職場に正社員しかいない(パートや契約社員がいない)割合の業種別ランキング

正社員、終身雇用を特徴とした高度成長期から約50年を経て、日本の雇用環境は大きく変化をしました。パート、契約社員、派遣社員など多様な働き方が生まれ、現在では正規雇用以外の人はおおよそ2,000万人と、実に全就業者の約4割にも及んでいます。

このことは女性や高齢者の社会進出が進んで来たこと、インフラの発達で効率化が進んだことなど良い面の裏返しでもありますが、一方で正社員になりたいけれど、やむを得ず非正規雇用で働いている人、いわゆる「不本意 非正規雇用者」も約315万人いると言われています。本来は全員が自分の希望する働き方をできるのが望ましいのですが、簡単に解決出来る問題ではないのが頭の痛いところです。

今回取り上げるのは、厚労省が平成27年にまとめた「就業形態の多様化に関する総合実態調査」にある、業種別に正社員とその他の働き方の割合を出したものです。ユニークな結果が出ていますのでご紹介したいと思います。

正社員以外の労働者がいない会社の割合

下記の棒グラフは、職場に正社員以外の労働者がいない会社の割合をパーセントで表したものです。つまり割合が高いほど、職場にはパートや契約社員がいないということになります。
調査結果によると、職場に正社員しかいない割合が高いのは「建設業」の44.1%でした。その次に高いのが「鉱業、採石業、砂利採取業」の38.0%となっています。
この2業種の正社員率が高いのは、一人前になるまでに長い年月を要することや、仕事内容がハード、高度、危険であることから、パートや契約社員に任せられないためではないでしょうか。「働く人数」×「日数」が「成果」という典型的な労働集約型産業ともいえます。そのために「建設業」は「1ヶ月の労働時間が多い業種ランキング」で1位という不名誉な結果になっています。

正社員以外の労働者がいない会社

反対に、パートや契約社員が多い業種

反対に正社員以外の労働者がいない会社の割合が低い(パートや契約社員が多い)業種を見てみると、一番は「宿泊業、飲食サービス業」の3%でした。100社中97社が「職場にパートや契約社員がいる」と答えていることになります。この数字はグラフをご覧いただくとわかるのですが、全ての業種の中で突出した数字で、回答には出ていませんが、パートやアルバイトだけしかいない職場も相当数あると思われます。

これはなぜなのでしょうか。ファミリーレストランに代表されるように徹底的なマニュアル化が進んでおり、仕事経験の浅い人でも対応出来ることや、もともとが低利益な業界なのでコストの高い正社員を数多く配置できないなどの理由があるように思えます。食材の調達から加工、調理、接客までスケールを生かすことのできる効率化された業種ではありますが、それにしても3%とは低すぎるというか、あまりにもパートやアルバイトに依存しすぎた業種だと感じます。近年のファストフードやファミリーレストランの低迷は、パートやアルバイト依存前提の画一化され過ぎたサービスを嫌う人が増えてきたからと言われています。

産業分類 正社員以外の労働者がいない会社の割合
D.建設業 44.1%
E.製造業 23.3%
F.電気・ガス・熱供給・水道業 21.4%
G.情報通信業 29.9%
H.運輸業、郵便業 27.8%
I.卸売業、小売業 19.4%
J.金融業、保険業 18.7%
K.不動産業、物品賃貸業 29.8%
L.学術研究、専門・技術サービス業 30.8%
M.宿泊業、飲食サービス業 3.0%
N.生活関連サービス業、娯楽業 24.9%
O.教育、学習支援業 10.6%
P.医療、福祉 10.9%
Q.複合サービス事業 11.2%
R.サービス業(他に分類されないもの) 20.4%
S.公務(他に分類されない)
A.農業、林業
B.漁業
C.鉱業、採石業、砂利採取業 38.0%

最後に

本来、この調査結果は、「働き方の多様化」の度合いという観点から考えると、割合の低い(今回の飲食業など)方が現在の世の中のニーズに合っている先進的な業種で、割合の高い(今回の建設業など)方が旧態依然とした業種となるところなのですが、現在の日本を見渡すと、正社員以外の非正規雇用は働きやすさ云々というより「賃金の節約のため」導入されているところが多分にあります。経営者がコストの安いパートを大量に雇用して、生産コストを抑えたいからです。

これでは壮年男性、若年男性はもちろん、女性、高齢者の全員が働きやすい社会に変わることはできません。硬直化した雇用制度では世界の潮流から取り残されていくだけです。勤務エリア限定や短い労働時間が条件の限定社員、ITを生かした在宅による勤務など、多種多様で大胆な働き方を推進し、ひとり一人が得意な能力を社会に貢献していくことが、今後の日本が進むべき道ではないでしょうか。

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