「学校教育業界」の概要と特徴
学校教育は幅の広い業界です。日本で認められている学校の種別は、小学校、中学校、高校、大学、それに高専や幼稚園などのいわゆる一条校(学校教育法第1条に定義されている学校)と、専門学校をはじめとする専修学校やその他の各種学校とに大別され、それぞれについて公立と私立の区別があります。転職を考えている皆さんが意識されるのは、主に私立の学校や専門学校でしょう。
日本における学制は、明治時代、全ての国民に平等に初等教育を受けさせるという理念のもとで誕生しました。我が国が近代国家として発展するにつれて、最高学府かつ研究機関としての大学や、職業訓練を行う専門学校などの制度が整備され、全国の津々浦々に公立・私立を問わず様々な学校が開設されるに至りました。教育は公益的な側面を持つため、各学校には画一的なカリキュラムの遵守が求められる一面もありますが、他方で現代においては多種多様なニーズに対応したユニークな学校も数多く存在しています。
現在、日本の高校進学率は97%を超えており、ほぼ全ての中学生が卒業後は高校に進学しています。一方、高校卒業後の進路は様々に分かれます。平成23年度のデータでは、大学進学者が47.6%と半数近くを占めていますが、専門学校進学者も16.2%と決して少なくありません。就職難に備えるために実践的な技能を身に付けたいとか、興味のある専門分野について集中的に勉強したいと考える高校生が、専門学校への進学を選んでいるようです。
「学校教育業界」の現況 – 私立学校の場合
少子化のあおりを受け、私立学校の経営環境が厳しい状況にあるのは文部科学省も認めるところです。各学校法人はこの危機を打破するために様々な努力を行っています。新しい時代のニーズに応えた学部や学科の設置や、特色ある教育活動、あるいは様々なコストの削減などによって好調に転じている学校も少なくありません。近年では近畿大学がブランディングで目覚ましい成果を上げているように、各学校は生き残りをかけてマーケティング戦略にも積極的に取り組んでいます。
また、専門学校への進学は、平成16年度をピークに減少傾向にありましたが、平成22年度以降は再び上昇に転じています。特に医療・衛生分野の人材養成では、看護師が約63%、介護福祉士が約70%と、専門学校が大きなシェアを占めています。近年ではデザイン関係の仕事やサブカルチャーの地位が向上していることもあり、グラフィックデザイナー、イラストレーター、漫画家といった文化・教養分野の人材育成を担う専門学校も好調です。
少子化によって教育業界は先細りになるという指摘は根強いですが、少子化には、一人一人の子供にかける教育費が高額になるという一面もあります。また、生涯学習やキャリアアップが推奨される昨今、社会人や高齢者が大学や専門学校に入り直すケースは年々増えています。こうした状況を見ると、学校教育業界の未来は決して暗くないものと言えるでしょう。
「学校教育業界」への転職を考えている人へ
学校教育業界への転職は、(1)私立学校の教員、(2)専門学校の講師、(3)事務・管理系の職員 の三通りに大きく分かれます。
(1)の私学教員は教員免許が必要であり、また公募数がそれほど多くはないため、一部の方以外には縁がない道かもしれません。私立学校の教員の募集は欠員補充として行われることが多く、また大学の就職部や紹介を通じて採用を決めてしまうケースも多いため、一般の転職市場にはほとんど情報が流れてこないのが実情です。頑張って狭き門を狙いたいという方は、各都道府県の私学協会が管理する私学教員志望者名簿に登録したり、教員人材派遣会社を利用するのが近道になります。
(2)の専門学校講師は、学校教員のような免許は必要としませんが、特定の分野における実務や研究の実績があることは大前提となります。例えば看護師などの資格職に従事していたり、司法書士や行政書士といった士業の資格を持っている方なら、関連する専門学校の講師職は十分狙えるでしょう。最近ではビジネス関係の専門学校もニーズが高まっていますので、一般企業での経験を活かして講師になれる道もあります。各専門学校のWEBサイトのほか、就職情報サイトに求人情報が掲載されていることもありますので、根気よく探したり問い合わせを行ってみましょう。
(3)の事務・管理系の職員は、就職情報サイトにもよく求人情報が出ています。特別な資格は必要ありませんが、事務や組織運営の経験があれば当然有利になります。教育機関では、生徒募集や進路相談など、一般企業にはない種類の仕事も多くありますので、それらに熱意を持って取り組める人は面接でも高く評価されると思われます。