転職を考えている人にとって、企業側が「採用選考で重視した点は何か?」はとても気になるデータではないでしょうか。自分の性格や資質は一朝一夕に変えたり、身に付けられたりするものではありませんが、それでも面接官が求めていることを事前に知っているのと、知らないのとでは、面接での受け答えも変わってくるはずです。何より先方のニーズに対してしっかりと対策を練ることができます。
今回は厚労省が若年労働者(15~34歳の労働者)を雇用している全国の事業所16,607社を対象におこなった「平成25年若年者雇用実態調査」の中で、「正社員の採用選考にあたり重視した点」で得られた回答について解説をいたします。
最も多かったのは「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」
調査結果によると、企業が正社員の採用選考にあたり重視した点で、最も多かったのは「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」の74.7%でした。実に10人中7人以上が重要視しています。ちなみにこの答えは新卒採用の場合でも1位となっていますので、中途採用、新卒採用ともに求められている資質であることがわかります。
3つの言葉が羅列してあると、何となく漠然と捉えてしまいがちなので、言葉を分解してすこし深く考えてみましょう。
●職業意識
「職業意識」とは、大辞泉によると「自分の職業に対してもつ意識や自覚。また、その職業の人に特有の見方・考え方」とあります。
この職業が存在する意義、世の中の人から必要とされる理由は何なのか、自分はこの仕事を通して何を実現したいかを考えてみるといいですね。「お金のため」であることもわかりますが、選考でそのような現実的な答えは求められていません。こちらの「面接でよく聞かれる「職業意識」とは?」もどうぞ。
●勤労意欲
「勤労意欲」とは、「働きたいと思う気持ち」です。なぜこの会社で働きたいか、どうしてもこの仕事に就きたい理由を突き詰めて考えてみる必要があります。「採用選考で重視される「勤労意欲」とは?どのようにアピールすれば良いのか」で詳しく説明しています。
●チャレンジ精神
「チャレンジ精神」とは、文字通り新しいことに挑戦していく気持ちや態度です。人から言われてやるのではなく(受動的)、自ら目標をみつけて行動していく力です。
これらの3つが選考の上で重視する点と挙げられています。つまり採用者側は、前向きに仕事や人生を捉え、自分の力で行動していくことができるか、どうかを見極めたいと思っているのです。
採用理由 | 割合(複数回答) |
---|---|
職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神 | 74.7% |
マナー・社会常識 | 61.8% |
コミュニケーション能力 | 55.0% |
組織への適応性 | 53.6% |
業務に役立つ職業経験・訓練経験 | 37.9% |
業務に役立つ専門知識や技能(資格・免許や語学力) | 36.9% |
学歴・経歴 | 24.2% |
従順さ・会社への忠誠心 | 24.0% |
柔軟な発想 | 18.4% |
その他 | 4.8% |
2番目に多いのが「マナー・社会常識」の61.8%
2番目に多かったのが「マナー・社会常識」の61.8%でした。この回答は、一つだけあげる場合は恐らく選ばれない項目で、複数選択可能な調査なので上位に登場したのでしょう。新卒者は当然「マナー・社会常識」について劣りますし、会社側も大して気にしてはいません。社会人経験が無いので当然と言えば当然です。
一方、20~30代の転職者はこれまでの仕事を通して「マナー・社会常識」を身につけていることが前提とされています。時々マナーや一般常識の無い中途の求職者もいるので、おそらく人事採用者があとで社内から文句を言われない意味で回答しているのだと考えます。あまり重要なスキルだとは思えません。
「コミュニケーション能力」「組織への適応性」
3番目が「コミュニケーション能力」で55.0%、4番目が「組織への適応性」で53.6%でした。ほぼ同じような意味合いのある点について10人中約半分の人が最も重視すると答えています。
このあたりはよく言われることです。会社、仕事というのは人の集合体なので、上司や同僚、取引先、部下と円滑に関係を築きながら、ものごとを進めていくことが要求されます。「自分はこうしたい、だからこうしてくれ」ではなく、「自分はこうしたいと思う、あなたはどうしたいですか、であればこのようにしてはどうでしょう、OK!ではこのようにしましょう」のように、関係者間で納得のキャッチボール続けていく必要があるのです。特に和を重視する日本企業はこの傾向が強いように思われます。
ただ今の日本企業が停滞している原因、アメリカや中国には勝てず、下だと思っていた国からもどんどん追い上げられている理由は、経営陣や上層部が若者に対して過度にコミュニケーション力を求めすぎていることが一因のような気もします。組織上層部にとってこのような能力に長けた人は組織を管理しやすいし、付き合いやすいのも事実なのですが、反対にいま必要なのは、他に動じない強固な信念を持って、まわりの反対を受けても最後までやり遂げる力ではないでしょうか。まったく人のいうことを聞かない頑固者というのでしょうか。世の中を見渡すと結局、競争の厳しいマーケットにイノベーションを興し、新しい市場を切り開いているのは、このような力を持った人ばかりです。
5番目は「業務に役立つ職業経験・訓練経験」
5番目は「業務に役立つ職業経験・訓練経験」の37.9%、6番目は「業務に役立つ専門知識や技能(資格・免許や語学力)」の36.9%でした。これは中途採用にとって当然必要な点です。単刀直入に言えば「即戦力として会社に貢献できますか?」ということです。同業界への転職であれば、すでに業界の仕組みや流れを理解しており、すぐに仕事に取り組めるか、異業種への転職であれば営業や製造、開発など職種に必要な経験を持っているかどうか、が採用担当者としては気になるのです。その上で、現在の社内に新しい風を起こしてくれる人材を探しているのではないでしょうか。
最後に
転職活動とは、すこし厳しい良い方をすれば結局「お互いの利害関係が一致できるか」なのです。採用側は社内に新しい血を入れて売上アップを目指しており、一方の求職者は自分が持っている経験や能力を高く買ってくれるところを探しています。お互いの求めているものが合致した時に円満に採用(契約)となるのです。
求職者は「自分はこうです」「私はこんなことができます」と自分に都合の良いことだけをプレゼンするのではなく、相手が求めていることを事前調査や会話の中からつかみ取り、面接という商談の場でさりげなく会話に散りばめていく方がいいのです。
仕事とは人と人との付き合いです。採用活動も同様です。向こうが「この人と一緒に働きたい」「この人はウチの会社に入ってほしい」と思ってもらえるように、特に7割以上の人が重視すると答えた「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」について、自分の答えをきちんと持っておきましょう。
※「20代の転職」シリーズについてはこちらもご覧下さい。