転職者が就労するのはどの業界が多いのだろう。ランキングは働く人に人気のある業種や雇用の盛んな成長業種、慢性的な人手不足の業種、離職率の高い業種などさまざまな要因が重なった結果といえよう。ここでは厚生労働省が2015年8月に発表した最新データ「平成26年 雇用動向調査」をもとに、転職した人が多い業種のランキングを紹介してみたい。
それによると平成26年に働き始めた人(入職者)は産業全体で797万人、うち転職入職者数は503万人となっている。ちなみに転職入職者数とは入職者のうち、入職前1年間に就業経験のある者をいう。ただし「内職」や1か月未満の就業は含まない。
業種別で一番多いのは「卸売業、小売業」
業種別では一番多いのは「卸売業、小売業」で84.14万人だった。次いで多いのは「宿泊業、飲食サービス業」の79.55万人、「サービス業(他に分類されないもの)」の73.40万人となっている。1位の「小売業」はある意味、商売の基本、王道であり、業種の裾野も広い。事業所も小規模のところが多いため、転職者数も自然と多くなっているのではないか。2位の「飲食サービス業」も同様だろう。
4位は「医療、福祉」の67.60万人、5位は「製造業」の49.40万人、6位は「生活関連サービス業、娯楽業」の30.12万人だった。
「医療、福祉」は高齢化社会を迎え、いま最も伸びている分野の一つ。常に人手不足が言われており新規施設のオープンなどで求人の需要が多い。日本のものづくりを支える「製造業」も裾野が広い。工場の海外移転などでひと頃は不景気感が漂っていたが、近年は国内回帰現象も見られ、採用意欲も旺盛なのではないか。美容、浴場、パチンコなど「生活関連サービス業、娯楽業」も慢性的な人手不足の業界だ。
もっとも転職する人が少ないのは「鉱業、採石業、砂利採取業」
7位以降は下記表の通りつづき、もっとも転職者数が少ない(あまり募集をしていない)業種は「鉱業、採石業、砂利採取業」の0.26万人だった。なんとなく当然と言えば当然の結果のように思える。ちなみにその他にも郵便局、協同組合などの「複合サービス事業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」も少ない。この辺りは、離職率も低い業種でそもそも募集が自体が多くないといえる。
産業別転職入職者数 ランキング
出典:厚生労働省「平成26年 雇用動向調査」
業種区分 | 転職入職者数 | |
---|---|---|
1位 | 卸売業、小売業 | 84.14万人 |
2位 | 宿泊業、飲食サービス業 | 79.55万人 |
3位 | サービス業(他に分類されないもの) | 73.40万人 |
4位 | 医療、福祉 | 67.60万人 |
5位 | 製造業 | 49.40万人 |
6位 | 生活関連サービス業、娯楽業 | 30.12万人 |
7位 | 運輸業、郵便業 | 29.40万人 |
7位 | 教育、学習支援業 | 28.15万人 |
9位 | 建設業 | 21.39万人 |
10位 | 情報通信業 | 12.20万人 |
11位 | 学術研究、専門・技術サービス業 | 11.75万人 |
12位 | 金融業、保険業 | 7.68万人 |
13位 | 不動産業、物品賃貸業 | 5.82万人 |
14位 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 1.68万人 |
15位 | 複合サービス事業 | 1.10万人 |
16位 | 鉱業、採石業、砂利採取業 | 0.26万人 |
転職成功のポイント
自分の希望する業種がランキング上位の場合、基本的に募集人数も多いので、転職はスムーズに行く可能性が高い。また現在よりも好待遇の会社を探しやすいだろう。一方、なぜ募集が多いのかを考えた時に、新規事業や新規店舗などの場合は成長に伴う募集ということがわかるが、離職率が高く、常に募集をしていないと回らない、という可能性も否めない。企業調査の際には、表面的なデータ以外にも業界内での評判などを調べた方が転職成功に近づくだろう。