厚労省が全国の転職経験者を対象におこなった「転職者実態調査(平成27年)」によると、「転職支援に関する行政への要望(2つまでの複数回答)」として、もっとも多かったのは「より多くの求人情報の提供」の32.1%、2番目に多かったのは「企業年金・退職金が不利にならないような制度の改善」の30.5%でした。
※画像作成:転職グッド編集部
行政からの求人情報は「ハローワーク」が中心ですが、企業側からすると無料で掲載できるというメリットはあるものの、掲載までのステップが民間サイトに比べて面倒であったり、時間がかかったり使いにくい面もあります。また行政運営であるが故の公平性の担保で、俗に言うブラック企業などが紛れ込んでいる可能性も多分にあります。出稿者側(採用企業側)にとって掲載しやすい媒体を意識すると、さらに求人情報の数は増えるかもしれません。「転職活動はハローワークだけでおこなうのは危険」に詳しく載せています。
また2番目の「企業年金・退職金」については転職者からすると切実な回答です。 数十年前と比べ、転職がごく一般的な、自然なことになってくると、企業年金や退職金の継続性がとても重要になってきます。現在でも離職者への支援はいろいろ実施されているものの、使い勝手が良い制度かどうかということになると疑問符がつきます。将来の安定した生活が見込めない社会は決して望ましいことではありません。個々人にIDが振られるマイナンバー導入を機に、企業年金や退職金の継続性についても、就労者目線でわかりやすいものにして欲しいところです。
「転職支援に関する行政への要望」で、3番目に多かったのは「職業紹介サービスの充実」の25.7%、4番目が「金銭面での職業能力開発・自己啓発の支援」の20.6%、5番目が「個人の職業能力を診断・認定する資格制度の充実」の12.6%でした。
「職業紹介サービスの充実」については上記でも述べたように、求職者側からみても、リクナビNEXTなどの民間サイトと比べて、使いにくい面を感じることがあります。
4番目、5番目の職業能力開発(教育・訓練)のサービス内容や資格制度も重要な問題です。産業のグローバル化によって建設業、製造業など従来の産業の雇用パワーが落ちてきている一方、サービス業などのいわゆる第三次産業の占める割合が多くなってきています。またインターネットやシステムの発達による事業の高度化、ロボットや人工知能(AI)による業務の効率化によって、職業そのものの定義もあいまい、かつ複雑化、高度化してきており、就労者の産業移動(例:製造業から社会福祉業への転職など)が喫緊の課題になっています。
産業構造が劇的に変わったからといって、「はい、どうぞ他業種に転職してください」では、多くの人は付いていくことができず、就労率の低下を招き、社会の不安定要因に繋がってしまいます。
行政(国)は国民から収めてもらった税金を、国民が円滑に業種移動できるように、職業能力開発(教育・訓練)の分野に投資する必要があります。
※出典:「転職者実態調査(平成27年)」 調査客体数 11,191人、有効回答数 6,090人
行政への要望 | 割合 |
より多くの求人情報の提供 | 32.1 |
職業紹介サービスの充実 | 25.7 |
職業能力開発(教育・訓練)のサービスの充実 | 14.8 |
金銭面での職業能力開発・自己啓発の支援 | 20.6 |
個人の職業能力を診断・認定する資格制度の充実 | 12.6 |
企業年金・退職金が不利にならないような制度の改善 | 30.5 |
その他 | 4.2 |
特に希望することはない | 18.6 |