日本の長時間労働はなぜ改善されないのか?その理由を考える

日本の長時間労働はなぜ改善されないのか?その理由を考える

「月の労働時間が過労死ラインの80時間突破」「休みが無くて体力的にも精神的にもう限界」
ハローワークにはこういった長時間労働に関する相談が毎月数多く寄せられています。

日本の長時間労働はなぜ改善されないのでしょうか。長時間労働は働く人を心身ともに不健全な状態にしてしまう以外にも、少子化や女性の社会進出を阻む原因として、これ以上放置できないところまで来ています。

日本の長時間労働の始まりは – 敗戦から高度成長期

日本の長時間労働はいつ頃からなのでしょうか。そのためにはまず日本が長時間労働である理由を考えてみたいと思います。
1945年の敗戦後、焼け野原になった日本は生きていくための食料を得るのに必死でした。それまでの政治システムは崩壊し、混乱した社会の中で、立ち直るためには、がむしゃらに働くことが必要だったのです。その後、1950年に隣国で朝鮮戦争が勃発、米軍からの物資大量発注によって特需が起こりました。徐々に日本経済は回復に向かい、1955年頃からのいわゆる高度経済成長期に突入します。

街は白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の三種の神器を求める人で賑わい、1964年には東京オリンピック開催によってさらに好景気に沸きます。そして1968年にはついにGNPで世界2位に登りつめたのです。1973年の第一次石油ショックで景気が冷え込むまでの約20年もの間、日本は実質経済成長率が年平均10%を超え、現在の中国と同じように驚異的な成長を続けました。世界中から日本の奇跡と言われる由縁です。

当時の男性は家庭を顧みず、会社のために寝る間を惜しんで馬車馬のように働きました。個人の考えよりも集団の意向優先です。数十年前までは家族全員が1日の食べ物にすら困っていたものが、給料はどんどん上がり、生活はどんどん豊かになっていくのですから、当然といえば当然のことです。家族に貧しい生活をさせたくない一心で働いていたのだと思います。最も必死に働いたのは当時25歳から40歳位の人。現在でいえば70歳から85歳くらいの人でしょうか。今の日本の豊かさがあるのはこの年代のおかげだと言われています。

なぜ長時間労働は改善されないのか?

日本人はもともと勤勉な国民性の上に、高度成長期以降、長く働くことが美徳であり、家庭より会社を優先する風土が形成されました。
ですが経済の成長が止まり、物質が豊かになり、成熟社会になってくると人間は仕事と家庭、余暇などのバランスを求めるようになります。日本でも若い人を中心に「仕事だけをしていても給料が大幅に上がる訳ではないし、仕事だけの人生はいやだ」と考える人が増えていきます。

ただ会社の社風というものは長い年月をかけて形成されたもので、一朝一夕に変わるものではありません。ましてや高度成長期の時代にバリバリだった長時間労働を厭わない70歳位の人は、会社の名誉会長や社長、相談役など偉い役職に就いており、誰も文句を言えない立場になっています。名誉会長に逆らえる人はそうそういません。
もちろんこれは象徴的なケースであり、実際には集団ではなく個人を大切にする経営者も多数いるはずです。でも日本が欧米諸国と違って、会社優先で長時間労働になりがちな理由は、このような時代背景があるからなのです。

今後は長時間労働は是正されていくはず

現在、日本は高度成長期の終焉から約40年が経ちました。高度成長期の長時間労働を支えた70歳から85歳の層もほとんどがリタイアし、長時間労働が美徳だった企業上層部の考え方も少しずつ変わってきつつあります。一部では経済成長よりも生活の豊かさを求める声も強くなってきました。

一方で、日本経済はバブル崩壊からうまく立ち直れないまま、現在も低成長率、ほぼ成長ゼロにあえいでいます。世界のグローバル化でコストの安いアジア製の商品との価格競争に巻き込まれ、栄華を誇った家電製品などは凋落の一途を辿っています。

先日、国は成長と分配の好循環メカニズムを用いた「ニッポン一億総活躍プラン」を提示。低成長率の原因ともいわれている、就職の際に既卒者が冷遇される「壁」、再チャレンジを阻む「壁」、子育てや介護との両立という「壁」、定年退職・年齢の「壁」、男女の役割分担の「壁」、やりたいと思うことがあっても、立ちはだかる様々な「壁」を取り除こうとしています。

長時間労働についても、仕事と子育ての両立を困難にしていること、少子化の原因となっていること、人口の半分いる女性のキャリア形成を阻んでいることを重要な課題として、取り組むと明言。週49時間以上働いている労働者の割合2割を、欧州諸国並みの1割に抑えることを目標に、法規制の執行強化も厭わないとしています。女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法等の見直しを進めるとのことです。

これまで国がここまで具体的に長時間労働など働き方の改革に取り組んだことはありませんでした。今後は長時間労働は是正されていくことが期待されています。

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