経理事務や現金出納などの「会計事務職」はどのような人が向いているのでしょうか、またどのような人が向いていないと思われるのでしょうか。簿記資格は必須なのでしょうか。ここでは実際に「会計事務職」として働いている人、働いていた人に必要な能力や性格、適職性など現場の生の考えを聞いてみました。「会計事務職」へ転職を考えている人はぜひ参考にして、面接での質問回答の受け答えにお役立てください。
女性に人気のある「会計事務職」
「会計事務職」は、「事務職」のなかでも企業の金銭収支に携わる仕事です。大きくは、電気・ガスなの料金収納をおこなう「現金出納事務職」、銀行や信用金の窓口などの「銀行等窓口事務」、企業の会計や経理を担当する「経理事務職」に分かれています。
その中で皆さんにもっともなじみ深いのは、一般企業の「経理事務職」でしょう。企業には原料の購入から給与の支払い、製品の生産関連や販売関係などさまざまなお金の入出金が発生します。それらをエクセルや会計システムを使って記録管理するほか、毎日の金銭管理として入出金伝票や振替伝票、現金出納帳や総勘定元帳などの帳簿付けをおこないます。比較的大きな企業では経理課セクション、中小企業では経理事務として他の事務職を兼ねているケースもあります。
「会計事務職」の分類
小分類 | 職業 |
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現金出納事務職 | 電気・ガス・水道・電話・NHKの料金収納事務員、支払出納事務員、支払窓口事務員、社会保険料徴収係員、出納事務員など |
銀行等窓口事務 | 銀行窓口係、信用金庫窓口係、テラー、郵便局貯金窓口係、預貯金係員 |
経理事務職 | 会計経理事務員、会計事務員、公認会計士事務所、税理士事務所などの税務会計事務 |
その他の会計事務職 | 予算係事務、用度係事務、原価計算・見積事務、財務事務員、投資信託計理事務など |
ちなみに「事務職」は下記のように各事務職に分かれています。求職にあたっても、各事務職の内容を理解しておくことが必要です。
大分類 | 中分類 |
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事務職 「事務職」全体の平均年収や給与、解説はこちら |
一般事務職 |
会計事務職 | |
生産関連事務職 | |
営業・販売事務職 | |
運輸・郵便事務職 | |
事務用機器操作職 | |
外勤事務 |
競争倍率が高い「会計事務職」
「会計事務職」で働いている人は約154万人で、これは全事務職約1,240万人のおおよそ9分の1にあたります。事務職全体ではさほど多くはありません。
ただとても人気のある職業で、最近の有効求人倍率をみると、倍率は0.65倍と、「一般事務職」の0.3倍ほどではないものの、それでも10人の就職希望者のうち6.5人しか就職できない状態です。スキルや経験、資格の有無にもよりますが「会計事務職」への転職は決して簡単ではないことは覚えておきましょう。
なお「事務職」全体の平均給与や年収、解説はこちらのページにまとめてありますのでご覧下さい。
「会計事務職」に向いている人、向いてない人
「会計事務職」はどのような人が向いているのでしょうか。どのような資質や性格、能力が求められるのでしょうか。またどのような人が向いていないのでしょうか。
皆さんの意見を聞いていると、決してパソコンの前でエクセルや会計システムを操作しているだけでは無さそうです。ここでは実際に事務職として働いている人、働いていた人に考えを聞いてみました。現場の生の声をぜひご覧下さい。
※各事務職の職種と仕事内容はこちらをご覧下さい。
コミュニケーションが苦手な人は向いていない
●会計事務職に向いている人、求められる資質
会計事務職で働いていくには簿記の知識とパソコンスキルが必要です。会計事務職の日々の業務として必ず挙げられることが、会計データの記録作業です。会計ソフトや表計算ソフトに毎日の売上高や費用などを記録していきます。借方と貸方という簿記の基礎用語が理解できていればこの記録業務がスムーズに終わらせることができます。また、従来は現金出納帳の管理や会計簿を紙ベースで保存していましたが、現在はパソコンにデータとして保存することが当たり前となっています。こうしたデータを本社や税理士事務所に送信して、決算の業務を行うことになりますので、パソコンスキルも会計事務職には求められます。
●反対に会計事務職に向いていないと思う人は
会計事務職に向いていない人の特徴が、コミュニケーションを取ることが苦手な人です。会計事務職と聞くとずっと事務所にこもってパソコンを触っているイメージや伝票の整理をしているイメージがあると思います。しかし、売上高の管理や小口現金の管理などは職場の同僚や上司と上手くコミュニケーションを取りながら進めていかなくてはなりません。また、資金繰りに関することは銀行をはじめとした金融機関や地方自治体の担当者に相談することになります。このため何度も打ち合わせやスケジュールの確認で他人と接触する業務も多くあるので、コミュニケーションを取ることが苦手な人には、会計事務職は向いていないのです。
(男性 26歳 福岡県)
税務知識や金融知識、労務知識は多少でも必要
●会計事務職に向いている人、求められる資質
私は、経理事務をしているのですが、黙々とパソコンに向かって会計データを入力しています。ですので、一日中デスクに座っていても飽きない向いていると思います。また、多少の税務知識や金融知識、労務知識が要求されるので、入社後の後付けでも構いませんが、少しでも知っている事があると重宝します。分からないことは自分で調べる、上司に聞く等、学ぶ姿勢や、知識欲のある方が向いています。電話や来客等、接客接遇もありますので、人あたりが良く落ち着いた雰囲気の方が向いていると思います。一般のお客様の他に他社の上席などの訪問もあるので、マナーはとても大切です。
●反対に会計事務職に向いていないと思う人は
アクティブで明るく、人と喋るのが好きで、計算や書類仕事よりも、社外へ出たいという方は、事務職よりも、営業職に就く方がいいと思います。そういう方は事務所にいても無駄口を働くので事務職には向いていません。また、体力仕事の方が好きな方も向いていません。ずっと事務所にカンヅメの事もあるので、集中力のない方は難しいです。事務職は年齢関係なく務まる仕事です。職種によって男女の違いもあまり関係ないと思いますが、中高齢で事務未経験という方には難しいと思います。経理事務は会社の財布を采配する事もあるので、計算が苦手で、ズボラな人も向いていません。
(女性 35歳 滋賀県)
簿記の資格が必須の会社もあり
●会計事務職に向いている人、求められる資質
パソコン操作、特にエクセルの操作は絶対だと思います。紙に書いている時代ではありません。全てPC上でデータ管理が当たり前です。初めから用意されたテンプレートに入力だけできればいいというわけでもありません。場合によっては自分で様式を作成することも多々あります。表作成、計算式の入力はできた方がいいと思います。
また、簿記の資格もあるに越したことはないでしょう。会計だと資格必須という会社も多いと思います。
また、柔軟な対応能力も必要です。会社にもよるかもしれませんが、私は経理事務の他にも頼まれたらお茶出し、営業の手伝い、会社ブログの更新など、何でもしています。
●反対に会計事務職に向いていないと思う人は
じっと座っていられない人には向かない職業だと思います。デスクワークが基本なので、休憩とトイレ以外、1日席から離れなかったなんてこともしょっちゅうあります。じっとしていられない、体を動かしたいと思う方には難しいと思います。
また数字が苦手な方も大変だと思います。やはりお金を扱いますので、計算ができるのはもちろんですが、数字を見慣れていないと見間違いや桁間違い等の入力ミスにもつながります。
あと以外と領収書を出さない人とか、期限を守らない人が多いです。そういう人にはっきりと言わなきゃいけないことも多いので、他の方にはっきりと物事を言えない人も大変です。
(女性 33歳 宮城県)
脅されても屈しない強い心が必要
●銀行等窓口事務職に向いている人は
預貯金窓口事務をしていました。通常の事務である、丁寧・迅速・ノーミスのスキル以外に窓口でお客様ともお話するので、笑顔で接客できる愛嬌が必要です。ですが、最も必要とされるのは「脅されても屈しない強い心」です。どれほど「早くしろ!」とか急かされても、絶対にミスがないことを確認するまで屈してはいけません。そういう恫喝をするお客様ほど、絶対に何かをやらかしているからです。例えば、数字の改ざんです。お客様が書類の数字を改ざんしているのを発見したら、書類は書き直していただかないといけません。「早くしろ!」と大声で怒鳴られても、その書類では受け取れないことを説明し、書き直しをお願いする、あるいは「今からどのくらい時間がかかる、時間がないのなら別日にしてほしい」と大目の時間を見積もってお伝えする、などしないといけません。ふつうのサービス業だと、お客様目線にたって、端折れる部分は端折ってやる、代筆だってしてあげる、お客様を信じてやる、事態はそれだけでおさまります。でも、ここで急いでいるお客様のために、融通をきかせてやろう、とするとひどい目にあうのが預貯金窓口です。
●反対に銀行等窓口事務職に向いていないと思う人は
書類仕事や確認が多い事務には、雑・遅い・いい加減でミスが多い人は、しんどいと思います。仕事がまったく終わりません。事務は、集中してやらせてもらえないことがほとんどです。書類に目を落としていざ始めよう、と思ったら、話しかけられ、電話が鳴ります。やりたいことは、一向にすすまずにペンディングが山になります。集中を中断させられることに、イチイチいらついていては身がもたないので、いまやっていることに集中しすぎないよう、いつでも中断できる精神状態を保たないといけません。それに、たとえお客様から「早くしろ!」と脅されたからといって、焦って事務処理、確認の流れを端折ってしまう人、普通はやっていないことをなんの確認もなしに「これぐらいなら、いいだろう」と独断でやってしまうような慎重さが足りない人は、預貯金事務には向かないと思います。
(女性 34歳 大阪府)
頭の回転が速い、計算が得意な人が向いている
●会計事務職に向いている人は
一般の事務の仕事であれば資格はなくても入社、仕事をすることが可能ですが、会計事務職は簿記の資格があれば採用されるのに有利かもしれません。仕事の内容はほとんどパソコンと書類のにらめっこです。データ、テキストを入力し書類を作成する。また、請求書や納品書などの確認や作成が多いです。私の働いている事務は建築関係でもあるので、伝票や商品の計算、出荷など、事務と言っても仕事は多いと思います。向いているのは、頭の回転が速い方、計算が得意、人とのコミュニケーションが取れる方だと思います。計算することも多いし、人と接することもたくさんあります。苦手だとしても何度も経験していくことが大切だと思います。
●会計事務職に向いていない人は
向かないと思うのは、あいさつや返事ができない方だと思います。また、パソコンの電源、キーボードの位置が分からない方などでしょうか。基本は、どこの会社でも挨拶は必要だと思いますが。このあいさつ、返事ができないと、協力会社も仕事をお願いしようと思わなくなるだろうし、信頼関係が一気に壊れてしまいます。また、事務の仕事はほとんどがパソコンです。パソコンがないと仕事ができないというくらい使う頻度が多いです。初めは苦手でもだんだん使いこなせれるようになるのであれば、いいかもしれませんが、パソコンの電源であったり、文字の入れ方がいつまでもわからないようであれば会社は困るかもしれません。 (ちょっとレベルの低い話しかもしれませんが)
(女性 27歳 富山県)
正確さ、的確さ、能率の良さなど
●銀行等窓口事務職で働くには
就職するには、最低でも高校卒業をしてなければいけません。大卒のほうが採用されやすいのは言うまでもありません。
銀行は、事務処理やカウンター業務は最近では派遣社員を使うところがほとんどです。
正規採用を目指すには銀行は簡単とはいいきれませんが、銀行の望む人材であれば受かります。銀行の業務で望まれるのは正確さ、的確さ、能率の良さ、コミュニケーション能力の高さです。
投資銀行と一般の銀行はまた違いますので、事前に調査をして応募してください。
●銀行等窓口事務職に求められるもの
コンピュータの資格、大卒などが事務職で働くには有利になってきます。
銀行の事務職では、速さが求められますので、テキパキと効率よく事務をこなせる真面目な人が求められます。お金を相手にする仕事なので、正確さや細かい作業に向いている人が採用されます。
不正やお客様に迷惑をかけるなどしないこと。不正は銀行にとって強烈なイメージダウンになりますので、行内でなにか問題を起こさないクリーンなイメージを持った人が好まれます。
(女性 48歳 千葉県)
最後に編集部から
「事務職」の仕事はとても人気のある職業です。仕事の需要と供給の度合いを表す有効求人倍率でも約0.3倍~約0.6倍と、求職者一人に求人案件が一件もありません。3人~2人に一人くらいの倍率になっています。
そのような厳しい状況の中で、どうやって採用面接を乗り越えて、入社まで持っていくか?を真剣に考える必要があります。
一つは資格面。簿記の2級(1級ならベスト)やマイクロソフトオフィススシャリスト(MOS)、語学面でTOEICやTOEFLなどを所有していると、(実際に現場で必要になるかは別として)本人の仕事への意欲の高さや実務能力をアピール出来るはずです。
あとは性格面。これはそうそう変えられるものではありませんが、会計事務経験者の話を聞いていると多くの人が、他の社員とのコミュニケーションが重要であることを話しています。採用担当者としても、能力が高い人を採用したものの周囲のスタッフと軋轢を生むようなことは避けたい訳です。
面接では必ず、自分の特徴や強みをしっかり説明できることはもちろんのこと、事務職全般に欠かせない協調性や柔軟性、社交性などについてもさりげなくアピールできると良いでしょう。