「商社ウーマン転職奮闘物語」は、食品専門商社の営業職に転職した20代の女性が取引先や上司、同僚に揉まれながら、一人前の商社ウーマンへと成長していく物語(全17話)です。
前回の第5話では、あまりにも高いノルマに驚愕!さらに大きな取引が消滅してしまうバッドニュースもありました。
第6話の今回はすっかり自信を無くして「お客さんの言うことなら何でも聞きます!ヘコヘコ営業ウーマン」です。それではどうぞ!
お客さんと話している時は常にヘコヘコモード!
〈第6話〉を始めます。
予算達成率110%以上を目指し、いざお客さんのところへ!!
・・・なんて勢い付けたものの、予算に見合う程の能力が備わっていない中で、一体どうやって目標を達成して行けば良いのか・・・。下手に学んだ知識を前面に出して営業を行うより、分からない部分は正直に勉強不足であることをお客さんに伝えて、教えて貰いながら成長していった方が良いのかもしれない!お客さんに嫌われては110%どころか100%すら達成出来ないだろうし。そうして色々と悩んだ結果、まずは
「お客さんに好かれるためにも、お客さんの要望は全て叶えられるような営業ウーマンになろう!」
「分からないと思ったことは正直に聞いて教えて貰おう!」
これを目標にお客さんのところへ出向いて行こうと決めたのでした。
しかし、実力が伴わない営業ウーマンのため、お客さんと話している時は常にヘコヘコモード!無理難題を言われても、とにかく笑顔で対応するよう心掛けました。
「お客さんのためなら例え自分が不利になるような仕事でも嫌がらずやろう!」
これが1番最初に私が行なった営業方法でした。
この心掛けがあってか日に日に依頼は貰えるようになって行きました。しかし、中には明らかに厳しいと思われるような依頼も増えて行き、無理難題を言われることも多くなって行きました。例えば・・・
【① 1日夕刻頃にお客さんから電話が入る。】
お客さん「◯◯のサンプルを北海道にある工場に、2日午前納期で納めて欲しいんだよね!」
私「◯◯は鹿児島県から出荷されるので、明日午前納期は厳しいです・・・。運賃を掛けて宅急便を使えば、何とか3日の午前中に納品が出来そうなのですが!」
お客さん「え~。それじゃあ間に合わないよ!まぁ納期は何とかするけどさ。その分運賃は御社の方で持ってよね!」
→悩んだ末私の会社で持つことに。
【② お客さんに1度納めた原料が余ってしまった。】
お客さん「御社から納めて貰った◯◯を使った商品なんだけどさ~、何か思っていたよりも売れ行きが良くなくてねー。10ケース位◯◯が余っちゃったから引き取ってくんない?中には袋開けちゃったものもあるんだけど、中身は大丈夫だと思うから!勿論使わないんだからお金は請求しないでね!」
→お金は原料メーカーにお願いして何とかなったものの、結局物までは引き取って貰えず私の会社で処分することに。
などなど。
こんな感じの内容が他にも数えきれない位出てくるようになり、私は気付いたらお客さんの言う事をただひたすら聞く営業ウーマンになっていたのでした・・・。
「この小娘だったら強く言えば何とかなるだろう!」
そんな雰囲気がお客さんから漂っていて、こちらに非がない事でも何かと「御社でよろしく!」と言って来るようになったのです。特にカット野菜・蒟蒻・水産関係等を扱うお客さんだと、柔らかく言うと職人気質、もっと言うと頑固親父気質の人が多いため、「小娘ごときに何が出来る!」って思っているのかもしれません。「俺たちの言う事を大人しく聞いていれば良い!」というような口調で話して来られるので、原料の知識も社会人経験も殆ど無い私はお客さんの強い話し方に押されて、自分の会社に非が無い時でもお客さんに言われるがまま仕事をするようになっていったのです・・・。
この状況をどう解決して行けば良いのか分からず、私は思い切って上司に相談してみることに!すると、上司は・・・
「お前は若い上女性営業という立場だから、どうしても難しい部分があると思う。今の世の中大分減っては来たれども、まだまだ男性が女性を下に見る傾向が強く残っているから、コツコツとめげずに仕事をしていくしかないだろう。」
と、私に言いました。上司の言葉を聞いた私は、今は年齢も若いしそんなに気に留めなくていいか!と、勝手に自分で良い方に解釈して、置かれている現状について軽く考えてしまったのです。
若い女性営業のデメリットと言える部分なのかもしれないから、あまり気にせず仕事をして行こう!デメリットを考えるよりも、女性営業であるメリットを前面的に出して行こう!例えば女性ならではの気遣いで攻めていくとか?母性を持つ女性ならではの“お客さんのために何とかしたい!”、“お客さんを幸せにしたい!”、そういった気持ちを大切にしながら仕事をして行こう!自分の置かれた立ち位置をしっかりと把握して、自分にしか出来ないことをやるようにしよう!ただただそんな風に考えていたのでした。
当時の私の考えは良い部分もあったのかもしれませんが、現状を軽く受け止めてしまったことで、お客さんのワガママは日を追うごとにエスカレートして行ったのです。それでも私はお客さんに嫌われることを恐れて、へコヘコ営業ウーマンを続けて行ったのでした・・・。
このあとは第7話「叱られてばかりの日々。早く家に帰りたい・・」に続きます。