人手不足が続く「保育士」の有効求人倍率-各都道府県の2016年と2015年比較

女性が働きやすい社会を目指す政府は、「待機児童解消加速化プラン」において約40万人分の保育の受け皿を準備、そのための保育士の確保を進めており、民間保育所で働く保育士の給与平均5%アップや、職場復帰のための研修を開催し、保育士としての復帰をサポートしていますが、有効求人倍率をみる限り、東京都では5.39倍(2016年10月)を記録するなど、いまだ全国的な保育士不足は解消していません。
今回は、厚労省の「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」をもとに、全国各都道府県の保育士の有効求人倍率の推移を算出、前年より増加したか、減少したかを表にしました。

求人倍率が高いということは、裏を返せば、保育士にとっては好条件で転職できる環境が揃っていることを意味します。現在、賃金面、休日面などの雇用条件に満足をしていない保育士は検討の余地があるといっていいでしょう。

保育士の有効求人倍率-各都道府県の2015年と2014年比較

保育士の有効求人倍率-各都道府県の2016年と2015年比較

上記の折れ線グラフ(拡大します)は、2014年10月(青線)と2015年10月(赤線)を比較したものです。
赤線でもっとも高倍率なのは東京の5.39倍!これは5つの保育園が求人募集を出しても、採用できるのはそのうちの1つの園だけで、残りの4つの園はどこも採用できないことを意味します。反対にいえば、一人の求職者に対して4件、5件のオファーがあるので、求職者は条件の良い保育園を選ぶ余地があります。

グラフをみると、特に人口の多い首都圏が顕著で、東京都を筆頭に神奈川県、埼玉県、千葉県などはどこも倍率が高く、人手不足で求職者に有利な状況が続いています。これらの地域は「子どもが多い」「共働き希望者が多い」だから「保育所(保育園など)も多い」、でもそこで働く「保育士の人数が少ない」となっています。

また全国のほとんどの都道府県で有効求人倍率が増加(赤▲)しているのも行政や保育園にとっては厳しいところで、減少したのは石川県、愛知県、三重県、島根県など数えるほどしかありません。
では、なぜ保育士の人材難(人手不足)が続くのでしょうか。下記で解説いたします。

保育士 有効求人倍率 2年比較
  2014年10月 2015年10月 増減
全国 1.50 1.93 ▲
北海道 1.08 1.30 ▲
青森 1.15 1.77 ▲
岩手 1.23 1.38 ▲
宮城 1.39 1.87 ▲
秋田 0.87 1.96 ▲
山形 1.27 1.69 ▲
福島 1.30 1.61 ▲
茨城 1.66 2.36 ▲
栃木 1.60 2.32 ▲
群馬 0.69 0.92 ▲
埼玉 1.82 2.63 ▲
千葉 1.31 2.11 ▲
東京 4.11 5.39 ▲
神奈川 1.66 2.66 ▲
新潟 1.43 1.50 ▲
富山 1.56 1.97 ▲
石川 2.19 1.53 ▼
福井 1.27 1.76 ▲
山梨 0.55 0.89 ▲
長野 0.88 1.10 ▲
岐阜 0.98 1.15 ▲
静岡 1.22 1.40 ▲
愛知 1.02 1.00 ▼
三重 1.10 1.00 ▼
滋賀 1.75 1.87 ▲
京都 1.01 1.34 ▲
大阪 1.58 1.74 ▲
兵庫 1.16 1.26 ▲
奈良 0.87 1.39 ▲
和歌山 1.19 2.33 ▲
鳥取 1.62 2.31 ▲
島根 1.39 1.26 ▼
岡山 1.09 1.30 ▲
広島 2.27 3.27 ▲
山口 0.68 0.88 ▲
徳島 1.63 2.09 ▲
香川 0.89 1.16 ▲
愛媛 0.84 1.27 ▲
高知 1.09 1.11 ▲
福岡 1.06 1.20 ▲
佐賀 0.67 1.06 ▲
長崎 0.88 1.34 ▲
熊本 0.93 1.39 ▲
大分 0.85 1.30 ▲
宮崎 1.22 1.67 ▲
鹿児島 0.96 0.99 ▲
沖縄 1.58 2.08 ▲

なぜ保育士の人材難(人手不足)が続くのでしょうか

なぜ保育士の人材難(人手不足)が続くのでしょうか。実は「保育士」の就業者数は年々増えています。厚労省「保育士等に関する関係資料」によると、保育所に勤める保育士は2004年には常勤、非常勤合わせて計326,000人だったものが、2008年には総数361,000人、2013年には409,000人にまで増えています。
人材難の原因は複合的なものですが、
一つ目は、共働き家庭の増加で、保育園に預けたい家庭が保育士の就業者数の増加以上に、多くなっていることがあります。そのために「待機児童」の数も増えていくのです。
二つ目は、保育士養成施設新卒の入職数に対して全体の離職率(10.3%、うち民間保育所は12.0%)で、年間に約3.3万人が辞めていくことがあります。この離職率は他の職業と比べても決して高くはありませんが、保育の需要増が続く時代だけに、影響が大きいといえます。
三つ目は、保育士の国家資格を所有している人のうち、半数は保育士としての就業を希望していないことです。これこそが保育業界が抱えるもっとも大きな問題ですが、「責任の重さ・事故への不安」「就業時間が希望と合わない」「賃金が希望と合わない」などの理由で、「潜在保育士(資格を持っているのに保育士として働いていない人)」の数が多いことが挙げられます。(出典:厚生労働省職業安定局「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査」)「保育士が現在の職場に改善してほしいと思うこと調査」もご覧下さい。

とは言うものの、社会の宝である子どもの育児に携わることのできる「保育士」は素晴らしい仕事です。雇用環境に多少の不満を持ちつつも、社会的意義の大きさ、やりがいの大きさに、生涯の仕事として取り組んでいる人も多数います。また近年は政府による「待機児童解消加速化プラン」推進に見られるように、保育士の労働環境を改善していく雰囲気も醸成されてきており、数十年前よりも条件は良くなってきているはずです。
もしこの記事をご覧の方の中で「数十年前に保育園に勤めていた」「出産を機に退職してしまった」という人がいらっしゃれば、ぜひ保育園への再就職を考えてみてはいかがでしょうか。

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