2000年4月に始まった介護保険制度をきっかけに、民間事業者の参入が相次いだ「老人福祉・介護業界」。すぐそこまでやってきた高齢化社会を前にして、今後さらに市場規模が拡大していくことが予想されています。そんな注目の業界の動向と転職者へのアドバイスをまとめてみました。
「老人福祉・介護業界」の概要
社会保険・社会福祉・介護事業の民営事業所は、年々増加をたどっています。待機児童の問題が取り沙汰されやすい保育所や、障害者福祉事業もこれに該当しますが、今回はその中でも、58%※という最も増加傾向にある、有料老人ホーム事業が属する『老人福祉・介護事業』、いわゆる介護の世界の転職事情を見てみます。
2000年4月に始まった介護保険制度により、民間企業の参入が正式に認められ、介護業界への投資は一気に拡大しました。また、『2025年問題』とも言われていますが、10年後には、人口800万人超の団塊世代が後期高齢者を迎えるとあって、更なる拡大が見込まれています。
『巨大だけれど未成熟な業界』ならではの人手不足、待遇などの問題は抱えているものの、その中には顕著に業績を伸ばしている企業もあり、また満足度の高い働き方をしている人々がいるのも事実で、かなり将来性のある業界だと言えます。
※平成26年 経済センサス-基礎調査:総務庁統計局
「老人福祉・介護業界」の動向
先に述べた通り、高齢社会の進展と共に、介護業界の市場規模が今後も拡大していくことは間違いありません。
介護保険給付の状況を見ても、2000年には3.6兆円だった保険給付額が、2012年には8.7兆円にまで増え、更に2025年には19.8兆円となるという予想も出ています。介護事業所の増加も必然でしょう。
そして事業所の増加に伴い、それに就く人口が増えていく訳ですが、この急速な成長に就業人口が追い付かない。つまり人手不足が、介護業界が最も深刻に抱えている問題となっています。(ただし、この業界に転職を考える人にとっては悪い情報ではありませんね。)
ちなみに、離職率が高いと言われがちですが、厚生労働省の『雇用動向調査』によると、平成25年度の全産業の離職率平均値が15.6%、介護業全体の平均値が16.6%であり、他の産業と差があるとは言えません。
特徴的なのは、「仕事内容への不満」が離職理由の上位に入っておらず、介護職を選んだ理由として「働きがい」が50%を超えているということ。
仕事内容に満足度が得られるのであれば、長く就業できるということですね。
「老人福祉・介護業界」へ転職を考えている人へ
介護保険制度が始まってまだ15年。
急成長したことで、業界全体の成熟度はまだまだですが、その分、チャンスもありそうです。
実際、低賃金問題の面においても、他業界での経験を活かし、保険収入のみに頼らず業績を伸ばしている企業もあります。資格取得や質の高いサービスを提供することにより、高収入を得ている個人も存在します。
一方、与えられた仕事を汗と時間だけで消化するのであれば、介護業界でなくても満足のいく仕事と収入を得ることは難しいでしょう。15年とは言っても、すでに『量より質』の時代へシフトしてきているのがこの業界です。
介護業界への転身を狙うのであれば、まずは業界が求める質の高いサービスを理解するという目的も含め、介護職員初認者研修(旧ヘルパー2級・訪問介護員2級)や、短時間で取得できる介護事務などの資格を取ることをお勧めします。
そして就業後も、実務経験を要する資格などを順次取得しながらキャリアアップを目指す…というのがひとつのモデルケースです。
また、未成熟な業界だからこそ、独立して、今までにない介護サービスを開設とするといった夢を持つこともできます。
コミュンケーションスキルや臨機応変な対応能力を必要とし、他業種から転身すると、想像していたよりも『体力より営業・接客能力が必要』と感じるこの業界。
独自のビジョンを持って就業すると、よりやりがいを感じるかも知れません。