薬を必要とする高齢者数の増加、医師と薬剤師が専門分野で業務を分担する「医薬分業」によって、国家資格「薬剤師」の需要は今後も増えていくと予想されています。
前回の「薬剤師に転職-仕事内容や平均年収、向いている人を解説」では、薬剤師の仕事概要、おおまかな年収、有効求人倍率、薬剤師に向いている人向いていない人について解説をしました。
今回は、もう少し詳しく掘り下げ、昭和30年から現在までの薬剤師数がどれだけ増えているのか、勤務先はどんなところが多いのかなどを紹介いたします。前回の記事と合わせてご覧いただくことで、薬剤師に転職する際に必要な基礎知識を理解することができます。
薬剤師はどれだけ増えているのか(昭和30年~平成26年)
薬剤師数が毎年どの程度推移しているのかをまとめた表です。薬剤指数の調査を開始した昭和30年!(1955年)から現在までの約60年間をみると、昭和30年には約52,000人だったものが、現在では約28万8,000人と6倍弱にまで増えています。昭和30年の日本の人口は約8,900万人、現在が約1億2,000万人なので、日本全体に占める薬剤師の割合は大きくなっています。
この理由は、薬剤師の存在が重要になってきたことはもちろんなのですが、高齢者が増え、薬に対するニーズそのものが増えていること、医薬分業により調剤薬局などが増えていることなどが挙げられます。
では増えている薬剤師はどこで働いているのでしょうか。次に就業場所について解説します。
薬剤師数の推移 | |
年 | 人数 |
昭和30年 (1955年) | 52,418 |
昭和35年 (1960年) | 60,257 |
昭和40年 (1965年) | 68,674 |
昭和45年 (1970年) | 79,393 |
昭和50年 (1975年) | 94,362 |
昭和51年 (1976年) | 97,474 |
昭和52年 (1977年) | 100,897 |
昭和53年 (1978年) | 104,693 |
昭和54年 (1979年) | 110,774 |
昭和55年 (1980年) | 116,056 |
昭和56年 (1981年) | 120,444 |
昭和57年 (1982年) | 124,390 |
昭和59年 (1984年) | 129,700 |
昭和61年 (1986年) | 135,990 |
昭和63年 (1988年) | 143,429 |
平成2年 (1990年) | 150,627 |
平成4年 (1992年) | 162,021 |
平成6年 (1994年) | 176,871 |
平成8年 (1996年) | 194,300 |
平成10年 (1998年) | 205,953 |
平成12年 (2000年) | 217,477 |
平成14年 (2002年) | 229,744 |
平成16年 (2004年) | 241,369 |
平成18年 (2006年) | 252,533 |
平成20年 (2008年) | 267,751 |
平成22年 (2010年) | 276,517 |
平成24年 (2012年) | 280,052 |
平成26年 (2014年) | 288,151 |
薬局・医療施設で働く薬剤師の数
下記グラフは、昭和30年から薬局・医療施設(病院・診療所)で働く薬剤師の数です。
医師と薬剤師がそれぞれの専門分野で業務を分担する「医薬分業」の推進により、昭和50年頃から「薬局」の数が増加、それにともない「薬局」で働く「薬剤師」の数も直近では161,198 人と大幅に増加しています。
「薬局」は、マツモトキヨシやサンドラッグ、ツルハホールディングスなどの大手ドラッグストアや、アインホールディングス、日本調剤株式会社、クラフト株式会社などの大手調剤薬局による出店が続いており、処方箋応需枚数も増加。また「薬局」急増の影に隠れていますが、「医療施設(病院・診療所)」で働く数も決して減っているわけではなく、少しずつ増えています。薬剤師のニーズが増え続けていることを示す結果になっています。
一方で、国主導の「医薬分業」推進の結果、大きな成長を遂げた調剤薬局各社ですが、その好調すぎる業績に一部では「儲けすぎではないか」との批判の声もあがっています。「医薬分業」の政策は、「薬局の薬剤師が患者の状態や服用薬を把握し、処方内容をチェックすることにより、複数診療科受診による重複投薬、相互作用の有無の確認や、副作用・期待される効果の継続的な確認ができる」(厚労省)ことを狙いとしたものですが、過去の医師や医療機関による処方箋の乱発や儲けすぎを抑止する意味も多分にありました。利益の行き先が病院から調剤薬局に変わっただけではないか、本来の「かかりつけ薬剤師」の機能を果たせていない、との意見があるのも事実です。人口の4人に一人が65歳以上の高齢者となった現在、厚労省には患者にとって本当にメリットが実感できる薬局の仕組み作りが求められています。
「薬剤師に転職-仕事内容や平均年収・給与、向いている人を解説」 と 「薬剤師の平均給与・ボーナス・年収を年齢別に公開」もご覧下さい。
薬局・医療施設で働く薬剤師の数 (単位:人) |
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年 | 薬局 | 医療施設 |
昭和30年 (1955年) | 20,461 | 8,000 |
昭和35年 (1960年) | 23,348 | 9,575 |
昭和40年 (1965年) | 24,147 | 11,345 |
昭和45年 (1970年) | 27,681 | 14,627 |
昭和50年 (1975年) | 30,446 | 19,392 |
昭和51年 (1976年) | 31,323 | 20,447 |
昭和52年 (1977年) | 32,401 | 21,584 |
昭和53年 (1978年) | 33,168 | 23,363 |
昭和54年 (1979年) | 34,954 | 25,274 |
昭和55年 (1980年) | 36,677 | 27,088 |
昭和56年 (1981年) | 38,382 | 28,892 |
昭和57年 (1982年) | 39,751 | 30,220 |
昭和59年 (1984年) | 42,173 | 32,503 |
昭和61年 (1986年) | 43,749 | 34,799 |
昭和63年 (1988年) | 45,963 | 38,339 |
平成2年 (1990年) | 48,811 | 41,214 |
平成4年 (1992年) | 52,226 | 43,416 |
平成6年 (1994年) | 60,866 | 45,553 |
平成8年 (1996年) | 69,870 | 48,984 |
平成10年 (1998年) | 81,220 | 49,039 |
平成12年 (2000年) | 94,760 | 48,150 |
平成14年 (2002年) | 106,892 | 47,536 |
平成16年 (2004年) | 116,303 | 48,094 |
平成18年 (2006年) | 125,254 | 48,964 |
平成20年 (2008年) | 135,716 | 50,336 |
平成22年 (2010年) | 145,603 | 52,013 |
平成24年 (2012年) | 153,012 | 52,704 |
平成26年 (2014年) | 161,198 | 54,879 |
「薬剤師」に転職を考えている人へ
薬剤師が働く薬局やドラッグストア、病院調剤薬局などの医療機関はどこも人手不足で悩んでおり、転職を考えている人にとっては有利な状況が続いています。 どこの企業も優秀な薬剤師に来てもらうために、賃金や福利厚生などの労働条件を手厚くしているところが多いようです。
転職にあたっては、数社の面談で安易に決定せずに、自分が「勤務地」「給与」「労働時間」「休日」「やりがい」などの何を重要に考えているのか、しっかり考えて、妥協のない転職活動をおこなうべきです。
地元(通勤30分圏内)での転職を希望するなら、現住所のハローワークや、地元の求人誌などが良いでしょう。また「給与」「労働時間」「休日」「やりがい」などを重視している場合は、比較がしやすい医療系転職サイト、さらにあなたが20代~30代前半なら医療系の転職エージェントを活用するのも手です。
いずれにしても好条件求人を見逃さないように日頃からチェックをして、いざという時にすぐ動ける心構えを持っておくことが重要です。