管理系職種の中でも人気が高いとされる「人事職」について解説するコーナーです。
人事の仕事は採用、教育、労務、評価、制度の立案・運用など、人事の仕事は多岐にわたります。
今回は、未経験から人事職にチャレンジしたい方のための、「評価業務」についてです。
一般的には上級者が主担当となるため、人事未経験者には遠く感じますが、集計などの事務処理については人事部門全体で対応することが多いため、ご紹介したいと思います。
評価業務の必要性
【公平性】
従業員に高いモチベーションを保ってもらうには、成果を上げた人がきちんと評価され、それが昇給や昇格に反映されるシステムが必要です。ただし、その評価が所属部署や上司によって異なるようでは公平性に欠け、企業全体の向上にはつながりません。
評価に基準を設け、公平性を保持するには、評価について全体を見渡す担当者が必要となるのです。
【個のスキルアップで企業力強化】
評価制度の運用には目標設定が不可欠です。
目標を設定し達成していくことは、スキルアップに繋がります。従業員全員のスキルアップは、企業力強化へと繋がります。
また、目標設定には、上司と部下の目標の擦り合わせなども必要となるため、マネジメントへの意識の向上も効果として考えられています。1対1の面談を行うと、相手の新たな一面を見出すことも多く、より適材適所な仕事の振り分けなども可能となってきます。
評価の仕事
上述のように、評価は様々な目的のもとに実施されているため、多くの手順を要するものです。
今回は中小企業が起用しやすい評価手順を一例としてご紹介します。
賞与に関わるため、半期を1サイクルとすることが一般的です。
【評価制度の設計】
前回や前年度の反省を踏まえ、評価制度を再設計します。反省内容によっては、全く新しい評価制度を採用することもあり、その際には、担当者が多くの方法を模索します。
現在は、評価システムを販売する多くの専門企業やコンサルタントが存在するため、その中から選定していくことが多いようです。
【評価制度方法の周知・指導】
今回の評価方法について周知し、その詳細を指導します。
状況に応じて、社長から目的を説明してもらう必要もあるでしょう。
公平な目標設定や評価のために、評価者研修なども実施します。この時点で意見が出れば、急遽変更することもあります。
【目標設定・集計】
評価制度の周知後、各人の目標設定に入ります。
個人が自身で考えた目標と、上司が達成して欲しいと考えた目標の擦り合わせを行い、等級や職位に応じた目標を決定します。部署やチームの目標については、その単位のリーダーに課された目標として設定します。
人事は、この全ての目標設定シートに目を通し、等級などに応じた目標設定となっているか、仕事量や重要度に偏りがないか、企業全体の経営方針や目標に沿うものか、全体を見ながらチェックします。このチェック機能があるため、人事は評価についての事前勉強や、各部署の置かれている現状把握が欠かせません
【中間報告】
途中経過を確認します。
ここでも面談時間を設けることがあります。進捗具合によって、目標をより高く、低くするなど修正も行います。
【評価の集計】
個人の目標達成度や上司から見た達成度をパーセンテージで数値化し、反省点などの入った目標設定シートを回収します。
人事は、難易度や等級を加味した達成度の計算結果を確認し、不備がないかチェックします。
数値化された目標設定シートから、部全体の達成度なども集計結果として算出します。
【評価会議の設定・運営】
全従業員の目標設定シートに、勤怠状況などの人事情報を加え、評価会議を設定・運営します。
企業規模によっては、部門別や支社別など単位別評価会議の上に、総合的な評価会議が置かれている場合もあります。
評価担当者は、公平な判断がなされているか、会議の進捗に脱線がないかなどを見ながら、事務局を務めます。
【フィードバック】
会議よって最終決定された評価を基に、フィードバックが行われます。
これも上司と部下の面談の形が多く取られます。
評価会議にかけた結果、評価数値が大きく変更された場合は、評価担当者から説明することもありますし、理由を求められた場合も面談に応じます。
上記のサイクルを経て、最終評価結果が、昇格や昇給、賞与の決定、人事異動に反映されます。評価結果が様々な結果に反映されている頃には、既に次期の評価設定に向けて動き出します。
評価は目標達成だけで決定するものではない
先ほど、「勤怠状況などの人事情報を加え~」と、少し触れましたが、評価は目標を達成することだけで決定しません。勤怠状況、勤務態度、資格取得、社内表彰、懲戒や協力度なども考慮します。
(協力度は目標設定シートに組み込まれている場合もあります。)
これは、評価制度が、企業全体の業績向上という軸を持っているためです。
どんなに成果をあげても、その在り方が、他者や他部署の負担を大きく強いるものであれば、全体の業績にストレートに繋がることはありません。
個人で素晴らしい開発を行ったとしても、無断欠勤や理由なき遅刻が目立てば、周囲のモチベーションに影響を及ぼします。
高い評価を得るには、結果だけでなく、そのプロセスも重要ということです。
そう考えると、人事部門が行う多くの仕事が、評価に対して重要な情報を持つことがわかります。
以上、評価の仕事についてご紹介しました。
単なる点数付けではない評価という仕事。企業規模によっては相当な責任を生じますが、その分やりがいも大きいものです。
将来的には、評価会議において意見を発するようなキャリアアップを狙うつもりで目指したいですね。
人事の仕事全体を説明した「人事」の仕事-必要な資質、資格、「採用業務編」 「教育業務編」「労務のしごと編」もご覧下さい。
人事の仕事
採用、教育、労務、評価、制度の立案・運用など、人事の仕事は多岐にわたります。
業界や企業規模によって違いはあるものの、経営資源である『ヒト・モノ・カネ・情報』の4要素のうち、『ヒト』という資源を活かして経営を支えるという立ち位置は、どの業界・企業でも共通です。
未経験から挑戦する「人事」の仕事 | |
採用 | 新卒・中途・アルバイト採用、派遣スタッフ契約や、採用のために準備する媒体検討、イベント出展、会社説明会や面接プロセスなどの全般を担当。 経営戦略に合わせた人員確保や、部署から要求される増員・補充を調整した採用戦略の立案なども行う。 採用業務について |
教育 | 社内外における新人研修やマネージャー研修の立案、実施。教育成果の調査。 資格取得などの管理も行う場合がある。新入社員との接触時間や回数が多い業務のため、配属会議への参加もある。 教育業務について |
労務 | 勤怠管理、給与計算、保険手続き、年末調整など、常に全社員の個人情報を扱い、『人事の要』とも言えるのが労務。 入社・退職時に必要な手続き書類の作成なども、大半が労務の担当。 労務業務について |
評価 | 給与や賞与、昇進・昇格などの根拠となる評価(人事査定)を行い、管理する。 評価システムの導入や、導入後の運用についても舵取りをする。 評価業務について |
制度立案・運用 | 社員が快適に就業し、よりよいパフォーマンスができるように、社内規則やその見直し、運用を行う。ダイバーシティにおいて重要な役割を果たす。 |
※この他にも、突発的な社内トラブルの解決・相談など、人事部門全体で対応する業務も多い。