看護師には資格認定制度として、認定看護師、認定看護管理者、専門看護師の3つの資格があります。いずれも質の高い医療の提供を目的に創設されたもので、医療の高度化にともない、取得者も増えています。
今回はなかでもよく耳にする「認定看護師」と「専門看護師」の2つの資格について解説いたします。
認定看護師とは?
認定看護師とは一言でいうと「臨床現場のエキスパート」です。高い専門性を持ち、患者やその家族、時には看護師への指導も行い、その役割を果たします。水準の高い看護を実践できると認められた看護師です。
認定看護師になるためには
- 日本の看護師免許を取得している
- 看護師としての5年以上の経験(そのうちの3年は、認定看護分野での経験)が必要
- 認定看護師教育課程(615時間以上)を修了している
- 認定審査(筆記)に合格している
が必要事項です。
全て満たせば、認定看護師認定証が交付されます。認定看護師認定証は5年毎の更新が必要で、現在約16,000人(2016年)の認定看護師が全国で活躍しています(日本看護協会HPより)。看護師全体の人数が約108万人ですから、約9人に1人の割合になっています。
認定看護分野には下記の21分野が認定看護分野として特定されています。
21の認定看護分野
感染管理 | 糖尿病看護 | 乳がん看護 |
皮膚・排泄ケア | 認知症看護 | 小児救急看護 |
緩和ケア | 摂食・嚥下障害看護 | 慢性心不全看護 |
がん化学療法看護 | 脳卒中リハビリテーション看護 | 慢性呼吸器疾患看護 |
集中ケア | 訪問看護 | 透析看護 |
救急看護 | 手術看護 | がん放射線療法看護 |
がん性疼痛看護 | 新生児集中ケア | 不妊症看護 |
認定看護師の役割とは?
認定看護師は、特定の看護分野で以下の3つの役割を果たします。
- 1.個人、家族、集団に対して、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する(実践)
- 2.看護実践を通し、看護職に対しての指導を行う(指導)
- 3.看護職員に対して、コンサルテーション(相談業務)を行う(相談)
具体的には、専門的に治療が必要な患者やその家族に対して、最適な看護とは何かを認定看護分野の専門知識に基づいて判断して、実践します。
他の看護職に対して、自らが手本となって、専門知識や看護技術の指導を行って水準の高い看護を行えるように働きかけたり、現場で直面する問題や疑問の相談に乗り解決策や改善策を見出だせるよう、認定看護分野の専門知識に基づいて支援します。病院の他に訪問看護ステーション、クリニック、介護施設などで活躍しています。
専門看護師とは?
次に「専門看護師」について解説いたします。
専門看護師とは一言でいうと「看護ケアのスペシャリスト」です。下記特定の専門看護分野において、卓越した看護を提供し、教育や研究を行うことで看護の可能性を広げていくものです。
専門看護師になるためには
- 日本の看護師免許を取得している
- 看護系大学院修士課程を修了し、看護系の大学院で修士課程を修了して必要な単位を取得していること
- 看護師としての5年以上の経験(そのうちの3年は、専門看護分野での経験)が必要
- 認定審査(書類、筆記)に合格している
が必要事項です。
全て満たせば、専門看護師認定証が交付されます。専門看護師認定証は、5年毎の更新が必要で、看護実践や研修実績、研究実績についての報告を行います。2016年時点で1678人の専門看護師が活躍しています(日本看護協会HPより)
11分野が専門看護分野として特定されています。
11の専門看護分野
がん看護 | 慢性疾患看護 | 感染症看護 |
精神看護 | 老人看護 | 在宅看護 |
急性・重症患者看護 | 母性看護 | 地域看護 |
小児看護 | 家族支援 |
専門看護師の役割とは?
専門看護師は、専門看護分野において以下の6つの役割を果たします。
- 1.個人、家族、集団に対して卓越した看護の実践を行う(実践)
- 2.看護者を含むケア提供者に対してコンサルテーションを行う(相談)
- 3.必要なケアが円滑に行われるように保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネートを行う(調整)
- 4.個人、家族、集団の権利を守るために、倫理上の問題や葛藤の解決を行う(倫理調整)
- 5.看護者に対し、ケアを向上させるために教育的役割を果たす。(教育)
- 6.専門知識や技術の向上、開発を図るために実践の場において研究活動を行う(研究)
具体的には、複雑かつ対応が困難な課題を抱える患者や家族の病気やその背後にある、不安や葛藤などの様々な要因を総合的に捉え、どのような看護が必要なのかを判断し、実践します。患者や家族により良い看護を行うにはどのような関わりが必要なのかなど、看護師や他の医療職の相談に乗り、専門知識を活かしたアドバイスを行います。
治療方針の決定など、倫理的な問題が生じやすい場面で患者や家族の思いを尊重して治療や療養を行えるよう、他の看護師や医師、関係者に働きかけます。専門知識や技術に基づき、看護師に教育を行い、施設や地域の看護の質の向上に努めます。日々の看護における課題の研究を行い、研究成果を実践に還元します。
認定看護師、専門看護師 2つの資格の違いは?
認定看護師と専門看護師の2つの資格の違いをみると、認定看護師は看護職への支援を中心におこなっている点、専門看護師は看護職も含め、ケアに携わる人々への支援を行うことから、より広い範囲での支援が中心という点です。
看護分野の比較をしてみると、認定看護師は21分野で専門看護師は11分野であり、認定看護師の看護分野はより細分化しており、認定看護師は特定の分野のエキスパートであり、より臨床に近いと言えます。
また決定的に違うことは、認定看護師は定められた教育課程の修了が条件となりますが、専門看護師は大学院課程を修了しなければなりません。そのため、それぞれの認定証を得るまでの時間が圧倒的に異なります。また、審査も専門看護師は書類での審査があることから、より難しいと言えます。
これから看護師の皆さんがキャリアアップを目指す場合、特定の分野のエキスパートになりたいなら認定看護師、看護師の育成や研究に携わりたいなら専門看護師でしょうか。
認定看護師は、その看護分野からより細分化された分野のエキスパートを目指すことができます。比較的短期間で専門性の高い、臨床により近い看護師になりたいのならば、認定看護師が向いているでしょう。
専門看護師は、高い専門性の他に、医療チーム全体の関係調整や職員のケアに携わります。また、看護師の育成や研究に携わります。看護教育や看護研究など、これからの看護の将来を考えていくのであれば、専門看護師がおすすめです。
最後に
今回は、認定看護師と専門看護師についてお話ししました。どちらも専門性が高く、取得までの時間や経験が必要ですが、看護師のキャリアアップには最適です。費用や時間がかかることもあり、なかなか取得したくても取得に至らない方もいるかもしれません。職場での助成制度などをうまく活用して、キャリアアップに繋げたいものです。看護師としてのステップアップにこの記事が少しでも役に立つことができれば幸いです。その他にも「看護師業界で働きたい人へ」ページに多数掲載しています。ご覧下さい。