「商社ウーマン転職奮闘物語」は、食品専門商社の営業職に転職した20代の女性が取引先や上司、同僚に揉まれながら、一人前の商社ウーマンへと成長していく物語(全17話)です。
前回の第2話では中途採用者が1人だけだったことがわかり、孤独感の中でのスタートが描かれました。
第3話の今回は「分からないことが分からない。専門用語に囲まれる日々」です。それではどうぞ!
入社して3週間で挫折を経験
それでは第3話を始めます。
入社して1週間も経たないうちに、営業として覚えておかなければならない内勤業務の半分は指導を受けたと思います。そのスピードと言ったら途轍もなく早かったです。
「早く1人立ちして欲しいから、さっさと業務を覚えてね!」
毎日のように色々な上司からこの言葉を言われました。私自身も「早く自分と同じ年の社員に追い付きたい!いつまでも会社にとってお荷物になるような存在でいたくない!」と思い、必死で仕事を覚えて行きました。入社して直ぐ自分には即戦力と言える程の能力が備わっていないことを自覚したため、分からないと思ったことは自分からどんどん質問をするよう心掛けていきました。とにかく早く仕事を覚えて、早く即戦力として働けるようになること!今の私がすべき事はこれだと思い、日々の業務に励んでいきました。
しかし、入社して3週間位経った頃、早くも挫折第一弾がやって来ました・・・。今まで自分が覚えて来たことは、営業がやるべき内勤業務の仕事でしたので、言ってしまえば当たり前のことを覚えているような状態でした。一通り内勤業務における指導を受けた後、私が担当するお客さんの引き継ぎが本格的に始まったのです。
上司とお客さんが話している内容が全く分からない
担当顧客は全部で約40社、その内会社でメインユーザーの位置付けになっている顧客が4社あり、上司から1ヶ月以内に全ての引き継ぎを終わらせると言われました。お客さんが扱っている商品もバラバラで、製菓もあれば調味料や冷凍食品等もあり(他にもまだまだ沢山ありますが、多すぎるため割愛します)、覚えるべき事が山ほどありました。責任の大きい仕事を任されることになった私でしたが、この時はまだ料理の知識はあるし、少しは戦力になれる場面もあるかもしれない!そんな風に思っていました。
けど、実際にお客さんのところに行ってみると、上司とお客さんが話している内容が全く分からなかったのです・・・。その時に話していた内容は、
お客さん「先日お電話で確認していた○○社のイチゴパウダーのコンタミ防止の件はどうでしたか?」
上司「そちらは○○という機械を使って管理しているとのことでした。」
お客さん「分かりました。それとその商品ってドラムドライで作られているのでしたっけ?」
上司「いや、スプレードライで作っています。」
こんな感じでした。
私の心の中「コンタミ防止?ドラムドライ?スプレードライ?What’s?!何のことだかさっぱり分からないんですけど・・・。」
商談中に出てくる会話の内容が、私には一つも理解出来なかったのです。
きっと今まで上司がお客さんと関係を密に築き上げてきたのでしょう。引き継ぎに行く度にお客さんの方から様々な課題や依頼を貰えました。せっかくお客さんから頼りにして貰っているのに、自分はお客さんが何を話していて何を求めているのかが分からない・・・。
中には自分が毎日のように食べている商品を扱うお客さんもいたので、「私御社の◯◯はいつも食べています!」、なんて嬉しそうに話してみたものの、「あーそうですか。」、とサラッと流されて話しが終わってしまったこともありました。料理と加工食品は同じ食でも全く異なる世界の話しなのだと、実際にお客さんのところに行ってみて痛感したのです。
スーパーやコンビニに行って商品を勉強
私はとにかく商談中に出た分からない用語は、会社に帰ったら必ず調べる癖を付けるようにしました。また、お客さんの商品に使われている原材料を確認し、お客さんが何を求めているのか理解出来るようになる努力をしました。そんな私の姿を見た上司が、ある時私に言ったのです。
「座って勉強するのも大切だけど、実際にスーパーやコンビニに行ってみて、自分のお客さんの商品を見てみると良い。その時にお客さんから見た競合他社に当たる商品もチェックすると良いぞ。余裕が出てきたら、自分のお客さん以外の分野も見るようにして、世の中の流行やトレンドも確認するようにしてみなさい。そういった心掛けがふとした場面で活きることがあるから。」
この日の仕事帰り、私は早速スーパーに立ち寄り、まずはお客さんの商品を探しました。実際に商品を手に取り、ホームページでチェックした原材料を見返したりして、自分の目でお客さんが出している商品の確認を行いました。すると、ホームページで見た時は特に気にも留めていなかったことが、疑問として沢山浮かび上がって来ました。
例えば・・・
「原材料の中に書いてある“増粘多糖類”という表記。これって何?何のために使われているの?」
「“酸化防止剤”って書いてあるけど、これ何?何のために入っているの?」
などなど。
中には当たり前のように自分が食べていた商品もあったのに、いざ原材料をまじまじと見てみるとハテナだらけ!結局今までの自分は、ただ消費者としてお客さんの商品を利用していただけで、その商品の本質なんて全く分かっていなかったのです。
「御社の商品食べています!」、なんて私がお客さんに言った時、「あーそうですか。」で話しが終わってしまったのは、消費者としての目線で話しに来ていることを見抜かれたからだと思いました。自分に知識がないことを自ら暴露したようなものだったと、そう分かった瞬間とても恥ずかしくなりました・・・。実に愚かでした。
次回の第4話「お客さんから仕事依頼をもらえない!どうして?」に続きます。