「現在の職場に満足していますか?」「どんなところに満足していますか?」
働き方の多様化が進む現在、厚生労働省では、3~4年ごとに、このような問いを全国の無作為に選んだ事業所と個人(正社員と正社員以外)に答えてもらい結果をまとめている。正式には「雇用の構造に関する実態調査(就業形態の多様化に関する総合実態調査)」という調査で、今回は5人以上の常用労働者を雇用する事業所約 17,000 カ所と、そこで働く労働者約 53,000 人を対象として平成26年10月1日に実施している。
その中の「現在の職場での満足度調査」について紹介してみたい。
この調査は、仕事の内容・やりがいや賃金、人事評価、労働時間、福利厚生など11の項目と職業生活全体について「満足」「やや満足」「どちらでもない」「やや不満」「不満」を答えてもらい、「満足」または「やや満足」とする割合から「不満」または「やや不満」とする割合を差し引いた「満足度D.I.」を正社員と正社員以外の労働者で比較した。
満足か不満かを聞いた11項目は以下の通り。
・仕事の内容・やりがい
・賃金
・労働時間・休日等の労働条件
・人事評価・処遇のあり方
・職場の環境(照明、空調、騒音等)
・正社員との人間関係、コミュニケーション
・正社員以外との人間関係、コミュニケーション
・職場での指揮命令系統の明確性
・雇用の安定性
・福利厚生
・教育訓練・能力開発のあり方
正社員の満足度が一番高かったのは「雇用の安定性」
調査の結果、正社員の「満足度D.I.」が一番高かったのは「雇用の安定性」で65.5%の人が「満足」または「やや満足」と答え、「不満」または「やや不満」とする人は5.9%しかいなかった。
終身雇用制が崩れつつあるとはいえ、やはり「雇用の安定」は正社員のメリットであり、1番になったということは、多くの人が働く上で「雇用の安定」をもっとも望んでいることがわかる。
正社員の満足度2番目は「仕事の内容・やりがい」で、「満足」または「やや満足」と答えた人は68.1%と、「雇用の安定性」より多かったくらいだ(「不満」の数が多いため、「満足度D.I.」では2番目になる)。
3番目は「正社員との人間関係、コミュニケーション」、4番目は「正社員以外の労働者との人間関係、コミュニケーション」、5番目は「職場の環境(照明、空調、騒音等)」だった。
一方、正社員の満足度が低いものは、1番が「賃金」、2番が「人事評価・処遇のあり方」で、「不満」または「やや不満」と答えた人はそれぞれ29.7%、21.7%にものぼった。
この「賃金」と「雇用の安定」いうのはバランスが難しい。例えば、外資系企業に代表される実力主義が徹底した企業の場合、業績に応じて給料も高くなるが、一方で雇用についてはドラスチックな判断をされることが多い。
誰しも「賃金」と「雇用の安定」の一挙両得が良いものだが、現実的にはそう簡単にはいかないので、個人個人の考え方によって優先順位をつけていくしかないだろう。
ではパートなど正社員以外の満足度が一番高いのは?
では正社員以外の満足度が一番高いのはなんだろう。正社員以外とはパートタイムや派遣社員、嘱託社員、出向社員などを指す。
意外にも思えるが「満足度D.I.」の1位は「仕事の内容・やりがい」で58.8%だった。近年は正社員と正社員以外の職種のボーダーレス化が進んでおり、パートタイマーでも重責を担うケースが多々あるようだ。これについてはまた次の機会とする。
2番目に高かったのは「正社員以外の労働者との人間関係、コミュニケーション」、3番目は「正社員との人間関係、コミュニケーション」、4番目は「労働時間・休日等の労働条件」だった。「労働時間・休日等の労働条件」などは、まさに今回の調査のメインである働き方の多様化であり、子育てや介護、通勤環境などおのおののライフスタイルに合わせて、働き方を変えていくことの現れだろう。
一方、正社員以外の満足度の低いものは、1位が「賃金」、以降、「教育訓練・能力開発のあり方」、「福利厚生」と続いている。
今回の調査をまとめると、
正社員の方が「満足度D.I.」が高いのは「雇用の安定性」、「福利厚生」、「教育訓練・能力開発のあり方」などであり、逆に正社員以外の労働者の方が「満足度D.I.」が高いのは「労働時間・休日等の労働条件」、「正社員以外の労働者との人間関係、コミュニケーション」などとなっている。
また正社員と正社員以外とも比較的満足度が高いのは、「仕事の内容・やりがい」、「正社員との人間関係、コミュニケーション」、「正社員以外の労働者との人間関係、コミュニケーション」などで、仕事の内容や人間関係では両方とも比較的、円滑にものごとが進んでいることが伺える。
また前回の2010年(平成22年)と比べると、「職業生活全体」については、多くの就業形態で「満足度D.I.」は上昇しており、課題点はあるものの、全体的には良い方向に向かっていることがわかる。
就業形態、項目、職業生活の満足度別労働者割合及び満足度D.I.
(単位:%、ポイント)平成26年
仕事の内容・やりがいや賃金など 11 の項目と職業生活全体について、「満足」又は「やや満足」とする労働者割合から「不満」又は「やや不満」とする労働者割合を差し引いた満足度D.I.を正社員と正社員以外の労働者で比較
満足orやや満足 | どちらでもない | 不満orやや不満 | 満足度D.I. | |
---|---|---|---|---|
仕事の内容・やりがい | 68.1 | 21.9 | 9.1 | 59 |
賃金 | 45.2 | 24.4 | 29.7 | 15.5 |
労働時間・休日等の労働条件 | 52.7 | 24.1 | 19.3 | 33.4 |
人事評価・処遇のあり方 | 39.3 | 37.7 | 21.7 | 17.6 |
職場の環境(照明、空調、騒音等) | 54.4 | 27 | 14.5 | 39.9 |
正社員との人間関係、コミュニケーション | 58.5 | 27.6 | 8.5 | 50 |
正社員以外との人間関係コミュニケーション | 53.2 | 35.2 | 5.2 | 48 |
職場での指揮命令系統の明確性 | 44 | 29.8 | 20.9 | 23.1 |
雇用の安定性 | 65.5 | 25.9 | 5.9 | 59.6 |
福利厚生 | 48.9 | 33.7 | 15.3 | 33.6 |
教育訓練・能力開発のあり方 | 38.1 | 41.2 | 19.1 | 19 |
職業生活全体 | 52 | 33.7 | 12.4 | 39.6 |
※出典:雇用の構造に関する実態調査(就業形態の多様化に関する総合実態調査)