2020年の東京オリンピックを控え、建設ラッシュの好況に沸く「宿泊業」。訪日外国人旅行者数も2014年には1,341万人、2015年はすでに過去最高記録が確実視されている。一方で平均給与や正社員率の低さなどの課題点も多い。
宿泊業に転職するにあたってチェックしておくポイントはどこにあるのだろうか。
「宿泊業(ホテル・旅館など)」の特徴
「宿泊業」というと旅館やホテルをまずイメージしがちですが、他にも簡易宿所と呼ばれるカプセルホテルや山小屋、下宿屋、共済組合など特定の対象者向けの保養所やキャンプ場なども含まれています。業務内容は多岐に渡り、フロントなどの接客業務から厨房、清掃、設備管理のほか本社等の組織管理部門を持つところもあります。
宿泊業で働く人は「サービス産業動向調査年報 平成25年」によると約76万人で、前年比では1.7%の減少となっています。
2014年度の新規求人数では「医療・福祉」や「小売業」などに続く第5位となっており、7万人の募集があった点にも注目したい。ただし、その中での正社員求人の割合は年々低下しており、ついに30%を割り込んでいるのが現状だ(厚生労働省・労働市場分析レポートより。こちらも飲食サービス業含む数値)。
平均給与を見てみると、業種別の中では最も低く、237万円(国税庁2014年分「民間給与実態統計調査」)となっており、100万円以下の人が28.4%いることからもパートタイムなどの働き方が多いことがうかがえます。
業界としての売り上げは季節によって大きく差があり、特に3、5、8、10月で売り上げが高く、夏休みの8月は飛び抜けています。こうした繁忙期を中心とした時限的雇用が見られるのも宿泊業の特徴でしょう。
近年の「宿泊業」の状況
東日本大震災の後しばらくは、宿泊業含む観光業全体の低迷期がありましたが、2013年から2014年にかけて売上高の前年同月比は微増に転じています。追い風となっているのは円高の影響や、中国・東南アジアなどから団体で訪れる「爆買い」の観光客の増加でしょう。実際、中国の連休前後には都内のビジネスホテルはもちろんカプセルホテルに至るまで、予約がとりにくくなるという現象が起きています。そうした訪日外国人の増加やさらなる国内需要を見込んで外資系ホテルチェーンなども次々と参入し、業界内の競争は激しさを増しており、2020年の東京オリンピックを視野に入れると、この先数年間は好況の流れが続くと予想されます。
また近年は、米・Airbnb (エアビーアンドビー)の進出により、個人が所有するマンションや住宅の空き部屋に旅行者を有料で提供する「民泊」が広がりを見せていますが、厚生労働省と国土交通省は2016年にも登録制で解禁することを発表。「宿泊業」も大きく変わろうとしています。
人々の旅行や出張がより豊かになるためのサービス
普段の生活とは異なる非日常空間、ふかふかのベッドや布団、その土地ならではの美味しい食事とお酒。人々の旅行や出張がより豊かなものとなるようサービスを提供するのが宿泊業の醍醐味です。
先に訪日外国人の増加傾向について触れましたが、今や東京や京都のみならず日本のあちこちに、北海道のスキー場から長野県の温泉地へまで外国人が訪れる時代となっています。日本を初めて訪れた外国人旅行者に対して、宿泊業の持つ役割はとても大きなものです。日本の印象は宿泊先で出会った人の印象で決まると言っても過言では無いでしょう。日本で良い思い出を残した旅行客は帰国後に「日本はとても良い国だよ」と広めてくれるはずです。
そこで必要とされるのが語学力。英語や中国語が少しでも話すことができるとなれば採用率もアップ。また、日本のハイレベルな宿泊業界においてはおもてなしの心や清潔感だけではもはや生き残れないため、観光業との提携や独自プランの打ち出しなど多角的な試みへの意欲も期待されています。