インターネットショッピングの急成長により「物流倉庫」の建設が盛んだ。アマゾンや楽天などが首都圏を中心に即日配送サービスなどを競い合うようにスタート。それら足並みを合わせるように外資系の米プロロジス社などは、郊外の埼玉・川島町や東松山市、千葉ニュータウンなどに次々と最新鋭の大型物流施設を開発しネット企業に貸し出している。
ここでは「物流倉庫業」とはどのような業種なのか、その概要と近況、また転職をするにあたっての押さえておくべきポイントをまとめてみた。
「物流倉庫業」の特徴 – 経済の中枢を担う存在
商品を購入した人は、それがより早く手元に届くことを希望します。または、指定した日に確実に到着することを期待しています。そういった事は、現在の生活では当たり前に思われていますが、はるか遠方からの荷物を数日間で送り届ける作業は想像以上に困難を伴います。その困難なミッションを可能にしているのは、物流倉庫の存在があるからです。
物流とは物を運ぶまでのプロセスを指しますので、例えば引っ越しのために荷物を運ぶ工程も物流の枠に入ります。A市からB市への引っ越しを1日で行うならば、通常荷物を倉庫に収める作業は発生しません。しかし、A市が北海道でB市が九州だった場合、この引っ越しを1日で完了させることは不可能になってきます。そういった場合、北海道から九州までの途中経路で一時荷物を保管させる必要が生じます。そこで、北海道を管轄とする運送会社から九州を管轄する運送会社に荷物の引き渡しが行われることになります。
物流倉庫は、次の運送手段に切り換えるための一時保管場所として機能します。これは、送り先が配達日を指定している場合の保管場所という役目も含まれています。物流倉庫の中には一時保管としている膨大な量の荷物があり、どの荷物をいつ、どれだけの量で出庫させるかを把握するための仕分けと管理が行われています。
「物流倉庫業」の近況 – 商品保管のみならず様々な顧客サービスに進出
物流の業界で商品を保管しておくための倉庫の存在は極めて重要です。どんな商品でも、送り主から届け先には適切なタイミングで適切な量を運ぶ必要があります。これを可能にしているのが物流倉庫の存在です。
古くから物流倉庫は、そういった商品の一時保管先という役割を担ってきました。しかし物流業界全体でサービスの高度化や複雑化は増しており、近年の物流倉庫は保管以外にも様々な役割を請け負っています。その内容は、検品や仕分けといった倉庫ならではのものから、組立、梱包、補修といった本来工場で行う作業、各種事務処理、販売者に代わって顧客の応対をするコールセンター業務など多岐に渡っています。
また、倉庫内の作業をより正確かつ円滑に進めるため、IT技術も積極的に導入されています。代表的な例として、商品の1つ1つに採番された追跡番号を読み取り、配送システムに登録するオペレーションがあります。1つの倉庫に保管する商品の種類は膨大となっており、それらを正確に把握するためのIT技術は不可欠なものとして、現在でも研究開発が行われています。
このように倉庫業は時代のニーズに応えるべく、大きな変貌を遂げてきました。しかし一方では、システムの充実などに起因して人間の労働力を必要としない体制が作られ始めており、雇用機会の喪失という新たな問題も引き起こしています。
転職者へのアドバイス – 世の中にとって無くてはならない仕事
2011年の東北大震災では、被災地を中心として生活必需品などがスーパーやコンビニで軒並み品切れを起こしました。これは被災地近辺の物流が機能しなくなったことが原因です。普段の生活の中でそういった事は滅多に起こらないため、意識していない方も多いですが、店に行けば物がたやすく手に入るという快適な日常生活は物流が正常に機能することで成り立っているのです。
物流倉庫への就職、転職を考えている方々は、この業界がどれほど世の中にとって重要な役割を果たしているのか、それに対して誇りをもって取り組んでいくという決意を表現することが大切です。
先述した通り、物流倉庫で行われている仕事は多岐に渡っています。自身の適性などを考慮して、希望する職種に応募するという方法もありますが、大抵の場合、最初は仕事の流れを覚えるために倉庫内で商品の仕分け作業や入出庫の作業を任されます。この作業は体力を要しますので、健康であることは必須の条件になります。重い荷物を持ち運ぶ場合もあるので、腰痛には注意が必要です。
環境面としても、例えば食品関係を扱う倉庫は室内が低温に保たれています。24時間稼働している倉庫も少なくないので、勤務は夜勤になったりシフト制の場合もあります。しかし、そういった厳しい条件は数ヶ月で慣れてきますし、慣れるに従って人間関係も円滑になっていきます。
資格面では、フォークリフトの免許を持っていると有利に働きます。ただ、倉庫内でフォークリフトを操縦するには技術が要りますので、実務経験を伴っていることが必要です。倉庫内作業以外でも貿易関係の国家資格である通関士、IT関係の資格(ストラテジ系など)などはアピール材料になります。
「転職グッド」編集部が考える転職ポイント
圏央道や第二東名道の開通によって広大な敷地を確保しやすくなった「倉庫業」は、空前の建設ラッシュを迎えています。アマゾンや楽天、ヤフーなどネットショッピング大手が始めた「即日配送サービス」を、実現可能にしているのはITを駆使した最新鋭の「物流倉庫」の存在なのです。また米プロロジス社などの物流不動産大手以外にも、小売り、メーカーやラストワンマイルを担うヤマト運輸や佐川急便なども巨大な物流施設を次々に建設しています。
「物流を制するものがビジネスを制す」は決して大げさな言葉ではありません。今後は大型で最新鋭の「物流施設」が政令指定都市を中心に全国へと広がっていくでしょう。そのことを考えると「倉庫業」は今後、とても面白くなりそうな業界といえます。