採用活動をおこなっている企業に「若手の正社員の採用選考にあたり重視した点は何ですか?」と尋ねたところ、もっとも多かった回答が「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」でした。答えた企業の割合は74.7% 。実に10社中 7社以上が重視したと答えている大事な項目です。
でも、これらの「単語」は、字面(見た目の感じ)だけで、なんとなく理解したつもりになっている人も多いのではないでしょうか。たとえば、最終面接で社長から「あなたの職業意識はどんなものですか?」と聞かれた時に、「職業意識」の意味をしっかり理解した上で、ピントのズレない答えを出せる人は、なかなかいるものではありません。大半の人は「字の印象」だけでなんとなく理解したつもりになってしまっているのです。
今回は、企業側が重要視している「職業意識」とはそもそも何なのか、面接で聞かれた時にどのように答えれば説得力があるのか、考えてみたいと思います。(※「勤労意欲」 「チャレンジ精神」はこちらにまとめました)
「職業意識」とは
「職業意識」とは、大辞泉によると「自分の職業に対してもつ意識や自覚。また、その職業の人に特有の見方・考え方」とあります。
これだけだと何だか難しく思えてしまうのですが、具体的にいうと、働こうとしているその職業が世に存在する意義~世の中の人から必要とされる理由、自分がこの仕事を通して実現したいこと、などでしょうか。
たとえば、わかりやすいところで「介護業界」における「職業意識」だと
「これからの高齢化社会を考えると、老人を支援する職業が今まで以上に世の中から求められていると思う。認知症の自分の祖父と接していてもわかるが、意思の疎通がなかなか出来ず大変だと感じる。でもこれまで私たちの年代を支えてくれた恩を返すつもりで働きたいと考えている。幸いにも私はまだ20代で体力、気力とも充実しているので、多少の困難にも立ち向かっていけると思う」
といった考えや答えが求められているのではないでしょうか。
「職業意識」をもう少し大きな枠で捉えると、「働く意味」につながっていきます。これまでの各種意識調査で「働く意味」について尋ねると、大体いつも「お金のため」「生きていくため」「生活のため」「自立するため」「自分の可能性を知るため」といった答えが出て来ます。これらの回答は本能的にそう思ったから答えている訳で、決して間違いでもありませんし、実際、生きていくのに十分なお金を蓄えたら、仕事をリタイアする人は多数いるでしょう。
でも企業の職業面接は、国の意識調査ではありませんし、面接者が本能的に思った短い言葉を求めているわけではありません。
面接官から「あなたの「職業意識」や「仕事観」を教えてください」と尋ねられて、「お金のために働きます」とか「働かないと生活出来ません」と真顔で答えても、まず面接は通過できないでしょう。
なぜ明確な「職業意識」を重要視するのか?
なぜ採用側の企業は、明確な「職業意識」を重要視するのでしょうか?
これは企業における「理念」と似ています。高尚な理念や明確な理念を持った会社は、事業がうまくいかない時も、トラブルに陥った時も、「理念」に向かってぶれずに行動します。途中で変な誘惑にあっても道をはずす可能性が少ないのです。
これと同じように明確な「職業意識」を持った人は、入社後に降りかかってくる様々な困難や不条理に対して、容易にめげることなく、解決しようと頑張るはずです。そして会社の「理念」を前向きに理解し、会社の重要なスタッフとして活躍してくれるでしょう。また上司や部下、取引先からの甘い誘いや不正を持ちかけられても、心が揺らぐことがありません。人間は「自分の考え」のもとに「行動」を起こす動物だからです。
一方、「お金のため」だけに働いている人は、儲かりさえすれば良いし、いつも給料や昇給のことだけを考えてしまいます。「生活のため」だけに働いている人は、いつも仕事やチームよりも生活を優先させてしまうでしょう。「自分の可能性を知るため」だけに働いている人は・・・そもそも会社はあなたの可能性を教えてあげる場所ではありません。
このように、企業は求職者の「職業意識」をしつこく尋ねることで、会社にとって頼もしい人間、将来の屋台骨を支えてくれそうな人間、現在の困難を一緒に打破してくれそうな人間を選別し採用したいのです。
もしあなたが明確な意識を持っていないなら
もしあなたが明確な職業意識を持っていないなら、または仕事は生活のためとしか考えていないなら、早急に働こうとしている職業の存在意義、やりがい、考えられる困難、将来の展望などを勉強して、「どうしてもこの会社で働きたい」「この職業を一生の仕事にしたい」と思えるものを見つけ出す必要があります。
近年、厚労省やハローワークでも、長期失業者や退職を繰り返す人に対して、ヒアリングをおこない、問題点の解決ポイントを見出すことに努めています。それらの人に共通する課題として浮かび上がってくるのが、仕事のやりがいを持てない、働く楽しさがわからない、仕事がつらい、といった点なのです。
これらは確かにその時代の雇用情勢、その会社の雇用事情や社内の人間事情、さらには運・不運もあります。国の政策で解決すべき問題も多数あるのも事実です。決して本人の問題だけではないのですが、あまり自分にはどうしようもない事を深く考えていても仕方がありません。まずは自分自身ではっきりとした職業意識を持つことが重要ではないでしょうか。(※「勤労意欲」 「チャレンジ精神」はこちらにまとめました)
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