「商社ウーマン転職奮闘物語」は、食品専門商社の営業職に転職した20代の女性が取引先や上司、同僚に揉まれながら、一人前の商社ウーマンへと成長していく物語(全17話)です。
前回の第3話では、上司とお客さんが話している内容が全く分からず、社内からも厳しい言葉を浴び、途方に暮れる様子が描かれました。
第4話の今回はさらに大きな壁にぶつかります。「お客さんから仕事を依頼されない!どうして?」です。それではどうぞ!
営業としての仕事が本格的にスタート
そうこうしているうちに、だいたいのお客さんの引き継ぎが終了しました。
上司から
「あとはお前自身が努力してお客さんと関係を築いていって、お客さんに必要とされるような営業担当になっていくんだぞ!分からないことがあれば都度確認するように。報連相だけはしっかりしてくれよ!」
と言われ、営業としての仕事が本格的にスタートしたのでした。入社後3ヶ月も経たないうちに、実質1人立ちする形となったのです。まだまだ分からないことだらけでしたが(というより分かることは数えられる位しか無かったです)、お客さんの担当窓口が私になった以上、泣き言を言わず頑張っていかなければ!そう思い、とにかくお客さんのところに顔を出し、まずは自分という担当者を覚えて貰う努力をしていきました。
顔を出すこと数ヶ月。初めはテーマも教えて貰えず、依頼すら全然貰えませんでした・・・。商談内容はお互いのプライベートのことや、自分から提案した商品についての質問等が殆どで、こちらが求めている回答を貰うこと等出来なかったのです。
「上司と一緒に来た時はすんなりテーマや依頼を貰えていたのに・・・。あれは頑張ってきた上司が相手だったからか・・・。」
私はつくづくそう思いました。私の上司になった人は、自分が想像していた以上に凄い人なんだ・・・。そう感じたとともに、自分も上司のように頼られる存在になりたい!そう強く思ったのでした。
お客さんから仕事を依頼されない日が続く
なかなか依頼を貰えず落ち込んだ日々を過ごしていると、上司から「しばらく仕事をしてみてどうだ?」と聞かれました。私は正直にあまり営業が上手く行っていないことを伝え、どうしたら上司のようになれるのか尋ねました。すると、上司は一旦作業を止めて、私に会議室に来るよう言いました。悩んでいる私のために時間を作ってくれたのです。ひと息付いた後、上司は私に向かってこう問い掛けました。
「商社は何のためにあると思う?もしお前がお客さんで、何社もある商社の中から1社選択する立場にあったとする。その時どういう理由で商社を選択する?」
私は自分なりに考えた回答をいくつか伝えてはみたものの、あまり正しい回答とは言えなかったようで。そのまま上司にアドバイスを貰う形となりました。(情けない・・・)
「本来メーカー同士で取引した方が、安く売買出来るし価格的なメリットがあるはずだろう?商社が間に入ることによって中間マージンが発生するわけだし。敢えて商社と取引きするのは、既に買っていた物が急に無くなったとか。あるいは急ぎで欲しい物が出来たけど、直接売買している先では商品の扱いがないとか。新規で仕入れたい商品があるけれども、その会社の素性が分からないから、直接やり取りするより信頼出来る商社を挟みたいとか。色々な理由が考えられる。」
「こう考えた時に情報や知識をより多く持った営業に頼りたいと思わないか?急ぎで物を探しているのにスピードが遅かったり、分からないので確認しますが多かったら、それだけで時間のロスが発生する。そういった意味でも商社の営業は情報力や仕事のスピードも必要になって来るし、知識やコミュニケーション能力も兼ね備えていないといけない。」
「お客さんから見て、今のお前はまだどれも備わっていないから、なかなか依頼を貰えていないんだ!」
商社の営業として働くことの本当の意味を、私は上司に教わったことで初めてしっかりと理解することが出来たのです。この時上司に言われた言葉は、今でも一語一句覚えています。
商社の仕事はとても奥が深く、私が入社前に抱いていたような甘い仕事ではありませんでした。身に付けるべきことが沢山あって、ちょっとやそっと営業をかじった程度では勤まらない。地道に勉強して、地道に人間関係を築いていって、的確な処理をより早くこなせるようにならなければいけない。それが会社と会社、人と人のパイプ役となって仕事をするということなのだと学びました。華やかと言われている仕事程、案外地道な作業の積み重ねであるということを私は知ったのでした・・・。
人間的にも未熟で知識も乏しい状態であるとは言え、お客さんから見たら私も既に一担当者。日々勉強を重ねながら、私はお客さんのところに出向いていったのでした。
次回の第5話「○億という高い売上設定。表は喜。裏は苦」に続きます。