「社会福祉士(ソーシャルワーカー)」は身体や精神の障害や日常生活に支障がある人に対して、福祉に関する相談に乗り、アドバイスや指導のほか、福祉サービス業者などとの連絡、調整などをおこなう仕事です。今回は「社会福祉士」に転職する人向けに、「社会福祉士」の仕事内容、平均年収・給与、また現在働いている人から「社会福祉士」に向いている人向いていない人について解説いたします。ぜひ転職活動の参考にしてください。
「社会福祉士」は社会福祉分野の国家資格
「社会福祉士(ソーシャルワーカー)」は、1987年の「社会福祉士及び介護福祉士法」において定められた社会福祉分野の国家資格で、専門的な知識と技術にて、身体や精神の障害や日常生活に支障がある人に対して、福祉に関する相談に乗り、アドバイスや指導のほか、福祉サービス業者などとの連絡、調整などをおこなう仕事です。「精神保健福祉士」 「介護福祉士」とあわせて3福祉士と呼ばれています。( 3福祉士とは? )
公益財団法人 社会福祉振興・試験センターによれば2016年3月現在、全国の社会福祉士登録者数は約20万人、「社会福祉士」として働く人は全国で約38,000人になります。
おもな勤務先としては、高齢者福祉施設や知的障害者援護施設、児童福祉施設、身体障害者更生援護施設のほか、行政機関、保健機関・医療機関、教育機関、地域包括支援センターなどがあげられます。医療や保健・教育などの関係機関と連携しながら、福祉を必要とする人が安心して生活を送れるようにサポートしています。
年々、活躍の場が広がる「社会福祉士」
平成12年には約2.4万人だった社会福祉士登録者数は、平成27年には約20万人と年々増加しています。近年では、地域包括支援センターに社会福祉士の設置を義務付けたほか、スクールソーシャルワーカーや刑務所ソーシャルワーカーに社会福祉士資格が必要条件となるなど、活躍の場は広がっています。
また「社会福祉士」の他の資格の保有状況を見ると、「社会福祉主事」が59.6%、「介護支援専門員(ケアマネージャー)」が44.7%、「ホームヘルパー(訪問介護員)」が 33.5%、「介護福祉士」が33.0%となっています。自身の知識や技術を高めるためや職場で求められてなど理由はさまざまですが、転職に有利になることをあげている人も多いようです。
社会福祉士 登録者数(人) | |
平成12年 | 24,006 |
平成13年 | 29,979 |
平成14年 | 38,157 |
平成15年 | 48,409 |
平成16年 | 58,952 |
平成17年 | 70,968 |
平成18年 | 83,355 |
平成19年 | 95,216 |
平成20年 | 108,877 |
平成21年 | 122,138 |
平成22年 | 134,066 |
平成23年 | 146,220 |
平成24年 | 157,463 |
平成25年 | 165,494 |
平成26年 | 177,896 |
平成27年 | 195,336 |
出典:社会福祉振興・試験センター
「社会福祉士」になるには
「社会福祉士」になるには、福祉系4年制大学卒業者(指定科目履修)、社会福祉士指定養成施設を卒業した上で「社会福祉士国家試験」に合格する必要があります。
「社会福祉士国家試験」は毎年1回、1月下旬に実施されており、平成28年の試験実施状況は、受験者数 44,764人、合格者数 11,735人、合格率 26.2%となっています。合格するのは4人に1人という狭き門であることがわかります。合格者の内訳は、男性が3,948人(33.6%)、女性が7,787人(66.4%)と、おおよそ男性:1、女性:2の割合で、女性が多くなっています。これまでの累計は受験者数が740,871人、合格者数 204,399人、合格率が27.6%となっています。
「社会福祉士国家試験」の結果 | |||
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第28回(平成28年度) | 44,764人 | 11,735人 | 26.2% |
第27回(平成27年度) | 45,187人 | 12,181人 | 27.0% |
第26回(平成26年度) | 45,578人 | 12,540人 | 27.5% |
第25回(平成25年度) | 42,841人 | 8,058人 | 18.8% |
第24回(平成24年度) | 42,882人 | 11,282人 | 26.3% |
※数字は(公財)社会福祉振興・試験センター
「社会福祉士」の平均年収・給与
それでは次に「社会福祉士」の平均給与、平均年収をみてみましょう。
「平成27年度就労状況調査結果(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)」をみると、福祉・介護・医療分野で働いている人の社会福祉士の年収は男女計平均で 377万円となっています。男性平均は439万円、女性平均は339万円です。保健センターなど自治体勤務の場合は地方公務員として各自治体に基づきます。
社会福祉士の平均年収(平成26年) | ||
雇用形態 | 平均年収 | |
男性 | 正規職員 | 454万円 |
非正規職員(常勤) | 315万円 | |
非正規職員(パート等) | 197万円 | |
派遣職員 | — | |
女性 | 正規職員 | 380万円 |
非正規職員(常勤) | 277万円 | |
非正規職員(パート等) | 146万円 | |
派遣職員 | 237万円 |
社会福祉士の平均年収(平成26年) | |
年代 | 平均年収 |
20代 | 295万円 |
30代 | 346万円 |
40代 | 408万円 |
50代 | 475万円 |
※データは公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「平成27年度就労状況調査結果」をもとに作成
「社会福祉士」に向いている人、向いてない人
では「社会福祉士」はどのような人が向いているのでしょうか。実際に「社会福祉士」で働いている人に「求められる資質、向いている人、向いてないと思う人」を尋ねてみました。転職に当たっての参考にしていただければと思います。
●「社会福祉士」に向いている人
社会保障制度は、それぞれで働く分野をまんべんなく知らなければなりません。例えば、医療ソーシャルワーカーなら、医療の制度はもちろんですが、病院の診療科目により、高齢者(介護保険)や障害、児童についても詳しくなければなりません。さらに雇用保険、ひとり親、生活保護などの制度についても知っておく必要があります。
実際、これを全てというのは、とてもすぐに情報提供できるようにはなりません。そのため、同僚と円滑にコミュニケーションをとり、アドバイスや情報交換していくことが必要です。また研修などへ参加して、自己研鑽していくしかないのです。
そのため、向上心があって、ネットワーク作りが上手な人。そして、何よりも「あきらめていいケースなんかない!」というくらいの熱い気持ちがあると、仕事が社会貢献につながると思います。
●反対に向いていない人は
向いていないと思うのはコミュニケーションが苦手な人です。クライアントと話をすることができないばかりか、同僚とも話しができないので、自分のサポートを振り返る事もできないのではないでしょうか。コミュニケーションが苦手な人は、往々にして、人の気持ちを察知するのも苦手なので、不安を解消するような行動も取れないと思います。
例えば、今後どのような手続きがあるのかわからないために不安を抱えている人に、大まかにスケジュールを伝えたり、次回の面談時期を決めておくなど、安心してもらえるようなサポートができないように思えます。また言われた事しかできない人、向上心がない人も、新たに情報を得ようともせず、この支援で良かったのかと振り返る事もしない傾向があるので厳しいでしょう。
(女性 47歳 北海道 社会福祉士)
●「社会福祉士」に向いている人
4年制大学を卒業後、社会福祉士の国家試験を受けて資格取得をし、数年社会福祉士として社会福祉施設で働いていました。社会福祉士は介護福祉士やソーシャルワーカーの職業と混同されることが多いですが、どちらかというと管理業務が主体となっており、広い視野で見渡せる能力が必要となってきます。カウンセリングや福祉相談業務も主な仕事であり、児童施設や介護施設で働く社会福祉士には欠かせないものとなってきます。人の話をその人の立場で聞き、冷静な頭で考え周囲とのバランスを取り持つよう配慮することの出来る方が向いていると思われます。また、社会に貢献したいという思いの強い方が職務をまっとうすることが出来ると思います。
●反対に向いていない人は
視野の狭い人、些細なことが気になってしまう人、物事を冷静に考えられない人は、社会福祉士には向いていないと思います。社会福祉士が出来ないということではありませんが、仕事を続けていく上で自分自身へのストレスが大きくなっていくでしょう。また、福祉サービスの奉仕精神、人への思いやりが薄い人には、社会的弱者と呼ばれる社会福祉士を必要としている方々に親身になったアドバイスが出来ないので向いていないと思います。また、社会福祉士は黙々と働くというよりは、様々な方と話し合い、交渉し、助言していくアクティブジョブです。コミュニケーション能力の低い方には向いていないと言えます。
(女性 32歳 三重県 主婦)
「介護職」は社会福祉の専門的職と介護サービス職に分類される
「介護職」ならびに「保健福祉分野」は、国家資格やそれに準ずる資格を持ち、高度の専門的水準を要する老人ホームや介護施設での「ケアマネジャー(介護支援専門員)」や「介護福祉士」「医療ソーシャルワーカー(MSW)」「社会福祉士」「精神保健福祉士」「心理カウンセラー」などの「社会福祉の専門的職」と、介護サービス員などの「施設介護員」、ホームヘルパーなどの「訪問介護員」など「サービス職」に分類される「介護サービス職」に大別されます。「介護福祉士」や「社会福祉士」はさまざまな職種を兼ねている人も多く、職業として分類しづらいのが現状です。
大分類 | 中分類 | 小分類 |
---|---|---|
専門的・技術的職 | 社会福祉の専門的職 | 保育士 |
ケアマネージャー(介護支援専門員) | ||
介護福祉士 | ||
社会福祉士(ソーシャルワーカー) | ||
精神保健福祉士(ソーシャルワーカー) | ||
児童心理司、児童福祉司 | ||
その他 | ||
サービス職 | 介護サービス職 | 施設介護職(医療施設、老人福祉施設の介護サービス員) |
訪問介護職(在宅の介護員、ホームヘルパー、訪問入浴介助員) |