結婚、出産など女性ならではの仕事の探し方を解説する「女性の転職ノウハウ」コーナー。今回は「制度を使って育児と両立!進化する育児休暇制度」です。
男女共同参画社会基本法が公布・施行されてから17年。
『夫は外で働き、妻は家を守るべきである』という考え方に対する世論調査において、『反対』が『賛成』を上回る調査結果が出るようになりましたが、第一子出産を機とする女性の退職率は、60%を超えているのが現状です。
出産を良い機会と捉え、新しいことにチャレンジする場合等はともかく、復職できそうにないと踏んで退職する原因のひとつに、制度の活用がなされていないという問題があります。
今回は、出産後も同じ職場で働き続けたいと願う、仕事と育児を両立したい女性をサポートしてくれる法制度についてご紹介します。
もちろん、男性も同様にサポートしている制度ですよ。
整備の進む『仕事を続けるため』の法制度
※厚生労働省:『平成29年1月1日施行対応 育児・介護休業法のあらまし』より一部抜粋しています
【育児休業制度】
子どもが1歳に達するまで(1歳の誕生日前日まで)、育児休業を取ることができる制度です。
保育所が見つからない、育児をする予定だった人が病気になったなどの事情が発生した場合は、1歳6か月まで延長することができます。
申請できる条件は、
1.申出時点で、過去1年以上継続し雇用されている
2.子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでない
なのですが、②については、育児・介護休業法の改正(H29.1.1より施行)により、『子が2歳になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかである者を除く』から緩和されました。
【パパママ育休プラス】
育児休業には、両親ともに育児休業を取得すると、育児休業期間を1歳2か月まで延長できる優遇措置があります。これを『パパママ育休プラス』と言うのですが、平成22年に施行された新しい制度のため、育児休業制度に比べると認知度は低く、いざ妊娠、出産を迎えることで、初めて耳にする方も少なくないようです。
【短時間勤務制度】
事業主は、3歳未満の子を養育している労働者に対し、所定労働時間を短縮することにより、就業しつつ子を養育することを容易にするための措置を講じなければいけません。
(措置を講じる=就業規則に規定する等、制度を整えるという意)
短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を、原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません。
これは平均が6時間ということではなく、全ての労働日の所定労働時間が6時間ということです。勤務時間でいうと、10時(9時)出勤で休憩時間が1時間なら5時(4時)退社になります。
【子の看護休暇制度】
小学校の就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで、病気、けがをした子の看護又は子に予防接種、健康診断を受けさせるための休暇の取得が可能です。
この制度も改正(H29.1.1より施行)により、1日単位での取得であったものが、半日単位となったことで、より有効に使用することができるようになりました。
小学校入学までに接種すべき予防接種の種類や回数を考えると、「なぜ今まで改正されなかったの?」という意見も聞こえてきそうですね。
※予防接種の種類・回数については、日本小児科学会
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=138 参照
【育児休業等に関するハラスメントの防止措置】
前述した制度以外にも、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限など、仕事と育児を両立するための法制度は多くあります。
事業主は、これらの申請によって労働者の就業環境が害されないように、つまり、育児休業等に関するハラスメント防止のために、雇用管理上、必要な措置を講じる必要があります。
措置にはハラスメント防止のための周知・啓発、ハラスメントの相談を受け、適切に対応することなどの具体的な指針があり、「事業主として、育児中の労働者を守りなさい。」というメッセージが感じられる内容です。
制度を形骸化させないために
主な法制度をご紹介しましたが、制度があるにも関わらず、実際には活用されずに退職の道を選ぶ方が多いということは、制度だけは意味がないということ。
上述の【育児休業等に関するハラスメントの防止措置】にもつながりますが、制度の整備で終わるのではなく、『制度の周知・啓発』『制度使用のための環境や業務分担の見直し』『労働者の相談を受けられる環境の整備』『ハラスメントが起こってしまった場合の再発防止策の検討』が重要であり、事業主や管理者の大きな課題です。
これについては国も相当力を入れているところで、制度活用を推進し、育児中でも十分に力を発揮できる社会にするための取り組みを実施しています。
わかりやすいものだと、『くるみんマーク』の推進や、『ダイバーシティ経営企業100選』などの選定・公開、『ポジティブ・アクション』という女性の活躍を推進する事業において、女性の活躍状況をデータベース化し、公開しています。(『探そう!女性が働きやすい企業』にてご紹介しています)
今後、これらの推進により、制度の活用が広がることでしょう。
自分が育児休暇制度を活用する日がくるまでに
ちなみに、今は周囲にいなくても、同僚や部下に育児中の社員が表れる可能性や、いずれは自分が育児をする可能性を考えれば、これらの制度に関わらない方はいないはずです。
制度を形骸化させず、育児をする方が十分な力を発揮できる社会作りのために、まずは制度を理解することから始め、今の自分にできることを考えてみませんか?
育児中の方の退社時間が近づいたら、「あ!〇〇さん、もうすぐ時間ですよ。」と、周囲が気づくよう声掛けするだけでも、貴方の周りから、意識を変えていくことができるかも知れません。
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