「学習塾」はどんな仕事なのでしょうか?文部科学省「平成20年度子どもの学習費調査結果」によると、子どもが公立小・中学校に通う家庭の学習塾や習い事などの「学校外活動費」は教育費全体の「学習費総額」の62%を超えており、少子化が進む現代において、「なるべく子どもには苦労をかけさせたくない」と思う親心が結果に表れています。今回は学習塾業界について、学習塾勤務経験のあるのTさんにまとめてもらいました。
大手資本の寡占化が進む学習塾業界
学習塾は合格実績と地元の評判によって、業績が大きく左右されるビジネスです。難関校への合格者が多い塾には、翌年多くの生徒が集まり、さらに合格者が増えていく好循環が生まれます。資本のある大手学習塾が駅前など交通の便の良い場所に出店し、大量の宣伝をおこなうことで生徒を集めていくため、いわゆる独立系、個人系の学習塾は苦労を強いられることが多いようです。
学習塾には大きく分けて個別指導と団体指導(集団授業)の2つの授業形態があります。両方を手掛けている会社もあれば、どちらかに絞って事業展開している会社もあります。
個別指導は、子供一人ひとりの学力レベルや志望校に合わせた、細かく手厚い授業ができるので、苦手箇所やつまずきを克服できるという特徴があります。1対1のほかにも、1対2や、1対3、1対4など、生徒の能力や要望に応じて、さまざまな授業形態が生まれています。
それに対して団体授業(集団授業)は、多くの場合、選ばれた優秀な講師が指導をおこなうため、レベルの高い授業が期待できるほか、生徒同士が競い合いながら学力が向上していくという特徴があります。また近年では人気講師の授業が自宅から受けられる衛星授業や、リクルートが提供する動画を使った教育サービス「受験サプリ」などインターネットによる授業も増えてきました。
ちなみに学習塾業界の売上高は、1位が「栄光ゼミナール」、2位は「東進ハイスクール」のナガセ、3位は「学研教室」の学研塾ホールディングス、4位は「トーマスTOMAS」のリソー教育企画、5位は「早稲田アカデミー」、6位は「市進学院」、7位「能開センター」、8位「さなる個別パートナー」、9位「明光義塾」、10位「臨海セミナー」となっています。(出典:学習塾白書2014)
どの会社も小学校から高校生、個別、集団問わず展開していますが、1位「栄光ゼミナール」、4位の「トーマスTOMAS」などはどちらかといえば個別指導、2位の「東進ハイスクール」は高校生と大学受験、3位の「学研教室」は低学年と、それぞれの塾によって強みが異なるのも特徴です。
保護者が子どもの学習塾にかけるお金は?
「なるべく子どもには受験の苦労をさせたくない」という保護者の意向もあり、子ども一人当たりにかける教育関係費の割合は増えており、将来の少子化の懸念はあるものの、しばらくの間は成長を続ける業種でしょう。
たとえば「学習塾にかけるお金」を、文部科学省が公表した「平成20年度子どもの学習費調査結果」をもとに調べてみると、幼稚園では公立約8,000円,私立約15,000円、小学校では公立約57,000円、私立約217,000円,中学校では公立約175,000円,私立約13万円、高等学校では公立約82,000円,私立約124,000円となっています。公立私立を問わず最も多いのは、私立小学校第6学年の約41万円となっています。
気になる少子化問題
先頃、代々木ゼミナールの校舎7割を閉鎖というショッキングなニュースもありました。第1次ベビーブーム期には出生数が約270万人だったものが、1975(昭和50)年には200万人を割り込み、2013(平成25)年には102万人にまで減りました。単純に考えてもマーケットが全盛期の37%にまで落ち込んでいる訳です。
少子化による人口減はあらゆる産業に影響を与えますが、とりわけ子どもを対象とする「教育、学習支援業業界」への影響は大きく、業者間同市の競争激化で、授業料を下げたり、コマ数を増やしたり、少人数制をうたったり、また最近では無料体験や講習会無料、理科実験やイベントなどをおこなう学習塾も登場しているようです。(参照:京葉学舎)
学習塾業界に転職するなら
現在の学習塾の店舗運営は、どこでも正社員が一人もしくは二人で運営し、それ以外はアルバイトの講師を雇う企業が多くを占めています。異業界から転職も多いのですが、中途採用では、正規雇用ではなくまず契約社員でとる企業が多いようです。正社員としての勤務を望むのであれば、過去のアルバイト経験や過去の実績が重要な採用条件となってくるでしょう。
「民間給与実態統計調査(2014年分)」の業種別平均年収調査によると、「教育、学習支援業」の平均年収は507万円と、全業種の中で4番目、年収も前年比で約2%アップしており給与面の待遇面は良い方です。
就業形態は、基本的に週休一日制が多く、出社時間は比較的遅めです(日中はみんな学校にいっているので当然といえば当然です)。休みが少ないという点を除けば、子どもの成長を見届けられることのできる、とてもやりがいのある仕事です。
正社員として働く場合は、単に生徒に教えるだけではなく、最新の高校や大学の入試事情のリサーチや生徒を集める力などのビジネス的なセンス(利益の向上など)も求められます。
とはいっても塾業界の醍醐味はやっぱり生徒の成長です。少子化傾向で競争が厳しくなっているとはいえ、生徒と二人三脚で一生懸命に受験に挑み、目標を達成した時の喜びは、何事にも代えがたいものでしょう。
これらの塾業界の現状をしっかり踏まえたうえで塾業界の転職にのぞむことが重要です。