正社員の場合で1日の中で8時間以上(通勤時間や準備時間を含めるともっと多い)、1ヶ月約720時間のうち240時間以上を占める仕事にどう取り組んでいくかはとても大事なことです。仕事が充実しているか否かによって、ビジネスへの影響はもちろん、人によってはプライベートにまで影響が出てしまいます。
今回は、内閣府が2016年夏に実施した「平成28年 国民生活に関する世論調査」の「どのような仕事が理想的だと思うか」の調査結果について紹介いたします。この調査は、18歳以上の人10,000人を対象に調査員が訪問し、個別面接聴取形式で実施。有効回収数6,281人(回収率 62.8%)です。
質問の内容「どのような仕事が理想的だと思うか?」
この手の調査は質問の仕方、聞き方によって、答えが変わってくることがあります。
今回の場合は「世の中には、いろいろな仕事がありますが、あなたにとってどのような仕事が理想的だと思いますか。この中からいくつでもあげてください。」という設問で、下記の中から複数を選んでも良い形になっています。
「世の中には、いろいろな仕事がありますが、あなたにとってどのような仕事が理想的だと思いますか。この中からいくつでもあげてください。」
・収入が安定している仕事
・失業の心配がない仕事
・自分の専門知識や能力がいかせる仕事
・世の中のためになる仕事
・高い収入が得られる仕事
・自分にとって楽しい仕事
・健康を損なう心配がない仕事
・その他
・わからない
もっとも多かった回答は「収入が安定している仕事」の60.9%
調査結果によると、「どのような仕事が理想的だと思うか」の質問に対して、もっとも多かったのは「収入が安定している仕事」の60.9%でした。
これは近年の非正規雇用者の増大も原因ではないでしょうか。現在の日本は正社員になりたいけどなれない「不本意 非正規雇用者」が300万人を超えています。雇用の安定は欧米諸国の例を見るまでも無く、社会が安定するための大きな要素です。非正規雇用者の増大によって、特に若手層を中心に給与が安定している正規雇用の仕事を希望する人が多いことがわかります。収入の不安定な人が増え続けると、晩婚化や未婚による少子化、住宅や車などの購入控えによる消費減退、そして不安に覆われている人が多い不健全な社会になってしまいます。
次いで多かったのは「自分にとって楽しい仕事」で57.6%と1位と僅差になっています。 これは「やりがいのある仕事」に置きかえることもできるのではないでしょうか。仕事を通して得られる充実した人間関係や自分の仕事が人の役に立つことを求めている結果といえるでしょう。
「どのような仕事が理想的だと思うか」調査結果
どのような仕事が理想的だと思うか | ||
回答 | 割合 | |
1位 | 収入が安定している仕事 | 60.9% |
2位 | 自分にとって楽しい仕事 | 57.6% |
3位 | 自分の専門知識や能力がいかせる仕事 | 39.4% |
4位 | 健康を損なう心配がない仕事 | 32% |
5位 | 世の中のためになる仕事 | 28.7% |
6位 | 失業の心配がない仕事 | 26.8% |
7位 | 高い収入が得られる仕事 | 17.1% |
8位 | わからない | 2.1% |
9位 | その他 | 0.1% |
3番目には「自分の専門知識や能力がいかせる仕事」が39.4%で選ばれました。人間には得手不得手があります。自分の苦手な仕事よりも得意分野の仕事に就きたい欲求は自然なことだと思います。「自分にとって楽しい仕事」に共通することでもありますが、人間は、世の中の役に立ったり、お客に喜ばれたりすることで、仕事上での自分の存在価値を実感でき、そのことが前向きな行動や思考につながります。
4番目には「健康を損なう心配がない仕事」で32%でした。 「日本の長時間労働はなぜ改善されないのか?その理由を考える」でも解説しましたが、働く人を心身ともに不健全な状態にしてしまう長時間労働の改善は喫緊の課題です。健康を損なってしまう当人はもちろん、会社としても長時間労働によって得られる利益よりも、社員が身体を壊してしまうことのケアや対応の方が不利益になってしまうはずです。
以降は、「世の中のためになる仕事」「失業の心配がない仕事」「高い収入が得られる仕事」「わからない」「その他」と続いていきます。
男女による理想の仕事の考え方の違い
それでは回答を男女別に出してみるとどうなのでしょうか。
下記のデータと平均値を比較すると、女性はどちらかといえば「収入が安定している仕事」「自分にとって楽しい仕事」「健康を損なう心配がない仕事」を求める傾向があることがわかります。
一方の男性は「自分の専門知識や能力がいかせる仕事」「世の中のためになる仕事」「失業の心配がない仕事」「高い収入が得られる仕事」を求める傾向があります。
とはいっても、男女とも「安定」と「やりがい」が重要なキーワードであることがわかります。
男女別の回答 比較 | ||
回答 | 男性 | 女性 |
収入が安定している仕事 | 59.4% | 62.4% |
自分にとって楽しい仕事 | 53.5% | 61.4% |
自分の専門知識や能力がいかせる仕事 | 40.8% | 38.1% |
健康を損なう心配がない仕事 | 28.7% | 35% |
世の中のためになる仕事 | 31.3% | 26.2% |
失業の心配がない仕事 | 28.3% | 25.5% |
高い収入が得られる仕事 | 21.2% | 13.4% |
わからない | 1.6% | 2.6% |
その他 | 0.1% | 0.1% |
20年前の理想の仕事を比べてみると
最後に、時系列で1997年と2016年の違いを棒グラフで比べてみましょう。
データを見ると基本的に20年を経ても私たちが考える理想の仕事の順位は変わっていないのですが、「自分にとって楽しい仕事」と「世の中のためになる仕事」が大きく伸びていることがわかります。この2つは、一つは自分のこと、もう一つは社会のことです。つまり自分の楽しさを追い掛けながらも、社会のためになる仕事をしたいという、相反する2点が共存していることに興味を覚えます。
転職グッド編集部では、定期的にこれらの世論調査や転職に関する意識・実態調査を取り上げて解説していきます。次回も楽しみにお待ち下さい。