「卸売業」とは、小売業又は他の卸売業に商品を販売したり、建設業や製造業、官公庁などに業務用商品を販売したりする業種です。また市場のように商品の売買の代理行為なども「卸売業」になります。さまざまなメーカーの商品を一手に取り扱っているため、商品流通の利便性や安定供給に欠かせない業種といえます。
ここでは、生花資材の卸売業に勤務した経験をもつNさんに「生花資材の卸売業」の特徴や現況を書いてもらいました。
卸売業(生花資材専門)の特徴
生花店で花束やアレンジメントフラワーを購入したことのある方は多いと思いますが、花を包んだり全体を巻き付けている透明のセロファンやラッピングペーパー、切り花に水分を与えて長持ちさせるための保湿剤、挿し花をきれいに見せるためのカゴや陶器、ガラスの器などを扱っている、生花資材専門の卸売業者があります。
この業界は、資材メーカーと販売者(生花店やスーパー、ホームセンターなど)の中間に位置しているので、エンドユーザーとなる一般顧客にはなじみの薄い存在ですが、販売者の様々な要望を受けて非常に多種の資材や、メッセージカード・リボン・オーナメントなどを代表とする雑貨類を扱っています。
生花の卸売市場や生花業組合が、そういった資材の卸売を兼ねているケースもありますし、資材メーカーが卸売業者を通さず直接販売者に卸しているケースもあります。従って、一口に卸売業者といっても細かく見ると様々な形態があり、販売者側のほとんどは複数の卸売業者と取引しているのが実態です。
そのため卸売業者としては、競合他社との差別化を図るための情報収集に力を入れています。情報の収集力が低いと競合他社の後塵を拝する結果となり、たちまちシェアを譲ってしまうことになります。また、仕入れた情報を実績に結び付けるためのアイデアや企画力も問われます。そういった意味で、この業界の営業職はとてもやりがいのある仕事のひとつといえます。
卸売業(生花資材専門)の現況
(1)業界の特徴でも触れましたが、生花資材の卸売業者には商社だけでなく市場や組合、メーカーなど様々な形態があります。またホームセンターや100円ショップでも資材が販売されているので、それらも含めると競合の多い業界といえます。
それに対し、販売先である生花店の数は減少傾向にあります。生花の小売事業者数は全国で約41,000件ですが、増加傾向にあるのはスーパーやホームセンターなどの売り場で、専門の生花店は特に地方で減少を続けています。また、地方の卸売市場も統合や閉鎖で年々少なくなっています。
生花店が減少している理由はいくつかありますが、一つは花自体の仕入れ価格が高騰していることが挙げられます。生き残りをかけた生花店側は、限られた予算の中で花の仕入れを行うため、必然的に資材へ回すコストを削減することになります。
二つめの理由は、花を購入するエンドユーザーが減少してきていることです。花の仕入れ価格高騰に比例して、小売価格も値上がりしているからです。また生活様式の変化も関係しています。毎日忙しい生活を送る現代人は、日持ちしない生花よりも造花や、ここ近年注目を集めるようになったプリザーブドフラワーを購入する方が増えています。年代別では若年層ほど生花を購入しない傾向となっています。
(2)こういった生花業界の不況に合わせて、資材卸の業界も地方や中小企業を中心として厳しい状況にあるといえます。企業の統合や吸収合併で生き残っている業者もありますが、売上とコストが見合わず倒産に追い込まれる事例も後を絶ちません。
実績と顧客数に恵まれた大手企業や大量仕入れが可能なスーパー、ホームセンターなどの量販店グループ、自社生産やOEMのシステムが構築されているメーカーといった辺りが業界をリードしていく図式は、今後も続いていくものと見られます。
卸売業へ転職を考えている人へアドバイス
生花業界の苦境とともに資材の卸売業界も厳しい立場にあるといえますが、これは逆に言うとチャンスの局面ともいえます。他社と差別化を図ったアイデアを創出し、それが受け入れられれば抜きん出た存在となることも可能です。
業界の特徴でも記述した通り、この業界では情報収集力が肝要となりますので、営業力を発揮するにはまず、情報を集めるためのコミュニケーションスキルが必要になります。顧客が本当に必要としている物や「こんなアイテムがあったらいいのに」といった要望、コストを抑えるための具体策など、聞き出せる情報は無限にあります。
これらの情報をしっかり管理して、アイデアとして運用していくことで顧客からの支持を獲得できます。
その他には、スピードとタイミングも重要です。スピードについては殆どの業界で必要とするスキルなので、ここでは言及を避けましてタイミングについて説明します。
生花店では季節やイベントごとに、必要とする資材も変化していきます。基本的な資材は年中通して需要がありますが、イベント特有の資材、雑貨については告知するタイミング、販売するタイミングの見極めが必要です。
告知するタイミングが早すぎては顧客側に響きませんし、販売のタイミングが早すぎると店舗の在庫スペースに置ききれません。かといって、遅すぎると他社に注文されてしまいます。同じイベントでも顧客が注文するタイミングはそれぞれ異なりますので、顧客ごとに適切なタイミングを掴むことが大切です。
上記に記述した、コミュニケーションスキルと情報収集力、アイデアの創出力、それにタイミングの掌握力をアピールすることが、この業界に転職するための近道といえます。
転職グッド編集部のひとこと
多種多様な商品を扱う小売業にとって卸売業は無くてはならない業種です。1品1品の仕入れ先が異なる場合、仕入れ担当者は膨大な数の会社に連絡をしてやりとりをしなければいけませんが、卸売業がいることで1社とまではいかなくても、発注にあたっての労力がかなり軽減されます。また卸売業はさまざまなメーカーの商品を扱っているため、小売業のニーズに合わせた最適な商品を提供できるというコンサルティング的な面も持ち合わせています。
一般消費者には馴染みが薄いため、業界や企業の知名度はそれほど高くありませんが、歴史のあるしっかりした企業が多いのも特徴です。