9月5日の日本経済新聞によると、厚生労働省は自己都合で退職した人の失業手当の給付日数を、現在の90日~150日から、最低でも30日増やして180日以上にする方針を固めました。
自発的に退職した人の失業手当は、2003年の制度改定で給付日数が90日~180日から最大150日に減らしていました。厚労省は今回の改定で少なくとも2003年の水準まで戻したい意向です。また失業や解雇など「会社都合」で退職した人の給付日数も同時に議論をおこなう予定です。
失業保険は、雇用保険制度のひとつで、失業した人や教育訓練を受ける人に対して、失業等給付を支給する制度。1週間の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みがある労働者は、事業所規模に関わりなく、原則として、全て雇用保険の被保険者になります。
今回の見直しの経緯としては、現在、雇用情勢は平成27年10月時点で有効求人倍率は1.24倍、完全失業率3.1%と、着実に改善が進んでおり、また雇用保険の財政収支も平成26年度末の積立金残高は6兆2,586億円となっていることから、失業給付を過去の水準まで戻しても問題無いと判断したようです。
9月5日におこなわれる職業安定分科会の雇用保険部会で検討を始め、年内までには結論を出す予定です。安倍政権の重点政策である「働き方改革」を受けて、今後はこれまで以上に若年者20歳~35歳、高齢者、女性、障害者等の雇用を支援していくとしています。
どのようなメリットがあるのでしょうか
給付日数が長くなると、求職中の人にはいろいろなメリットがあります。
●手当を多くもらうことができます
いままで最大150日(約5ヶ月)だったものが、仮に180日(約6ヶ月)になると、単純にもらえるお金が増えることになります。もちろん早く仕事が決まることが一番ではありますが、これが嫌だという人はいないと思います。
●あせらず仕事を探すことができます
これまでは失業手当が切れる前に、妥協をして不本意に仕事を決めてしまった人もいるかもしれません。給付日数が長くなると余裕が出て来ますので、さらに良い会社を探すことができるようになります。
●転職しやすくなります
今回、国が意識しているのはこの点かもしれません。仮に仕事を辞めてから探し始めようと考えている人(前職に在籍中から探さない人)にとって、最大150日というのは長いようで短くもあります。特に家庭を持っていて子どもが小さかったりすると、収入ゼロというのはどうしても避けたいため、転職を踏みとどまっていた人も多いのではないでしょうか。今回の制度改革で何日間増えるのかは決まっていませんが、その分だけ余裕が出るということは、間違いなく転職を検討する人が増えると思われます。
労働環境の悪い会社から良い会社へ、停滞業種から成長業種へ、賃金の低い会社から高い会社へ、人材が転職しやすいように国が後押しをすることで、停滞企業を淘汰し、経済を活性化させる狙いがあるのです。