「保育士」は、0歳の乳児から小学校入学前の子どもを保育園などで預かり、保護と世話をする仕事です。今回は「保育士」に転職する人向けに、「保育士」の仕事内容、平均年収・給与、また現在働いている人から「保育士」に向いている人向いていない人について解説いたします。ぜひ転職活動の参考にしてください。
「保育士」として働く人は全国で55万人以上
「保育士」は0歳の乳児から小学校入学前の子どもを保育園などで預かり、保護と世話をする仕事です。近年共働きの家庭が増え、幼稚園よりも保育園にニーズが高まっていますが、一方で労働環境の厳しさなどから人手不足が深刻化しており、園に入ることのできないいわゆる待機児童も増えています。
現在保育士として働く人は「平成27年国勢調査」(総務省)によると、全国で55万人以上にのぼります。男女の割合は男性が約1.4万人、女性が約54.8万人となっています。 女性の割合は約97%と保育士のほとんどは女性であることがわかります。
「保育士」の仕事は、ハローワークなどでの職業分類は、高度な技術、専門的な技術を要する「専門的・技術的職業」の中の、中分類「社会福祉の専門的職」に属しています。
全就業者数 | 性別 | 人数 |
---|---|---|
保育士 56.2万人 | 女性 | 約54.8万人 |
男性 | 約1.4万人 |
保育士の雇用形態 約4割が非正規雇用
次に「保育士」の雇用形態の割合を見てみると、正社員などの正規雇用が約58%、パートアルバイトなどの非正規雇用が約40%となっています。
保育士の就業場所 9割が保育所
保育士の9割以上が保育所で働いています。具体的に東京都の調査事例を見ると、公設公営保育園が22.9%、公設民営保育園が9.1%、社会福祉法人保育園が38.5%、株式会社保育員が17.1%、NPO法人保育園が6.1%、個人経営が3.2%となっています。(平成27年 東京都保育士実態調査)公設民営保育園とは近年増えている形で園の設置を自治体がおこない、運営を入札で民間に委託する形式です。
またそのほかにも少数ですが、児童養護施設、知的障害児施設など、保育士の資格や経験が役立つ職場も広がってきています。
就業者数の推移 一貫して増加
「保育士」の就業者数は年々増えています。厚労省「保育士等に関する関係資料」によると、保育所に勤める保育士は2004年には常勤271,000人、非常勤55,000人、合計326,000人だったものが、2008年には総数361,000人、2013年には409,000人にまで増えています。 保育士不足が課題になっている現在、パート・アルバイトから正規雇用への引き上げなど、雇用環境の改善が求められています。
「保育士」になるには
保育士として働くには、保育士養成課程のある短大や大学、専門学校(厚生労働大臣の指定する学校)を卒業するか、または一般の大学などを卒業後「保育士国家試験」を受け、合格する必要があります。養成課程学校卒業者は全科目免除者となり、ほぼ100%の確率で試験に合格することができます。
「保育士試験」は前期後期の年2回実施され、後期は地域限定保育士試験もおこなわれます。平成27年度の場合で、受験者数67,504人、合格者数23,165人、合格率 34.3%でした。
ただ試験は、全科目免除者向けと通常試験(保育士養成課程学校の卒業者ではない人が受ける)に分かれており、通常試験の場合の合格率は、受験者数46,487人、合格者数10,578人、合格率 22.8%と狭き門になっています。
保育士試験結果 (平成27年度) | |||
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
通常試験 | 46,487人 | 10,578人 | 22.8% |
全科目免除者数 | 10,203人 | 10,203人 | 100% |
総数 | 67,504人 | 23,165人 | 34.3% |
「保育士」の有効求人倍率は年々高くなる傾向
「保育士」の有効求人倍率は年々高くなる傾向にあります。2015年2016年の有効求人倍率比較を見ると、、毎年12月~3月頃がピークになっており約2倍、求人が少なくなる4月5月でも1倍程度となっています。倍率が2倍ということは一人の求職者に対して2件の求人案件があることを意味します。
共働き家庭の増加に伴う待機児童の増加を解消しようと国や各自治体はあの手この手で保育士の募集をおこなっており、保育士への転職は比較的容易になっています。もし過去に保育士や幼稚園教諭として働いていた、新たに保育士資格を取得したといった方はぜひチャレンジしてみてください。
「人手不足が続く「保育士」の有効求人倍率-各都道府県の2016年と2015年比較」を見る
「保育士」の離職率は約10%
一方で「保育士」の離職率はどの程度なのでしょうか。平成25年社会福祉施設等調査(厚生労働省統計情報部)によると、保育所に勤める保育士約32万人(うち公営11.7万人、私営20.3万人)のなかで退職者は1年間で約3万人、離職率は10.3%となっています。うちわけは公営7.1%、民営が12.0%です。一見高そうに見えるこの10%という離職の数字は、実は他の業界と比べても、さほど高い訳ではなく、ほぼ平均の範囲内です。
ただこれだけ待機児童問題や保育士不足が叫ばれている中、雇用する行政側としては手をこまねいているだけではなく、保育士の賃金や労働時間、休日数などの処遇改善をおこない、待機児童の解消を進めていく必要があります。
「調査:保育士が働き続けるために大切だと思われることは?(保育所からの回答)」を見る
「保育士」の平均年収・給与
それでは次に「保育士」の平均給与、平均年収をみてみましょう。
「平成24年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)をもとにみると、女性の35.2歳の場合で給与が21.8万円、ボーナスが60.2万円、平均年収は約321.8万円となっています。
保育士の年齢別、男女別の給与、ボーナス、平均年収一覧表はこちらをご覧下さい。
保育士の平均年収・給与 | |||
性別 | 年齢 | 月額賃金(手当含む) | 年間賞与、その他特別給与額 |
女性(保母) | 35.2 | 21.8万円 | 60.2万円 |
男性(保父) | 30.9 | 23.8万円 | 60.4万円 |
※データは「平成24年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)をもとに作成
※企業規模計(10人以上)
「保育士の平均給与・ボーナス・年収 都道府県別・年齢別一覧」も合わせて参考にして下さい。
「保育士」に向いている人、向いてない人
では「保育士」はどのような人が向いているのでしょうか。実際に「保育士」で働いている人に「求められる資質、向いている人、向いてないと思う人」を尋ねてみました。転職に当たっての参考にしていただければと思います。
「保育士」に向いている人
子どもを尊敬できる人、自己肯定感の高い人、カウンセラーの資格を有する人だと思います。大前提として言われている「子どもが好き」と言うのは「尊敬」と言う意味なのだと最近感じています。子どもには大人が忘れている気持ちや表現の仕方、感受性等たくさん大人より優れている所があります。
その「子ども」を尊敬する気持ち、大人に守られるだけの存在としてだけではなく、一人の人間として子どもを尊敬し、その子供が安心して大きくなれるように見守り、手助けすることが出来る人である必要があると思います。また、子どもは大人より優れている面を多く持つ反面、表現方法や行動の仕方が分からず、間違った事をすることがあります。時には保育士を馬鹿にするような発言すらもあります。それを丁寧に受け止め、正しい方法を教えていくのも保育士として求められます。保育士が手本になるという事でもありますが、もっと大事なのは自己肯定感です。自己肯定感が低い保育士では馬鹿にされたような言動を目の当たりにした時に、子どもの言動をそのまま間に受けてしまいます。保育士自身の自己肯定感が安定していれば子供のちょっとした言動に左右されずに安定した保育、クラス運営ができます。自己肯定感の安定のためにも自分の心に目を向け、学び続ける人・・・つまりカウンセラーは保育士に向いていると思います。
反対に向いていない人は
反対に向いていない人は子どもを「無能な人間」ととらえている人、他人の気持ちが分からない人、自己肯定感の低い人、技術ばかりが高い人です。
「向いている人」でも述べましたが、子どもは無能ではありません。間違った行動をすることもありますが、間違いながらも再チャレンジし、転んでは起き上がり、何度もやり直す力、成長のスピード等大人には無い力を携えています。その力に気づかずに、「能力が無いからやってあげなくてはならない」と考えて、すべてに手を差し伸べるだけでは子どもの芽を摘んでしまいます。「預かるだけ」からはじまった 保育の現場も、現代では子供の成長をいかに見守り促すか、「安心安全に子どもが成長できる場」言う所に来ていると思います。
また、保育現場は他の保育士と協力してなりたっています。保育士同士のコミュニケーションは円滑でなければ事故につながることもあります。他人の気持ちを考える余裕、自分も他人もフラットな関係であることを理解している必要があると思います。
技術だけレベルが高い人ではなく、一人で出来ない事があっても他人と協力して作り上げることが出来る、そのためには「出来ないから協力してください」と言える自己肯定感が必要だと思います。
(女性 34歳 神奈川県 保育士・カウンセラー)
「保育士」に向いている人
子供が好きで、歌や音楽が大好きな人。子供とスキンシップがとれる人。子供と、一緒に成長を喜び合える人。すぐ感情的にならないで、自分の気持ちを我慢できる人。人の良いところに気づいて、素直に褒めることができる人。他人の気持ちや考えに気づく事ができる人。折り紙などの製作が得意な人。人前に立つのが好きな人。声の大きい人。恥じらいを捨てて、大げさに振る舞うことができる人。礼儀作法や栄養分野などに詳しい人。責任感があり、他人と協力して仕事ができる人。体力に自信がある人。子供の成長、発達などの知識を備えてる人。根気強く子供たちの相手ができる人。健康な人。
反対に向いていない人は
感情的になりやすく、プライドの高い人は子供相手に本気で怒ってしまったり、自分を曲げられず子供に気持ちに添えないので向いてない。他人の気持ちを考える事ができない人は保護者とも上手くいかずに信頼関係が築けず、園の評価にも繋がります。また、すぐに体調を崩してしまう人は子供からの感染などにすぐに移り仕事ができないので向いてない。体力がないと一日中、親代わりに子供の相手ができない。自制心がない人は、子供に手をあげてしまったりなどの体罰に繋がります。保育に関して知識がない人は子供に適切な指導、保育ができない。
(女性 30歳 沖縄県 保育士)
「保育士」に向いている人
保育士に求められるのは、まず第一に子どもと同じ目線で物事を見ることができる点だと思います。どうしても、上からの目線で指導する立場になりやすいですが、できるだけ子どもと同じ目線に立つことで見えてくる世界を子どもと一緒に共有できることは、子どもとの信頼関係を強くするものだと思います。
また最近は、親との関係性も重視されるため、基本的な社会的マナー、礼儀、コミュニケーションがとれることも大切だと思われます。子どもへの対応についてもしっかり話せることは、親にとっても安心して預けられる材料になると考えます。自分の考えや思いをしっかりと言葉で伝えられる力が求められると思います。
反対に向いていない人は
自分の価値観を押し付けようとする人。
子どもはとても柔軟な発想で物事をとらえますが、保育士などの立場の人はそのような子どもの考え方に合わせて、こちらも臨機応変に対応することが大切です。事前にいろいろ準備をしますが、実際の子どもの反応は全く違うこともあります。どんな場面であっても、自分の考え方ばかりを子どもに押し付けるのではなく、柔軟に子どもとのかかわり方を楽しめることが大切だと考えます。答えはいつも1つではないことを、子どもたちと一緒に考える力を育てていくことも保育士の大切な仕事です。こちらの考え方を子どもに押し付けることは、子どもの想像力を引き出せなくなってしまう可能性があります。
(女性 30歳 静岡県 障がい児の療育を担当している保育士)
「保育士」に向いている人
保育士というと子どもが大好きで子どもと遊べる人が向いていると思われがちですが、ただ子どもが好き!というだけでは無理です。
はっきりいって、体力勝負です。
体を動かすという面だけではなくて自分の仕事ややるべきことの仕事の多さへのストレスや疲れへの対処力の面も重要です。
もちろん、子どもが大好きというのが根底にないとできない仕事です。保育園は産まれたばかりの3ヶ月くらいの乳児から6歳までの幼児がいます。三つ子の魂百までというように、人の育ちに1番大切で重要な時期に関わる仕事です。大人の言動一つ一つが子どもに影響し、子どもの周りの人的環境として存在が大きくなります。ですので、言葉遣い言葉かけには特に気を使います。
更に、これが1番難しいと思いますが「気働き」できる人です。10年以上保育士をしている私も今だにできているのか自分で自身はありませんが、子どもの為に何がいいのか悪いのか、その周りの環境や保護者、色んなことを考えられないといけないと思います。
反対に向いていない人は
子ども一人一人を分かろうとしない人だと思います。一斉保育をしている保育園に多いのですが、子どもを集団としてしか見ることのできない人です。
子どもは、一人一人みんな考え方も、感じ方も違います。
こうだからこうなる、とかこう言ったからこうするとかいったマニュアルはありません。
産まれて数ヶ月で保育園にくる乳児は生活ペースが一人ずつ全然違います。起きる時間も食べるペースも全てが違いますので一人一人違う対応をしてその子にあった援助が必要です。
幼児でも、小学校への就学や社会へ出るにあたって集団生活でやるべきことも大切ですが子どもをひとくくりに考えて対応する人は向いていないと思います。
(女性 30歳 福岡県 保育士)
★向いている人、不向きな人(第2弾)にも多数載せていますのでご覧下さい。
保育士が現在の職場に改善してほしいと思うこと調査
全国の待機児童数の3分の1をかかえる東京都が実施した「東京都保育士実態調査報告書」(平成26年3月)をもとに、現在保育士として働いている人が「現在の職場に対して改善してほしいと思っている事」の調査結果を紹介。1位は「給与・賞与等の改善」で約6割が回答しました。
「保育士が現在の職場に改善してほしいこと調査」を見る
「保育士」に転職を考えている人へ
保育士の仕事は、特に子どもが好きな人にとっては、やりがいのある仕事です。一方で園を運営する行政や私立経営者はそのような就業者のモチベーションに依存していたことは否めません。その結果が低賃金や長時間労働による離職者の多さとなって表れているのではないでしょうか。厚労省の試算によれば、保育士免許を所持しているが働いていない人、離職した人いわゆる「潜在保育士」は全国で約70万人以上としています。アベノミクスによる企業業績の改善に伴い、子育て世代の有配偶女性の就業率が上昇している現在、保育園の環境整備は喫緊の課題なのです。
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