍率を公開

福祉・介護のしごと別に有効求人数、求職者数、求人倍率を公開

慢性的な人手不足が続く福祉業界

人手不足、人材採用難といわれる福祉業界。介護職、相談・支援・指導員、介護支援専門員、ホームヘルパー、保育士、看護職など社会福祉・介護分野の求人数、求職者数はどのような状況なのでしょうか。今回は各都道府県の社会福祉協議会がまとめた2016年4~6月「福祉分野の求人求職動向」をもとに職種別の就職状況を解説をいたします。※社会福祉協議会は、福祉サービスや民間の福祉活動や事業推進を目的とした組織です。

今回は「有効求人数」「有効求職者数」「有効求人倍率」の3つの指標をもとに紹介いたします。
「有効求人数」は現在有効な(求人票の有効期限の切れていない)求人数の合計です。「有効求職者数」は同様に、現在有効な(求職票の有効期限の切れていない)求職者数の合計です。つまり前月以前の生きている求人、求職数が含まれています。
※なお「新規求人」「新規求職」はその月に新たに発生した件数です。

増え続ける求人数 毎年1月~3月がピーク

「青色」のグラフは過去3年間の福祉団体や企業からの「有効求人数」です。 毎年7月頃から募集が増えはじめ、1月~3月にピークを迎えます。3月を年度末、4月を年度開始としている施設が多いため、(また3月で退職する人も多いため)、冬に時期に募集が活発になることがわかります。ここ3年は前年比をつねに上回っている状態なので、人材が欲しい施設が増え続けていることも読み取れます。反対にいえば、転職を考えている人は求人数の多い12月~3月にアクションを起こした方が、数が多い、条件競争ができるなどのメリットがあります。

福祉・介護業界の職種別 有効求人数、求職者数、求人倍率

一方、「赤色」の「求職者数」は仕事を探している人です。この数字も求人数と同様に4月~6月がもっとも少なく、7月以降徐々に探している人が増えていくのですが、1月~3月には若干減少する傾向があります。これは12月までの段階で決まってしまう人が多い、年明けからは心機一転新たな気持ちで働きたいと考えている人がいる、ということではないでしょうか。「求職者数」のピークは10月~12月になります。

また「黄緑色」の折れ線グラフは「有効求人倍率」です。「有効求人倍率」とは、一人の求職者に対しどれだけの求人があるかを示すもので、数字が高い(多い)ほど、仕事を探している人にとって有利な状態になります。ご覧の通り、過去3年間上昇しており、2016年(平成28年)にはなんと4.31倍にもなっています。一人の求職者に対して4.31社からの求人があるということは、1名がどこか1社に決まったとしても、残りの3.31社は募集を出しても人を採用できなかった(応募が無いか内定辞退など)ことになります。この数字はすべての業種、業界で比べても5本の指に入るほどの高さで、求職者にとって有利な状況が続いています。

平成26年 1~3月 4~6月 7~9月 10~12月
有効求人数(人) 58,612 71,431 73,014
有効求職者数(人) 18,519 20,922 21,824
有効求人倍率 3.16倍 3.41倍 3.35倍
 
平成27年 1~3月 4~6月 7~9月 10~12月
有効求人数(人) 76,349 61,584 76,132 76,902
有効求職者数(人) 21,504 16,302 19,212 20,544
有効求人倍率 3.55倍 3.78倍 3.96倍 3.74倍
 
平成28年 1~3月 4~6月 9月
有効求人数(人) 79,390 67,982 78,621
有効求職者数(人) 19,994 15,757 18,896
有効求人倍率 3.97倍 4.31倍 4.16倍

職種別の有効求人数、求職者数、求人倍率の状況

それでは次に2016年(平成28年)4~6月(1ヵ月平均)の有効求人数職種別のデータを見ながら、読み取れることを説明していきます。
求人数では、圧倒的に多いのが「介護職(ヘルパー以外)」の33,103人(48.7%%)、次いで「相談・支援・指導員」が7,744人(11.4%)と「看護職」が7,655人(11.3%)がほぼ同数になっています。 以降、ホームヘルパー、保育士と続いていきます。この数字は施設、現場での人手の不足状態そのものです。(人が足りないから施設は求人を出す)

職種別の有効求人数、求職者数、求人倍率の状況

  有効求人数
(複数回答)
有効求職者数
(複数回答)
有効求人倍率
介護職(ヘルパー以外) 33,103 7,029 4.71
相談・支援・指導員 7,744 5,505 1.41
介護支援専門員 2,058 1,097 1.88
ホームヘルパー 6,500 1,574 4.13
保育士 5,763 2,536 2.27
社会福祉協議会専門員 46 1,550 0.03
セラピスト 1,056 154 6.86
看護職 7,655 340 22.54
事務職 390 1,895 0.21
栄養士 234 154 1.52
調理員 740 398 1.86
管理職 267 153 1.74
サービス提供責任者等 1,135 439 2.58
その他 1,290 1,348 0.96

有効求人倍率が特に高いのは「看護職」「セラピスト」「介護職(ヘルパー以外)」「ホームヘルパー」の4種です。いわば「施設からの求人は多数あるけれど、応募する人が少ない状態」です。特に「看護職」は7,655人の求人数に対して、仕事を探している人はわずか340人、倍率は22.54倍と異常な状態になっています。全国の社会福祉協議会で取り扱っている案件のデータであり、ハローワークでの数字は含まれていませんので、高めに出ているのでは無いかと思われます。

反対に就職が難しい職種です。「社会福祉協議会専門員」「事務職」はともに求人倍率が平均の「1.0」を切っており、施設からの求人数よりも求職者数の方が多くなっています。つまり人気のある職種ということなのですが、求人数も少なく、就職するのが難しい状態といえるでしょう。

福祉業界は割に合わないから敬遠されるのではないか?

データを総括すると、職種によって求人数の多少、倍率の高低はあるものの、総じて「福祉分野」は慢性的な人手不足状態で、求人倍率も高水準で推移しています。ここまで人材難の状態が続くというのは決して褒められたことではありません。これは単に施設側、採用側の問題というより、国や地方自治体が制度をどう改善していくかの問題のように思えます。例えば、ハードな労働の割に賃金が安いために退職者離職者が多い、その賃金は弾力的に決めることができない、新しい人を募集しても人手不足の現場では新人教育や研修に時間を割けない、そしてまた辞めていく、そのうち「介護業界は環境、待遇が良くない」という噂が立ち始める、だから求人募集があっても躊躇する人が多い、資格は持っているけど他業界で働く人が多い・・・などの悪循環です。要は割に合わない業界になっているのです。

これからの高齢化社会を迎え、福祉・介護業界は現在よりさらに多い人数が必要になることは明白です。国や地方自治体は福祉施設や諸団体と連携しながら、新たな制度設計(賃金、労働環境、福利厚生など)を早急に進めていき、福祉系資格を持っている人に再就職を促す、長く働ける業界へと変化する、製造業などの分野からの転身を促すなどの対策を立てるべきではないでしょうか。
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