「電子部品・デバイス・電子回路製造業」の特徴
数ある製造業のひとつに、電気機械ツールや情報通信機械ツールなどに組み込まれる電子部品、デバイス、電子回路を製造する分野があります。
電子部品とは簡単に説明すると、電気機械類がそれぞれの正常な動作を行うために内蔵されている部品の総称です。半導体は電子部品の中でも「能動部品」と呼ばれるカテゴリーに属します。それに対し「受動部品」と呼ばれるものには抵抗器やコイル、コンデンサなどがあります。コネクタ、端子、スイッチなどの「接続部品」と小型モーターなどに代表される「交換部品」、その他の部品を加えると、電子部品は5つのカテゴリーに分類されます。
ただ、このうち半導体を含めた能動部品を「デバイス」として区分し、それ以外の4分類を「電子部品」とする記述もあります。
世界の電子部品市場は半導体を除いても約21.5兆円とう統計結果がありますが、そのうちの4割近くを日本製品が占めています。世界市場における日本製品が極めて重要な立場にあることを物語るデータです。
日本の電子部品メーカーが競争力を高めたのには様々な要因が挙げられます。高度な素材技術や顧客への確かな技術対応力といった要因は、追随する競合他社や新興の海外メーカー勢に対する高い障壁となっています。
生産拠点を物価の低い国外に移すなど、コスト面での競争力を高めたことも大きな要因ですが、メーカー各社には家族や同族を幹とする企業が多く、経営層にリーダシップがあることも有利に働いたとする声もあります。
日本の電子部品メーカーが世界で高いシェアを誇る要因から、この業界への転職のポイントを考察すると、まず技術習得や競争力の維持といった面において責任、やりがいを見出せる業界であるといえます。環境面としては海外赴任や同族企業への適応が求められる場合があるといえるでしょう。
ちなみに「電子部品・デバイス・電子回路製造業」の主な企業としては、ルネサスエレクトロニクスや東芝セミコンダクタ、セイコーインスツル、村田製作所、ローム、京セラ、太陽誘電などがあります。
「電子部品・デバイス・電子回路製造業」の現況
先に触れたように、日本のメーカーが製造する電子部品は世界シェアの約40%を占めています。これを分類ごとに見ていくと、「受動部品」のカテゴリーにおいて約50%、「構造部品」においては約75%と圧倒的な数値を誇っています。世界規模で見ても電子部品生産額は前年比を上回る勢いとなっており、成長業種であるといえます。
日本の電子部品メーカーが生産の拠点としているのは、中国をはじめとする国外が中心です。ここ最近では国内に新工場を立ち上げる動きも出てきましたが、それでもなお日本の電子部品メーカーによる国外生産の割合は約70%を推移しています。その背景にはEMS(生産受託サービス)の存在があります。
現代社会で大きな需要を持つスマートフォンやタブレット端末は、販売するメーカーの自社生産ではなく販売メーカーから委託されたEMSが生産しています。そこで、各電子部品メーカーも製造した部品類をEMSに納品するのですが、EMSは生産拠点の多くを国外に置いているため、輸送費や税金、人件費などを考慮すると部品メーカーも国外に拠点を構えた方がコストを低減できるのです。
一方、デバイス(電子デバイス)の領域における日本メーカーの生産シェアは苦戦の傾向にあるとの指摘も存在しますが、これは「電子部品に比べれば」という前置きが必要でしょう。半導体の世界市場は約35.5兆円、そのうち10%程度が日本メーカーのシェアとなっています。
電子デバイスには真空管などの電子管や半導体素子、集積回路といった種類がありますが、この領域で日本メーカーの課題となっているのは、特許や知財などのIP(Intellectual Property)に関する戦略の向上です。
「電子部品・デバイス・電子回路製造業」に転職を考えている人へ
電子部品やデバイス関連の製造業には、取り扱う製品ごとに様々な企業や環境があります。製品としても半導体や集積回路、コンデンサ、スイッチ関係、各種のLEDパーツ、液晶を用いたパネル関連、照明器具など多岐に渡ります。また、例えば「光電変換素子製造業」という分野がありますが、その中でも発光ダイオードやフォトカプラ、インタラプタなど領域が細かく分かれています。その他にも、音響部品や磁気ヘッド、小型モーターといった製造分野があります。
この業界への転職を希望する方は、まずご自身が進みたい分野や領域をしっかり把握することをお勧めします。希望する領域と異なる企業を選んでしまうと、学んだことや経験した事が活かせないばかりか、内容が希望に適っていないことで意欲を低下させてしまう可能性もあります。逆に、ご自身が本当に興味を持っている領域で仕事ができるようになれば、意欲を伴って技術や知識をどんどん吸収していくことができるでしょう。
それぞれの企業(メーカー)が募集する職種も様々です。主だったものとしては、製品の研究開発や設計業務といった専門職、工場での製造職、事務職や営業職、総務関連などがあります。製造業では、例え事務職や総務といった内勤業務でも、取り扱う製品に興味がないと長く務めることは難しくなります。また製造職は夜勤も含めた3交替制の工場も少なくありませんので、健康面などにある程度適性が必要です。
開発や設計といった技術職や製造職は時期を問わず求人があります。また、貿易事務、国内外の特許申請を経験した弁理士、語学力を伴う営業・技術経験者などは将来性もあり優遇されるでしょう。