「高齢者介護施設」で働こう!業界の概要と特徴、転職のアドバイス [業界研究]

「高齢者介護施設」で働こう!業界の概要と特徴、転職のアドバイス [業界研究]

「高齢者介護施設」で働こう!業界の概要と特徴、転職のアドバイス [業界研究]

内閣府が公表した「平成27年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者は過去最高の3,300万人を超え、2060年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上の時代が来るという。高齢化時代を迎え、ますます重要になる「老人福祉・介護事業」の現在の状況、そして転職者へのアドバイスを業界に詳しいNさんにまとめてもらった。

高齢化時代を迎え、ますます重要になる「老人福祉・介護事業」

 「団塊の世代」にあたる方々が60代後半を迎えた現代の日本は、高齢化社会から超高齢化社会へ着々と移行しています。そのような時代にあって、高齢者を対象としたサービス業態は既に不可欠な存在にまで発展しました。その中でも特別養護老人ホームやグループホームなどの居住型や、デイサービスと呼ばれる通所型といった、いわゆる「高齢者介護施設」の特徴について説明したいと思います。

 入居型介護施設には、主に自治体が運営する特別養護老人ホーム(特養)と、民間企業が運営する有料老人ホームがあります。特養は公的な施設に属するため、民間の老人ホームと比べ1/2から1/3という低料金で利用ができるサービスです。ただし入居条件として、65歳以上で要介護3以上の認定を受けた、自宅介護が困難な高齢者であることが証明されなければなりません。基本的に入居待ちとなり、予約を行っても入居までに数ケ月から数年間という時間を要します。そのため、やむなく高い費用を払っても民間の有料老人ホームに入居するか、通所型介護施設(デイサービス)や訪問介護に切り換える方も増えています。
 
 高齢者介護施設は様々な形態で存在しているものの、特養は需要に見合った数が存在していません。更に、高齢者が今後ますます増加していく中で、肝心な介護職員が不足に陥っています。人手不足は少子化という現状も伴って、超高齢化社会の致命的な問題です。
  

介護の問題は民間事業者の手にかかっている

 高齢者介護には多くの資金を要しますが、10年後にあたる2025年には現在の2倍以上の介護費用が必要になるという統計が出ています。さらに、先述したように深刻な介護職員の不足も指摘されています。介護報酬の引き下げは職員不足の解決策とはならず、高齢者の増加(=要介護者の増加)という問題に対し、各民間企業でも更なる経営努力が欠かせなくなっています。

 一方、施設の利用もままならない状態となっている被介護者は、家族などが自宅で介護を行っています。しかし、子供はすでに自立して家を離れていることから、高齢者が高齢者の介護を行う「老老介護」が自宅介護全体の半数以上となっています。また子供が仕事に就きながら介護も行うという状況は、時間的、体力的、そして精神的にも非常に厳しいものとなっており、理解のない企業からは解雇を通告されるなど「介護離職」が増え続けています。 

 特養に入所を申し込んでも空きがなく、待機状態となっている被介護者は全国で約50万人といわれています。しかし財源の問題から行政が特養を急速に増設していくことは考えられず、超高齢化社会が必要とする介護の問題は民間事業者の手にかかっているといえます。それは新しいサービス形態の確立とともに、職員の確保と育成も含まれています。 

転職希望者へ – 大きな責任とやりがいのある仕事

 高齢者介護の分野は、日本で生活する誰もが決して他人事では片づけられないものです。それは、いつか自分自身が被介護者となる日が訪れるかもしれないと想像していただければ理解できると思います。その可能性は決して少なくはありません。また自分の親や配偶者など、身近な方を介護する立場になる時が訪れる可能性もあります。
 つまり介護職とは実務であると同時に、実生活にも密接した貴重な仕事です。日本が抱える重大な社会問題に取り組むという意味では、大きな責任とやりがいのある仕事ともいえます。

 求人募集には介護資格を必要とする案件もありますが、資格や実務経験を不問とする求人も多く見られます。未経験者を雇用、育成することで得られる助成金制度があることも、その理由となっています。
 高齢者とはいえ人間の生活を介助する仕事ですので、体力を要します。また、自分の思い通りにいかない事が当たり前にありますので、精神的にも厳しさを伴った仕事です。人の役に立つことに幸福感を見出せる感性と、社会問題の解決に少なからず貢献できているという自覚が、この仕事を続ける上で必要となってきます。被介護者も人間ですから、仕事が慣れないうちは懐疑的に見られることもあるかもしれませんが、そういう視線や言動に気を取られず、目標を持って取り組むことが大切になります。

介護福祉士やケアマネジャーの資格を取ってステップアップ

 実務経験を重ねることで、様々な介護資格を取得できるようになります。介護ヘルパーの資格だけでなく、国家資格である「介護福祉士」や、都道府県ライセンスの「ケアマネジャー(介護支援専門員)」の資格を取得することで大きなステップアップを果たすことができるようになります。目標を見失わず、ホスピタリティーを発揮できる方には非常に適した仕事といえるでしょう。

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