管理系職種の中でも人気が高いとされる「人事職」について解説するコーナーです。
人事の仕事は採用、教育、労務、評価、制度の立案・運用など、人事の仕事は多岐にわたります。
今回は人事職の中でも重要な「教育業務」についてご紹介します。研修運営者のイメージですが、実際の仕事はどんなものなのでしょう。
教育担当者の必要性
経営資源である『ヒト』の価値を維持・向上させるために必要な能力開発。それを手掛けるのが人事に属する教育担当です。
少人数で構成された企業であれば、従業員1人1人のスキルや今後の方向性を見て、仕事の中で教育をしていくことも可能ですが、多くの部門や部署を持つ企業となるとそうはいきません。
新入社員に求めるもの、ラインのリーダーに求めるもの、部署長に求めるもの等。それぞれを一定レベルまで押し上げていく、または統一するには、専任者が必要となってきます。
教育の仕事
教育担当者の仕事は、研修の運営だけではなく、研修による成果の確認や管理、把握した能力をどのように活かしていくかなどにも関わります。
【能力開発】
様々な研修を通して、従業員の能力開発を行います。研修には以下のような例が挙げられます。
採用の仕事 | 仕事内容 |
---|---|
新人研修 | 採用担当から引き継いだ新入社員の研修を実施。 ビジネスマナー、商品知識、業界知識、各部門の役割理解、就業規則、社内ルール※1などの習得を目的とする。 OJTやOff-JT※2なども設定する。 新卒の研修には教育担当者も同席し、自ら講師となることも多い。 |
等級研修 | 企業内で設定された等級制度に沿って実施する研修。 自身の等級に課された役割を認識して仕事を進められるよう、同じ等級者を集めることで、競争しながら成長させる目的も持つ。 |
商品研修 | 新商品や新サービス、従来商品改訂等の知識習得のために実施。 |
リーダー研修 | 個人ではなく、グループ全体の業績をあげていくために必要な、リーダーに求める役割を認識するための研修。 同程度の役職や等級で、ひとつの課題に対し、グループ討議をする形が多い。 |
マネージャー研修 | リーダーが主任クラスだとすると、こちらは部長・課長クラスの研修。 部門間の協力の在り方や、企業という母体全体の業績向上のためにマネージャーに課される役割を認識する内容などがある。 メンタル面や、ダイバーシティ経営に関する研修を実施する企業もある。 |
職種別研修 | その職種に必要な知識習得・維持向上のために実施。 |
※1 社内ルール:朝礼の準備や経費精算方法など、その企業ならではの細々とした業務手順などを学ぶ
※2 Off-JT:社外での実地訓練や外部研修の意(Off the Job Training)
企業の属する業界や規模によって、実施する研修は様々です。
教育担当者から社内調査の上で提案・実施するものばかりではなく、各部門から要請を受けることもあれば、外部の研修を受けたいという要請も対応・検討します。
【成果の確認と管理】
研修を受けたことによる各人のスキルアップの確認をしなければ、成果の有無はわかりません。そのため、教育担当者は成果の確認作業に多くの時間を要します。
研修直後のアンケートやペーパーテスト、研修終了1カ月後の本人確認や上長へのヒアリングなどを行い、研修による成果の有無や成果の度合いを確認します。
確認した結果、成果を認められない従業員には、更なる研修を用意することもありますし、他部署を経験させる方法をとることもあります。
また、研修を通して個人の秀でた能力を発見すれば、更なる選抜研修などを用意することもあります。ごく一部の従業員しか参加できない海外研修などが、それに該当するという企業もあります。
選抜研修を用意することで向上心を掻き立て、活気ある社内環境を作り出すのも、教育担当者の役割と言えます。
【資格管理】
従業員の取得している資格の情報なども、教育担当者が管理します。
資格取得の助成や、資格手当の手続きなども、教育担当者を通してから労務担当者に渡る企業が多いようです。
【配属への情報提供・参加】
教育担当者には、その役割上、全従業員のスキル情報が集まります。
そのため、従業員の配属や昇格・昇進会議などに情報を提供する機会が多く、会議そのものに参加することもあります。
特に、新卒新入社員の配属については一番の情報所有者のため、配属への意見を求められる立場になることもあります。
教育担当者のやりがいと苦労
教育担当者は、研修を通して、従業員との関りが深くなりやすい仕事。
そのため、関わった従業員の成長には大きな喜びを感じます。逆に、なかなか成果を出せない従業員には、親のような心配をしてしまいますし、自分の企画に問題があるのではと不安も募ります。
ここで注意したいのが、公平性についての意識と、常に手本となる意識の重要性です。
常に公平性を保って従業員のスキルを管理しなければ、配属会議で的確な発言はできません。研修で横柄な態度をとれば、研修を受ける側の従業員も、それに応じた態度をとるものです。
まるで教師の基本のようですが、その位の意識を持たなければ務まりません。
「教育担当のくせに知らないの?」という声が聞こえないよう、常に勉強も必要ですし、自分自身が研修受講対象者の時などは尚更苦労します。
自信のある姿勢で皆の前に立つには、見えない努力が必要な仕事なのです。
最後に
『ヒト』を扱う面白みに比例して、厳しさもある『教育』という仕事。
未経験から主任担当者になることはありませんが、会場手配や資料準備、情報整理などの仕事も大量にありますから、補助的な役割での募集であれば、未経験者でも採用の可能性があります。
教育をピンポイントに狙う場合は、社会人としてのビジネスマナーを習得して、企業に研修機構が必要な理由を、自分の言葉で説明できるようにして臨むことをお勧めします。
次回は人事の「労務のしごと」「評価のしごと」について解説いたします。人事の仕事全体を説明した「人事」の仕事-必要な資質、資格、「採用業務編」「教育業務編」「労務業務編」もご覧下さい。
人事の仕事
採用、教育、労務、評価、制度の立案・運用など、人事の仕事は多岐にわたります。
業界や企業規模によって違いはあるものの、経営資源である『ヒト・モノ・カネ・情報』の4要素のうち、『ヒト』という資源を活かして経営を支えるという立ち位置は、どの業界・企業でも共通です。
未経験から挑戦する「人事」の仕事 | |
採用 | 新卒・中途・アルバイト採用、派遣スタッフ契約や、採用のために準備する媒体検討、イベント出展、会社説明会や面接プロセスなどの全般を担当。 経営戦略に合わせた人員確保や、部署から要求される増員・補充を調整した採用戦略の立案なども行う。 採用業務について |
教育 | 社内外における新人研修やマネージャー研修の立案、実施。教育成果の調査。 資格取得などの管理も行う場合がある。新入社員との接触時間や回数が多い業務のため、配属会議への参加もある。 教育業務について |
労務 | 勤怠管理、給与計算、保険手続き、年末調整など、常に全社員の個人情報を扱い、『人事の要』とも言えるのが労務。 入社・退職時に必要な手続き書類の作成なども、大半が労務の担当。 教育業務について |
評価 | 給与や賞与、昇進・昇格などの根拠となる評価(人事査定)を行い、管理する。 評価システムの導入や、導入後の運用についても舵取りをする。 教育業務について |
制度立案・運用 | 社員が快適に就業し、よりよいパフォーマンスができるように、社内規則やその見直し、運用を行う。ダイバーシティにおいて重要な役割を果たす。 |
※この他にも、突発的な社内トラブルの解決・相談など、人事部門全体で対応する業務も多い。