平成22年に取り組みが始まった「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」をきっかけに、仕事以外の家事や育児、ボランティアにも目を向ける人が増えてきました。また新たな趣味を見つけようと、音楽や英会話など各種カルチャースクール、スポーツスクールも賑わいを見せています。ここでは「その他の教育、学習支援業」の中でも、「英会話など各種カルチャー・スポーツ教室」についてまとめてみました。
「その他の教育、学習支援業」の概要
「教育、学習支援業」産業の中のひとつ「その他の教育、学習支援業」は、学校以外の学習塾やピアノ、書道、英会話やスイミングスクールなどの習い事教室、専門学校ではない料理や洋裁の学校、自動車教習所など。つまり教養や技能、技術などを教えるのがこの業界で、官庁や企業が職員研修や教育のために使う施設、職業訓練施設、通信教育事業、地域住民の教育や活動を行う公民館、図書館、博物館や美術館、動物園も含まれています。
総務省統計局の「サービス産業動向調査」によると「その他の教育、学習支援」業界の売上高は前年同月比でマイナス1.5%とやや減少しています。しかし働く人の数では99万人とプラス成長を見せ、求人数が増えていることは朗報でしょう。年間売上高では「学習塾」が1.0 兆円と最も多く、「他の教養・技能教授業」が0.8 兆円、「他に分類されない教育、学習支援業」が0.6 兆円となっています。売上は1、2、3月と7、8月に伸びる傾向があり、この業界特有の集中授業や発表会などによる利益増と読み取れます。
賑わいを見せる各種カルチャー教室やスポーツスクール
少子化を背景に学習塾は規模縮小に向かうことが懸念されますが、カルチャー分野のスクールは、お教室好きと言われる中高年女性を中心に堅調に推移しているところが多くなっています。また国民的な健康志向や東京オリンピック開催決定の影響からスポーツ系スクールの入会者が増えたり、ビジネスシーンでの必要性や小学校での英語必修化といった世情から英会話教室の人気も高まっています。今後は金銭的・時間的にゆとりのあるシニア男性層をいかに取り込んでいくかが、各分野とも業績アップのカギとなるでしょう。
スポーツスクールでトップシェアを誇るコナミは、もともとアミューズメント機器製造から始まった企業。今はスポーツ施設の全国展開もしながらアスリート育成にも力を入れるなど認知度を上げています。同じく全国規模のセントラルスポーツやルネサンスなども業績は好調。英会話学校ではECCやNOVA、ベルリッツ、AEONなどが有名ですが、地域によっては個人経営での指導も多いのが特徴です。カルチャー分野のスクールでは朝日カルチャーセンターや産経学園などがシニア向け大手。ダンスやバレエなどは地元密着系の小規模スクールが多いのが特徴。学習系のスクールにおいては今後、インターネットを使ったeラーニングと呼ばれる学習形態が加速していくと予想されています。
業界の月間労働時間を見ると、5人以上の事業所規模で126.6時間(厚生労働省「毎月勤労統計調査」より)。夕方から始まる学習塾や、スクールの1講座がだいたい1~2時間である業界慣習からみれば、少なめの時間なのも当然といえば当然かも。給与面はというと、月平均現金給与額は43万6250円(平成25年 厚生労働省「産業、事業所規模、性、給与内訳別1人平均月間現金給与額」より。教育業も含む)。かなりの高水準であり、人に教え伝えることのできる知識や技能を持っている人は是非検討してみるべき業界といえます。
「各種カルチャー・スポーツ教室」に転職を考えている人へ
各種カルチャースクール、スポーツスクールでの職種は、受講者に教える講師やインストラクター、生徒の管理や教室の準備や片付け、スケジューリングなどをおこなう運営スタッフなどが中心になります。業界の裾野は幅広く、音楽や英会話、文化系など著名な講師が独立して始めているケースから、ヤマハ音楽教室などの大手もあります。
特別な国家資格や各分野の師範資格などを取得できればもちろん申し分ありませんが、この業界では経験と技能を重視して採用される確率も高いようです。長く続けている趣味を究めて講師になったり、子供好きで、やる気にさせるのが上手いという理由からキッズスクールのインストラクターやアシスタントに抜擢されるという可能性も。いずれにしても、受講者と積極的にコミュニケーションがとれるかどうかは非常に重要なポイント。また最近では、季節感や雑誌などのトレンドに合わせた単発レッスンも盛んになっており、そうしたニーズを先読みして提供する企画力も求められています。