「人事」の仕事内容〈その3〉-労務のしごと編

「人事」の仕事内容〈その3〉-労務のしごと編

管理系職種の中でも人気が高いとされる「人事職」について解説するコーナーです。
人事の仕事は採用教育労務評価、制度の立案・運用など、人事の仕事は多岐にわたります。

今回は、未経験から人事職にチャレンジしたい方のための、『労務』に的を絞ってご紹介します。
労働に関わる事務を担当する労務とは、どんな仕事でしょう。

労務の仕事

企業により細かい部分で違いはありますが、勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、年末調整、福利厚生、安全衛生管理、健康診断、人事データ全般の管理など、個人情報の扱いが非常に多いため、労務は最も信頼性を問われる立場にあります。

【勤怠管理】

従業員の出退勤時間、残業時間、欠勤、休暇取得状況などを管理する勤怠管理。
給与計算の基本として必要な管理であることはもちろん、勤怠管理からは、様々な情報を読み取ることができます。
例えば、同じ成果をあげている営業のAチームとBチームに、合計勤務時間の大幅な違いがあれば、そこには効率性やチームワークの違い、他部門への協力度の違いなどがあると想像できます。
有給休暇を全て消化し、欠勤が増えている従業員は、職場環境や家庭の事情など、何か問題を抱えている可能性がありますし、退職を考えているのかも知れません。
上記は一例ですが、業務効率を図るためのヒント、問題発生を未然に防ぐための情報等が、勤怠管理データには詰まっています。
世の中には様々な勤怠管理システムが導入されていますが、どんなに優秀なシステムを取り入れても、そこから何を読み取り、どの時点で対策に取り組むことができるかは、労務担当者の力量にかかっています。
ちなみに、残業時間が多い従業員への面談や上長へのヒアリングが多くの企業で始められていますが、これも労務担当者が中心となって行うことが多いようです。

【給与計算】

勤怠管理や保険手続き、通勤手当などの情報を基に計算します。
経理が行う企業もありますが、労務が担当する場合は、経理は合計振込額のみを把握し、従業員別給与額の情報は、労務から直接金融機関に届く形が多いようです。
勤怠や給与管理システムを導入していれば、自動で集計され給与明細が出来上がりますが、確認作業でもかなりの業務量が発生すると考えた方が良いでしょう。
生活を支える給与の確認ですから、間違いも遅延も許されない、正確性と時間管理が重要な仕事です。

【従業員の生活に関わる手続き】

結婚、出産、転居、病気、介護など、生活に変化があると、企業側にも多くの変更手続きが生じます。
社員台帳の変更、手当金や給付金の手続き、社会保険料の見直しなど、これら事務手続きも労務が担当します。
手続き内容は個人の背景で変わりますし、法律も細かく変更される複雑な仕事のため、アウトソーシングすることもありますが、基本的な仕組みが理解できていないと、企業の手続き窓口としての役割は果たせません。

【安全衛生管理】

毎年行う定期健康診断。
これは、労働者の健康確保のために、労働安全衛生法に定められた事業者の義務です。
労務担当者は、健康診断の実施と管理を行い、結果については所轄の労働基準監督署長へ報告します。
(健診結果報告書提出は、常時50人以上の労働者を使用する事業者、特殊健診を必要とする事業者)

【福利厚生】

働きやすい環境を作るだけでなく、意欲的な労働を引き出すことも企業にとって重要です。
休憩スペースや使いやすい化粧室の設置、保養施設の利用促進、勤続年数による特別休暇の設定なども労務管理の一部です。

労務担当者のやりがい

自分の仕事が従業員の生活を支える、縁の下の力持ちであるという自信が持てます。
個人情報の取り扱いが非常に多く、間違いの許されない仕事は、緊張するかも知れませんが、やりがいも感じるでしょう。

労務の厳しさと今後の課題

2015年、過重労働対策の一層の強化のために、月100時間の長時間労働が一定基準を超えた場合、企業名を公表すると発表した厚生労働省ですが、翌年2016年12月には、更なる強化として、月100時間を80時間へ変更し、それに加え、過労死・過労自殺を出した場合も企業名を公表することとしました。
残業は「ダメ。」と言って減るような、単純なものではありません。
そもそも、実際の勤務時間がわかりづらい雇用形態もありますし、自ら、あるいは部署ぐるみで残業時間をごまかすような取り組みもあり、その原因を解決するところから始めなければ、解決には至りません。
従業員の心身の健康に大きく影響する長時間労働。
過重労働対策は、今後、労務が取り組むべき最も大きな課題のひとつと言えるでしょう。ちなみに、その対策のひとつとして、メンタルヘルスに力を入れている企業も多いようです。

以上、労務の仕事についてご紹介しました。
コツコツとした事務処理が多く、地味な印象かも知れませんが、従業員が就業環境を健全に保つためには非常に重要な労務の仕事。
未経験からチャレンジするのであれば、難易度は高いですが、社会保険労務士の勉強が役に立ちます。また、メンタルヘルス・マネジメント検定なども有効です。
企業規模によっては労働組合との交渉業務なども発生します。未経験で労働条件交渉から入ることはありませんが、将来的なことを考えれば、交渉能力を磨く気持ちでいた方がキャリアアップに繋がります。

次回は人事の「労務のしごと」「評価のしごと」について解説いたします。人事の仕事全体を説明した「人事」の仕事-必要な資質、資格、「採用業務編」 「教育業務編」もご覧下さい。

人事の仕事

【人事の仕事】採用、教育、労務、評価、制度の立案・運用など、人事の仕事は多岐にわたります。
業界や企業規模によって違いはあるものの、経営資源である『ヒト・モノ・カネ・情報』の4要素のうち、『ヒト』という資源を活かして経営を支えるという立ち位置は、どの業界・企業でも共通です。

未経験から挑戦する「人事」の仕事
採用 新卒・中途・アルバイト採用、派遣スタッフ契約や、採用のために準備する媒体検討、イベント出展、会社説明会や面接プロセスなどの全般を担当。
経営戦略に合わせた人員確保や、部署から要求される増員・補充を調整した採用戦略の立案なども行う。

採用業務について
教育 社内外における新人研修やマネージャー研修の立案、実施。教育成果の調査。
資格取得などの管理も行う場合がある。新入社員との接触時間や回数が多い業務のため、配属会議への参加もある。
教育業務について
労務 勤怠管理、給与計算、保険手続き、年末調整など、常に全社員の個人情報を扱い、『人事の要』とも言えるのが労務。
入社・退職時に必要な手続き書類の作成なども、大半が労務の担当。
労務業務について
評価 給与や賞与、昇進・昇格などの根拠となる評価(人事査定)を行い、管理する。
評価システムの導入や、導入後の運用についても舵取りをする。
評価業務について
制度立案・運用 社員が快適に就業し、よりよいパフォーマンスができるように、社内規則やその見直し、運用を行う。ダイバーシティにおいて重要な役割を果たす。

※この他にも、突発的な社内トラブルの解決・相談など、人事部門全体で対応する業務も多い。

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