「ITコンサルティング業界」の特徴
2001年に日本は5年以内に世界最先端のIT国家を目指すという目標を掲げ、ITサービスの恩恵を誰でも享受できるようにすることを目的に計画を進めました。
その年からブロードバンドの価格は下がり、85万件だった加入者は2004年8月には20倍の1,692万件に膨れ上がり、現在では固定系ブロードバンドサービスの契約数は約3,700万となっています。ITサービスの拡大、電子商取引、電子政府の促進、自治体業務の電子化、各種電子コンテンツの拡充などに牽引されて爆発的な伸びを見せたのです。つまり、ITが「ネットワーク化とアウトソーシング化の時代」から「インターネットの時代」へ転換した時期です。
インターネットを利用した企業サービスの増大に伴い、それを実現するためにITコンサルタント(IT系コンサルティングファーム)が活躍を始めます。どの業務をどうすれば企業が儲かるかを考え、業務を洗い出し、それをIT化プロセスとしてまとめます。それをSierが設計、そしてソフトウェア化する。大まかに表現するとそうなりますが、ITに携わる人間が問題点として認識したことがあります。それはほとんど「IT」には関係ありません。つまり、企業の経営層、従業員など関係者との「共通認識」を持つことの難しさです。例えば、経営者が新しいビジネス環境に対応しようと事業を考えることと、現場責任者が考える仕事とでは違うのは当然です。しかし、その「思い」を整理、共有することが必要で、それがITコンサルタントに求められる重要なスキルの一つになっていきます。
「ITコンサルティング業界」の現況
ITコンサル企業の成り立ちは数パターンあります。一つは、自社で持っていた情報処理部門を子会社化して独立させ、そのノウハウの外販をはじめるケース。現在、企業名に「親会社名+システム」とか「親会社名+ソリューション」とかが付く会社が多いのはそのためです。(例:伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、丸紅情報システムズ(MSYS)、新日鉄ソリューションズ(NS Solutions)、電通国際情報サービス(iSiD)など)親会社のシステムのコンサル、開発もしますが、同時に外販している企業がほとんどです。
別のケースでは、「ソフトハウス」と呼ばれるソフト開発を主体とする企業が、ユーザ企業の業務ノウハウを蓄積し、それをITプロセスのコンサルに生かすケースです。ソフトハウスはドンドン上流工程に食い込んでいきました。また、その「逆」のケースもあります。つまり、戦略コンサルの企業がITコンサル、SI、システム運用など、上流業務から下流業務に食い込むケースです。どちらも強み、弱みがありますが、前者はプログラムやパッケージ、ネットワーク、DB、システム基盤などのIT技術に強く、後者はビジネスニーズやビジネスプロセス洗い出し、その可視化、BPR、ITを企業変革につなげるなど、戦略に強い印象があります。
「ITコンサルティング業界」に転職を考えている人へ
ITコンサル業界に転職を考えている人向けのアドバイスで締めくくりたいと思います。
コンサル業務は他の業務と比較すると給与が高めです。これは大きなメリットですが、他のIT業種と同じく、仕事がハードで離職率が多い業種であることも事実です。しかし、ユーザ企業のキーマンや取締役などと会話することも多く、経営とITの密接な関わりを視野に入れた高度な仕事ができます。それはコンサルを辞めた後でも自分の力となって蓄えられます。ユーザ企業のCIOや、自治体の情報管理部門長と話をすると、「実はどこどこのITコンサル会社出身なんだ……」なんていう話、多いです。つまり、当初はその企業にコンサルで参画し、そのあとスカウトされて……というイメージですね。
そのような意味で、当面の転職先というだけではなく、自分の将来におけるポジショニングのプランにもラインを引きやすい業種であると言えるでしょう。