「商社ウーマン転職奮闘物語」は、食品専門商社の営業職に転職した20代の女性が取引先や上司、同僚に揉まれながら、一人前の商社ウーマンへと成長していく物語(全17話)です。
前回の第10話は、自分から相手の懐に飛び込む努力を始め、女性上司との関係が良くなっていったお話でした。
第11話の今回は「初めての喧嘩!私VSお客さん!」です。それではどうぞ!
早朝の5時にお客さんから電話
自分に辛く当たっていた上司との関係が、少しずつ改善されて来たこともあり、以前より仕事がしやすい環境になりました。自分に自信が持てなくて、毎日暗い顔をしながら過ごしていたのに、気付いたら明るい表情が戻っていたのです!仕事をする上で人間関係は大事だって言いますが、本当にその通りだと思いました・・・。
社内での悩みが解決の方向に向かって一安心!なんて思っていた矢先。今度は社外でのトラブルが発生・・・。せっかく明るい兆しが見えてきたというのに、私はまた奈落の底へと突き落とされることになったのです!
ある朝。私が担当している水産業界のお客さんから、私の会社携帯に電話が掛かって来ました。出ようとしたところで切れてしまったため、掛け直そうと着信履歴を見てみると、早朝の5時、5時半、6時にも電話が来ていました。
これはきっと只事では無い・・・。私はピンと来ました。すぐさま電話を掛け直してみると、何で電話に出てくれないんだよ!何度も連絡してんのに!と、大きな声で言われました。お客さんの口調的にカッカ来ているというよりも、どちらかと言うと焦って困っているような雰囲気でした。
朝っぱらからそんなに怒られても・・・。貴方達は早く起きているかもしれないけれど、普通の人は寝ているから!そう心の中で思いながら、私は電話に出られなかったことを謝罪しました。
その後どうしたのか尋ねてみると、4日前に新規で発注をかけた某メーカーの麦味噌をキャンセルしたいとのことでした。今日は納品の前日。仕入業者に早く連絡しないとまずい・・・!私は急いで麦味噌メーカーに状況を説明して、配送を止めて貰えないものか聞いてみました。勿論答えはNO!仕入業者は、
「サンプルも、価格も、規格も、全部OKということで発注を貰ったんじゃないんですか?!納品前日になって配送を止めろだなんて、そんな失礼な話しはないですよ!」
と大変ご立腹・・・。当たり前です。
私はお客さんにもう配送を止められないことを伝え、どうして急にキャンセルをして来たのかを聞きました。しかし、お客さんはバツが悪そうに黙り込んでいます。
どうやらきちんと規格内容を確認せず発注をかけてしまったそう。良く見たら表示したくない原料が入っていて、これじゃあ使えない!と思いパニックを起こしたのです。私は仕入業者に言われた内容を正直にお客さんへ伝え、きちんと商品を引き取って貰いたいとお願いをしました。
すると、お客さんは使えない物にお金は払えない!仕入業者が駄目って言うなら全部御社の方で処分してよ!こういう時のために御社がいるんでしょ?!と言って来たのです!
「このオジサン何言っているの?!」
唖然としました。一体うちの会社のことを何だと思っているの!?今までヘコヘコ営業して来たけど、もう我慢ならない!
「すみません。それは流石におかしいですよね?弊社にも出来ることと出来ないことがあります。」
私はついに言い返してしまったのです!
お客さんのためならどんなことでも力になりたい。そう思って今まで仕事をして来ました。でも、叶えられることと叶えられないことってあると思うのです。今回の件はお客さんのミスで起きたことで、それを私の会社で何とかしろというのはおかしいのではないだろうか?何でもかんでも商社に責任を押し付けるのは絶対におかしい!
そう思った私は、これから再度仕入業者に交渉は行うけれども、どうしても無理となった場合はきちんとお客さんの方で責任を取って欲しいこと。何れにせよもう配送を止められないので、1度お客さんの方で引き取りをお願いしたいことを伝えました。
今までお客さんに嫌われないように、おかしいと思ったことがあっても、ずっと我慢して来ました。けど、今回ばかりは嫌われても言わないといけない。違うんじゃないかな?と思ったことは、きちんと伝えよう。いつまでもただヘコヘコしていたところで、お客さんと腹の底から付き合える関係にはなれないし。例えぶつかったとしても、嫌だと思ったことはハッキリと伝えよう!上辺だけの付き合いにはなりたくない。私は初めてそう思ったのでした。
私の発言を聞いたお客さんは余計怒り出し、うちは客だぞ?!出来ないって言うならもうお宅と取引しないから!と言って来ました。
私はもっとお客さんと長い付き合いをしたいと思っていること、上辺だけの付き合いではなく深い関係を築いて行きたいと思っているからこそ、怒られると分かっていたけれども自分の気持ちを正直に話したことを伝えました。
しかし、お客さんは私の言う事など聞く耳を持ちません。小娘に意見を言われてさぞかし癇に障ったのでしょう。これ以上話していても平行線だ。そう思った私は、とりあえずお互い冷静になるために、一旦電話を切ることにしました。
お客さんのあまりの理不尽さに私は電話を切った後も、しばらくウキーーッ!と猿のようにカッカと怒っていたのでした。